1年に2度あるかないかのJ動車問題研究会。
業界紙誌の記者達が当番制で自動車にまつわる問題を持ち寄って議論するという会合がもう何十年ともなく続いている。近年は、その研究会的要素よりも懇親会的色彩のほうが強くなり、今こうして我々は、都営大江戸線西新宿五丁目駅の近くの居酒屋「おいどん」の2階奥の座敷に座って今や遅しと乾杯の時を待っている。
当該店が当ブログを飾るのはこれで2度目。
T整振の建物を出て都営大江戸線西新宿駅5丁目駅へ。
東京都庁がすぐ近くに見えるが、ここは渋谷区だ。区の境は神田川支流の暗渠か。今、川は地下を脈々と流れており、蓋がされているが、川の跡ははっきりと分かるし、ところどころに小橋が今も残っている。
川の跡は駅の西側を斜めに横切る。すると、住所は新宿になるのだ。つまり、西新宿5丁目駅は文字通り、新宿の西の端っこなのだ。
駅が出来た頃は、このあたりはあまり店も多くなかったが、近年は、マンションも建ち、少しずつ飲食店も増えてきたようだ。それでも、めぼしい居酒屋は少なく、駅周辺で最も存在感を放っているのが、やはり「おいどん」だ。
1階から3階まで3フロアーを擁する店舗。青い電飾看板が闇夜に光る。決して大衆酒場とはいえない。従って、女性の客もけっこう多いのである。
さて、乾杯である。
陶器ののビアマグをかざし、本日の幹事であるK毎のT沢さんの挨拶で懇親会は始まった。
そう、この店はモルツなのだ。ややバイスビールを思わせる爽やかな飲み口のモルツである。これによって、なんとサントリーは3連勝!まるで昨季のラグビートップリーグ、サントリー・サンゴリアスの快進撃を彷彿とさせる。そして、とうとうサントリーが「居酒屋放浪記」のビールシェアでアサヒと同率で首位に並んだのだ。
モルツはうまい。だが、この店のビールには不満がある。ビアマグが小さくてとてもとても中ジョッキ相当量のビールが入っているとは思えないのだ。これで一杯600円は大いに不満なのである。
さて、ビールをもう一杯お代わりして、次に焼酎を飲むことにした。焼酎は甲類でボトルというのが、このメンバーの暗黙のルール。なにしろ、この飲食代はT整振から捻出されているわけで、ご馳走になりながら、横暴を犯すことは当然出来ないのだ。
だが、その禁をいとも簡単に破った奴がいた。
今回、J問研に初めて出席したsび広報社のM原君であった。初出場ということで、あまり事情が飲み込めていなかったからであろう、弱冠27歳の男は、メニュー表を取り出しては、勝手に乙類焼酎を店員に頼んだのである。
一瞬、場の雰囲気が凍り付いた…・・ような気がした。みんなそれぞれいい大人だから露骨には凍り付かなかった。だが、わたしは見逃してはいない。幹事のT沢さんの眉が微妙に動いたのである。
次にわたしはT整振のS木室長の顔をうかがった。会をリードする側の顔色を確認したかったからである。だが、そこはやはり大人。顔色ひとつ変えずに微笑みさえ浮かべている。しかしながら、その口元にはほんの微かにだが、「しようがないな」というニュアンスもなくはない。結局、その若さ故の暴走はお咎めなしでスルーしたのだった。
しかし、M原君の暴走はそれだけではなかった。同店自慢の「ごぼうチップス」をわしづかみにしては口に放り込む。
誰もが、この店の「ごぼうチップス」を楽しみにしていたはずだったのに、この小僧の独壇場を前にして沈黙を守った。
だが、この男はKYではなかった。一杯の芋焼酎を飲み干すと、どういうわけか皆と同じ甲類焼酎を飲み始めたのである。
ピンと張りつめていた場の空気が一転したのが、わたしにもよく分かった。
だが、結果的に見てM原君が、この懇親会のペースメーカー的存在になたことは間違いない。彼が、テーブルに出された料理をガツガツと食べたことによって、様々な料理がオーダーされたからである。
それは、かつてこの会にはなかった光景である。
「おいどんサラダ」「ムツかま焼き」(1,250円)「さくさくポテトコロッケ」(620円)etc。これまで何度もこの店に足を運び、ついこないだまで、ここが鹿児島郷土料理の店であることを知らなかったほど、であったのだが、こうして様々なメニューが、運ばれてくると、ようやく店の本来の姿が伝わってくるのであった。
店の料理は総じておいしい。だが、如何せん一品の単価が高い。懇親会以外なら、わたしは決してリピートしないだろう。
そうした会もやがて終わりを迎える。威勢のよかったM原君もお酒がまわったようである。
だが、やはり彼はまだ若かった。店の外に出て、二次会の誘いに彼は拒む姿勢を見せるどころか、嬉々として積極的に新宿中心街へ向かおうとしているではないか。
それが、わたしの見た最後の彼だった。
彼は、この2ヶ月後、別れも言わず転職していったのである。
-過去の「おいどん」-
居酒屋放浪記NO.0139 ~酒呑地蔵~「郷土料理 おいどん」
