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「マネーボール」考察① ソフトバンクと楽天の球団経営

2005-02-05 18:21:11 | Weblog
  メジャーリーグ30球団の中で総年俸が下から数えて2番目のオークランド・アスレチックス。だが、毎年優勝争いを演じ、ポストシーズンに出場を果たしているのは何故か?マイケル・ルイス著「マネーボール」(ランダムハウス講談社)はこの疑問に対し、丹念に取材、アスレチックスの秘密をレポートしている。
  02年のシーズン終了後、フリーエージェントを宣言した3選手についてアスレチックスGMのビリー・ビーン氏は移籍先が提示した年俸には見合わないと移籍を容認した。特にボストンに移籍したジョニー・デイモンに4年契約3000万ドルの価値はない、とばっさりだ。また昨シーズン終了後もエースのティム・ハドソン投手を放出している。年俸が高額になる選手を放出するチームの根拠は選手を計る指標とされてきたあらゆるデータが本当に選手の力量を示すものではないとし、新たな価値観を持ってそれぞれの選手を評価している点だ。こうした新たな価値観によってアスレチックスは他球団が獲得することのない選手を入団させ、その結果選手の年俸も低く抑えることに成功した。だが、低い年俸が故にチームの成績が悪ければどうにもならない。だが、この新たな価値観が正しかったことは02年103勝、03年96勝をあげ、ともにアメリカンリーグ西地区首位になっていることで立証されている。
  一方現在の日本プロ野球界でも興味深い現象が起こっている。
ソフトバンクホークスと東北楽天ゴールデンイーグルスの2球団は好対照の形でチーム作りを行った、といえよう。ソフトバンクの孫正義オーナーは「日本のプロ野球の年俸は安すぎる。メジャーの上位10球団が100億円を超えている」とし、将来ソフトバンクも100億円チームを目指すとしている。一方の楽天イーグルスの05年度選手総年俸は12球団中11番目となる17億9千万円。両新球団はスタートから好対照の船出となっている。孫氏が何を根拠に日本プロ野球選手の賃金が安い、と発言しているのか定かではないが、将来、名実ともにソフトバンクホークスを世界一の球団にしたい、という願望がその根拠の根底にあるものではないかと想像できる。
  一方の楽天イーグルスの球団運営の手本は明らかに「マネーボール」を意識している伏しがある。マーティ・キーナート氏は自身がまだGMに就任する前に楽天オーナーの三木谷氏に「マネーボール」のハードカバーをプレゼントしたという。また、昨年のドラフト戦略では高校生を指名せず、全て大学生か社会人を獲得している点は「本当に成長するか分からない博打のような投資」と指摘する「マネーボール」の影響に他ならないだろう。キーナート氏が「3位以内に入れる」と大きな自信を覗かせる理由は「マネーボール」戦略を実践することで日本のアスレチックスになりえると、踏んでいるからだろう。
この極端ともいえる両球団の運営手法に賛否両論はあるだろう。会社経営の哲学は人それぞれだ。マネーボールの論法が成り立つのも「金満球団」の存在あるが故の均衡である。
  昨年12月30日日本経済新聞に掲載された豊田泰光氏のコラム「チェンジアップ」に珍しくいいことが書いてあった。「100億円あるなら、地域リーグを充実させ、少年たちが遊べる場所を用意する」。個人的にはこう思う。その金で福岡ドームの人工芝をひっぺ返し天然芝に張り替えてはどうか、と。
  一方の楽天には新規参入球団としての責任を垣間見ることができる。「3年後までに黒字経営を達成する」という目標は球団経営というビジネスモデルの確立が今後の球界の発展に重大な影響を及ぼすことにつながってくると彼ら自身が一番自覚しているからだろう。昨年の球界騒動の渦中でサントリー㈱社長の佐治信忠氏は「球団運営で儲けられる仕組みになったら参入を検討したい」と日経新聞に語っている。球団運営のビジネスモデルが確立できなければ球界の拡張はあり得ない。
  プロ野球は勝たなければ人気が出ない。勝つためにはどのような工夫が必要なのか。球団運営の対極にある両球団はこれから先どのように成長していくのだろうか。

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