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BASEBALL馬鹿 BLOG

緊急連載 「明日の広島カープを考える」♯1 ~新井SHOCK!~

2007-11-10 13:08:46 | Weblog
 黒田博樹投手と新井貴浩選手は移籍を前提にFA宣言をした。
 言うまでもなく、広島カープの不動のエースと4番打者である。
 だが、今回の2人の移籍騒動は、その投打の中心選手がこぞって移籍を表明したという事実よりも更に広島カープにとっては今後の球団存続に関わるほどの衝撃があったと思われる。

 まず、黒田投手の場合、ご存知の通り、昨季FA宣言の準備を進めていたが、球団とファンの強い慰留によって残留した経緯がある。
 残留にあたっては、4年契約を交わしており、その中には「メジャーリーグ挑戦」を認める条項も含まれていた。
 このため、今回のFA宣言はそれほど衝撃を受けるものではないのも事実だ。
 カープファンでなければ「あぁ、やっぱり」という受け止め方をする野球ファンも少なくないだろう。

 それでは何故、カープにとってエースが流出するという事実よりも大きな衝撃なのか。
 それは、黒田投手はカープを逆指名した選手だからだ。
 昨季の黒田投手は明らかに国内移籍を匂わせていた。
 それは当人が広島残留をした際に放ったこんな一言からも明らかである。
 「僕が他球団のユニフォームを着て、広島市民球場でカープの選手を相手にボールを投げるのが自分の中で想像がつかなかった」。
 恐らく、当時は本人の中では国内の特定チームへの移籍を意識していたのであろう。
 球団もそれを察知して、強い慰留を行っている。
 移籍を容認すれば逆指名制度とFA制度が始まって以来の不名誉な移籍が実現したからだ。
 つまり、逆指名した選手がFAで他球団に移籍をする第一号選手になったからである。

 このたびのFA宣言に至っては、様々な理由があろう。
 まず、今年8月17日尊父が亡くなられたこと。
 「カープで優勝したい」と臨んだ今季もカープは下位に低迷したこと。

 特に今季で忘れられない試合がある。
 9月14日の讀賣戦。
 黒田投手は7回3失点の好投。試合は9回表を終わって8-3、カープが5点をリードして讀賣の攻撃に。
 だが、カープの救援陣が踏ん張れず、同点に。
 抑えのエース永川勝浩投手が讀賣の加藤選手に同点適時打を打たれると、テレビカメラはベンチの黒田投手を大映しにした。
 勝ち投手の権利を失った当の黒田投手は意外とサバサバした表情が印象的だった。
 そこには悔しさはあまり感じられず、何か達観したかのような顔つき。
 いみじくも中国新聞のウェブ版はこのような見出しで記事を掲載している。
 「球炎 楽観できぬ黒田の残留」
 「適切な話題ではないかもしれないと思いつつ、九回の5点リードを守りきれない試合を見たからこそ、あえて書くことにした。」というその記事は
 「大きな借金を抱えるシーズン終盤、『来季も黒田はカープ』と決めつけられる根拠はない。もしカープでは勝てないと判断し、自分の力と可能性を試したいと思えば、球団も認めているメジャー移籍への思いが芽生えても不思議ではないだろう」と記している。
 同じことを筆者もまたそのとき感じたのである。

 ともあれ、黒田投手はFA宣言を行った。
 もし、カープがクライマックスシリーズに進出していれば、その結果はどうなっていたか分からない。
 とにもかくにもカープが浮上の兆しすら見出せずに今季を終了しており、言ってみれば、黒田投手はそんなチームに愛想を尽かしたとも言えなくはない。
 チームが勝利に対する具体的なチームの方向性を示さなかったことも移籍の決断に繋がったとみていいだろう。

 一方、深刻なのは新井選手のFA宣言である。
 ようやく1人前に育った主砲は広島県出身で広島工高卒(最終学歴は駒大)の生粋の広島人だからだ。
 ドラフト6位での入団ながら、打球を遠くに飛ばす天性を買われ、山本浩二監督(当時)の下でしごかれた。
 守備の粗さに目をつぶり、目先の勝利より、将来のスタープレイヤーの育成に力を注いだ結果が、現在の新井選手に結実したのはではないだろうか。
 地元出身で手塩にかけた将来の幹部候補が、FA宣言してしまったのである。
 ファンをはじめ、フロントや球団首脳のショックは計りしれない。

 新井選手は、8日に行った記者会見でこのように話している。
 「正直、自分はカープに残るだろうと思っていた」。
 だが、そうした気持ちもいつしか移籍の方向へ向かっていく。
 果たして、球団と行った2回の交渉で、新井選手に何が起こったのだろうか。

 あくまでも推論だが、広島球団も「まさか、新井は出て行かないだろう」とたかをくくっていなかっただろうか。
 そうした思い込みが新井選手との交渉の席で自然と対応に滲み出ていなかっただろうか。
 それが、新井選手の球団に対する不信感に繋がっていったのではないだろうか。
 或いは、黒田投手と同様、球団の将来ビジョンが覚束ず、新井選手の自身の将来を悩ませてしまったのではないだろうか。
 その真実は、我々1ファンには知る由もない。

 だが、これだけは言える。
 カープを愛していた2選手が、それを振り払い新しい野球人生を歩もうとしている。
 これまで、お互い絆が深かったしていた球団と選手の関係が音を立てて軋み始めているのだ。
 それは、プロ野球界における広島カープという存在価値を変質させていくものでもあり、ともすれば、球団の存在すら危ぶむものではなかろうか。

<次回のテーマは『球団は誰のもの?』です。5回シリーズに渡ってお届けする当連載は毎週土曜日頃に掲載します>
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