不忍池の南側、上野2丁目の界隈をご存じだろうか。
風俗と韓国料理、居酒屋にパブやスナックが雑多に入り混じるエリア。何でもありのバトルロワイヤル。
ここを通り過ぎるだけで一体何人の客引きに声をかけられるだろうか。
だが、このエリアをたまに見ておく必要がある。知らないうちに立ち飲みがひっそりとオープンし、ひっそりと閉店するということがあるからだ。
以前、ここに「もつくし」という立ち飲みがあったが、速攻で閉店した。それはたまたまここを散策したときに発見したが、その数か月後にここを通るとすでに店はもぬけの空になっていた。幸いなことに発見してすぐに店に入ったから良かったものの、あのとき店に入らなければ、ボクの立ち飲みリストに載らなかったことも考えられた。
今回も立ち飲み散策として軽い気持ちで行ったのだが、ある店の前に来て、大きな衝撃が走った。
「赤提灯」。
大衆居酒屋の風情といい、この名称に聞き覚えがある。
もしかして、湯島にあったあの店ではないか。
2009年にホッピー研究会で怪鳥と入った店。うん。確かにそうだ。
あの半年後だったか、突然あの店が更地になっていたのには驚いた。
「確かにここに居酒屋あったよな」と独り言を言いつつ、ボクは狸に化かされたような気になっていた。
あれから5年。そうか、あの姿を消した「赤提灯」はやや東に場所を変え、今も生きていたか。
ボクはちょっと嬉しくなり、店に入った。
店は以前のテーブル席とは異なり、長テーブル席になっていたが、それは以前よりももっと大衆臭さを感じさせた。
壁にびっしり貼られたメニューは異様に多い。そのメニューの多さだけでも圧巻だ。
メニューのフォントが江戸文字で書かれていて、それだけでもう雰囲気十分。
ボクは適当な場所に座って、メニューの一言一句を眺めた。
生ビール中550円。瓶ビールが400円。ほう、瓶ビールのほうが安いのか。
酎ハイ400円。ホッピーセット550円。
ふむふむ。水準としては高い。5年前って、こんなに高かったっけ。と思い、調べてみると、ホッピーセットは400円。37%の値上げ。
そうか、大衆から旦那衆の店になったか。
ボクはまず、瓶ビールからもらった。
それにしても何を食べようか、迷ってしまうほどメニューが多い。
だが、この感覚は間違いなくワクワクしてくる酒場だ。
まず、手始めに「もつ煮込み」(350円)をいただく。酒は高いが酒肴はまずまず。
ついでに「ポテトサラダ」(250円)も注文。まずはこれでお手並み拝見。
「もつ煮込み」は生姜が効いた大衆の煮込みだったが、ポテサラがいけてなかった。だって、更に盛られたその白い物体は確実に業務用。ちょっと待ってくれ。ポテサラは手を抜いてはいけないと思う。
生意気言わしてもらうと、これで店の姿勢が見えちゃうんだけど。
周囲のひとの酒肴をつぶさに見てみると、どうやら一品料理で酒を飲む人が少なくない。
例えば「焼うどん」(500円)とか「レバにら炒め」(500円)とか。
なるほど、この攻め方は参考になる。
ボクは550円だけど、ホッピーセットと「豚バラ生姜焼き」(500円)をチョイスした。
そして、この店では一品料理で勝負することを改めて自覚した。
うまい。うまいよ。そして温かい飯がほしいよ。
速攻で「なか」をおかわりしたのだが、これが250円。ということは「なか」2杯おかわりすると、1,000円を超えてしまう。ちょっと待ってくれ。瓶ビールよりホッピーの方が高いって、そんなんありですか。
結局、「なか」1杯で店を出た。
つぶれていたと思っていた店が実は移転していただけだった。
戦死したと思っていた夫が戦後から5年後にひょっこり復員してきたような、そんな感じ(ひどい喩え)。
でも、一緒に暮らしてみると、その豹変ぶりに驚く。「あんたは変わったわ」。
いや、いろいろな事情があるでしょう。戦争に行って平常心で戻れる訳などないし。でも、ポテサラが業務用というのはないでしょう。ホッピーが瓶ビールより高いって本末転倒ではないか。
ワクワクするお店ではあるんだけど、実はこの再会からリピートはしていない。
過去記事
行ってたのかぁ。
教えてよ。みずくさいなぁ。
つまみは安くてうまいよね。
種類もいっぱいあるし。
また、行きましょう。
知らない人が目の前に座るというのも、また新たな旅立ちかも。
でも、あの値上げ率はないよなぁ。
イメージとしては高い店ですが、