新青森駅のホームで青森駅行きの電車を待っていると、後ろの方から陽気な歌声が聞こえてきた。
「上野発の夜行列車降りた時から、青森駅は雪の中」。
旅行者らしいおっさん3人組は、新幹線で一杯引っかけてきたらしい。
「北へ帰る、人の群れは誰も無口で、耳鳴りだけをきいている」。
「え?耳鳴り?違うだろ!」
「そうだっけ?ワッハッハ」。
随分、賑やかである。
「わーたしはひとり、連絡船に乗り~」。
おいおい、まだ歌うのか。
自分と誕生日が同じである国民的歌手が2年に1度、年末の国民的番組で歌う曲の影響は絶大だ。青森駅といえば、この曲しかない。だが、一つひとつの歌詞を聞くと、それはもう今は昔。いや、もう神話に近いかも。
青森に着く夜行列車などもはやなく、いやそもそも上野発、青森着の長距離列車すらない。ましてや連絡船だって。新幹線が変えた青森の風景。青森駅に行くには、新青森から乗り換えなければならないのだ。
普通列車に乗ること十数分。青森駅は20年ぶりだろうか。確か当時、駅前の質素な酒場で夜を過ごしたと記憶している(「居酒屋さすらい」未収録)。随分と街の様子も違う。
帰りの新幹線の出発が迫っており、あまり時間がない。まずは土産を買いに、アウガ新鮮市場に。多分、この市場でも昼飲みできるにちがいない。だが、親戚にホタテを買ったら金がなくなった。市場の中はカードが使えないのだ。これは誤算だった。市場の中には、酒と海鮮丼を食べさせてくれる食堂もあったが現金が底をついて断念。近隣の酒場を探すことに。
すると市場の前にある居酒屋が店を開いていた。外観からすると、チェーンのような風情だが、もはや時間がなく、背に腹は代えられない。店の名前は「弁慶」といった。店に入ると、カードは使えるらしい。よし、ここで一杯やるぞ。
ボックス席に通され、タッチパネルでメニューを眺めると、酒はあるのだが、つまみがほとんどない。店員さんに聞くと、昼間はランチのみだという。うむむ、仕方ない。「海鮮丼」をつまみにして、酒を飲むか。
まずは日本酒を熱燗で2合と「三色海鮮丼」。結局、青森の旅はほとんど日本酒ですごした。だが、その酒が抜群に旨かった。肴がうまいと酒もうまい。
「海鮮丼」はサーモンが入っているのが気に入らなかったが、700円ならば文句もいえまい。熱燗2合をお代わりして店を出た。
青森遠征の最後は金欠でパッとしなかったが、それも旅のひとつ。
「さよならあなた~、わたしは帰ります~。風の音が胸をゆする・・・・・」(フェイドアウト)。
漁師と言っても底引きとさし網と一本釣りでは魚の質も全く違うし、いくらおやじが漁師でも料理人の腕が悪けりゃ意味がありませんからね(^_^;)
漬物が業務用のキュウチャン漬けですね、私としてはこの店はちょっと期待薄な気がしてしまいます。
おっしゃる通りです。自画自賛する輩はだいたいにあって誇大か妄想です。
今回は時間との戦いの中で、やむなくの店チョイスでした。現金を持っていたら、市場飯&酒だったのですが。