業界紙誌の記者達が当番制で自動車にまつわる問題を持ち寄って議論するという会合がもう何十年ともなく続いている。近年は、その研究会的要素よりも懇親会的色彩のほうが強くなり、今こうして我々は、都営大江戸線西新宿五丁目駅の近くの居酒屋「おいどん」の2階奥の座敷に座って今や遅しと乾杯の時を待っている。
当該店が当ブログを飾るのはこれで2度目。
T整振の建物を出て都営大江戸線西新宿駅5丁目駅へ。
東京都庁がすぐ近くに見えるが、ここは渋谷区だ。区の境は神田川支流の暗渠か。今、川は地下を脈々と流れており、蓋がされているが、川の跡ははっきりと分かるし、ところどころに小橋が今も残っている。
川の跡は駅の西側を斜めに横切る。すると、住所は新宿になるのだ。つまり、西新宿5丁目駅は文字通り、新宿の西の端っこなのだ。
駅が出来た頃は、このあたりはあまり店も多くなかったが、近年は、マンションも建ち、少しずつ飲食店も増えてきたようだ。それでも、めぼしい居酒屋は少なく、駅周辺で最も存在感を放っているのが、やはり「おいどん」だ。
1階から3階まで3フロアーを擁する店舗。青い電飾看板が闇夜に光る。決して大衆酒場とはいえない。従って、女性の客もけっこう多いのである。
さて、乾杯である。
陶器ののビアマグをかざし、本日の幹事であるK毎のT沢さんの挨拶で懇親会は始まった。
そう、この店はモルツなのだ。ややバイスビールを思わせる爽やかな飲み口のモルツである。これによって、なんとサントリーは3連勝!まるで昨季のラグビートップリーグ、サントリー・サンゴリアスの快進撃を彷彿とさせる。そして、とうとうサントリーが「居酒屋放浪記」のビールシェアでアサヒと同率で首位に並んだのだ。
モルツはうまい。だが、この店のビールには不満がある。ビアマグが小さくてとてもとても中ジョッキ相当量のビールが入っているとは思えないのだ。これで一杯600円は大いに不満なのである。
さて、ビールをもう一杯お代わりして、次に焼酎を飲むことにした。焼酎は甲類でボトルというのが、このメンバーの暗黙のルール。なにしろ、この飲食代はT整振から捻出されているわけで、ご馳走になりながら、横暴を犯すことは当然出来ないのだ。
だが、その禁をいとも簡単に破った奴がいた。
今回、J問研に初めて出席したsび広報社のM原君であった。初出場ということで、あまり事情が飲み込めていなかったからであろう、弱冠27歳の男は、メニュー表を取り出しては、勝手に乙類焼酎を店員に頼んだのである。
一瞬、場の雰囲気が凍り付いた…・・ような気がした。みんなそれぞれいい大人だから露骨には凍り付かなかった。だが、わたしは見逃してはいない。幹事のT沢さんの眉が微妙に動いたのである。
次にわたしはT整振のS木室長の顔をうかがった。会をリードする側の顔色を確認したかったからである。だが、そこはやはり大人。顔色ひとつ変えずに微笑みさえ浮かべている。しかしながら、その口元にはほんの微かにだが、「しようがないな」というニュアンスもなくはない。結局、その若さ故の暴走はお咎めなしでスルーしたのだった。
しかし、M原君の暴走はそれだけではなかった。同店自慢の「ごぼうチップス」をわしづかみにしては口に放り込む。
誰もが、この店の「ごぼうチップス」を楽しみにしていたはずだったのに、この小僧の独壇場を前にして沈黙を守った。
だが、この男はKYではなかった。一杯の芋焼酎を飲み干すと、どういうわけか皆と同じ甲類焼酎を飲み始めたのである。
ピンと張りつめていた場の空気が一転したのが、わたしにもよく分かった。
だが、結果的に見てM原君が、この懇親会のペースメーカー的存在になたことは間違いない。彼が、テーブルに出された料理をガツガツと食べたことによって、様々な料理がオーダーされたからである。
それは、かつてこの会にはなかった光景である。
「おいどんサラダ」「ムツかま焼き」(1,250円)「さくさくポテトコロッケ」(620円)etc。これまで何度もこの店に足を運び、ついこないだまで、ここが鹿児島郷土料理の店であることを知らなかったほど、であったのだが、こうして様々なメニューが、運ばれてくると、ようやく店の本来の姿が伝わってくるのであった。
店の料理は総じておいしい。だが、如何せん一品の単価が高い。懇親会以外なら、わたしは決してリピートしないだろう。
そうした会もやがて終わりを迎える。威勢のよかったM原君もお酒がまわったようである。
だが、やはり彼はまだ若かった。店の外に出て、二次会の誘いに彼は拒む姿勢を見せるどころか、嬉々として積極的に新宿中心街へ向かおうとしているではないか。
それが、わたしの見た最後の彼だった。
彼は、この2ヶ月後、別れも言わず転職していったのである。
-過去の「おいどん」-
居酒屋放浪記NO.0139 ~酒呑地蔵~「郷土料理 おいどん」
兄さん。彼がいつまで続くか賭けてみませんか?自分としては、半年っすかね?
そんなにタフな会社なんだ。
ハードな仕事でも彼にとってのやりがいが見出せればいいね。
幸せな転職であればいいと願うよ。
それよりも、何も言わずに転職していったのには幻滅したなぁ。