立ち飲みラリー山手線編はもう3年近く渋谷でスタックしている。新橋の立ち飲みを制覇するのも相当時間を費やしたが、このクレイジーな街も時間がかかっている。そもそも、そんなにこの街には来ないのだ。
しかし、この3年間で、渋谷の街も様変わりした。駅周辺は工事が激しい。とりわけ、桜丘は一瞬で工事モードになった。渋谷の立ち飲みを代表する「富士屋」は本店もワインバーもダイニングバーも立ち退いた。悔いが残るのはワインバー。2年前、一度店を覗いたのだが、混雑していたから、度にしようと思っていたら、その今度はもうなかった。ワインバーは日本橋に移転したというが、渋谷で入ってこそ、「富士屋」の意味がある。
ワインバーは入れなかったが、ダイニングバーにはかろうじて入ることができた。だが、「富士屋本店」とは180度違う店にやはりたじろいだ。来店する人種が違う。自分みたいなリーマンが一人で入店してくると、お店の人も「え?」と思ったことだろう。たじろいでいるのは自分だけでなく、お店の人も同じようだった。
さて、困った。いや、自分から店に入って困ったも何もあったもんじゃないが、とにかく困った。何をオーダーするか。何をオーダーすべきか。カウンターにポジションして、しばらく店内をつぶさに眺める。「富士屋本店」とは全く違うメニューたち。しかもいずれも値段が高い。
それにつけても困った。
まずは無難な「ハイボール」から。「桜丘ハイボール」( 円)。もちろん、これは「焼酎ハイボール」ではなくウィスキーベース。桜丘をイメージしたというハイボールは紅茶の味わいがするというカクテルっぽい。つまみは迷ったが、お店一番人気という「マッシュルームのブルーチーズ焼き」(700円)をオーダー。せっかくだから、一番のメニューをいただいてみようではないか。
「バゲットは?」
と店員さんに聞かれたが、「いや」と答えるのが精一杯。そうか、ちょっと自分は緊張しているのか。
そのせいか、味もよく分からない。グラタンじゃないのかこれ。と思いながら、早食いしてしまった。味わうこともないままに。
多分、自分は早く店を出て行きたかったのだと思う。どっかで飾り気のないつまみで一杯飲りたかったのだ。
「桜丘ハイボール」一杯で終了。次の一軒を求めて渋谷の雑踏に紛れた。
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