6月30日のほぼ17時、「光栄軒」に入店。それと同時に自分のサラリーマン生活は幕を閉じた。自分の身分は会社員から一気に無職に転じた。だから、今自分が何か犯罪を犯したならば、無職の男と報道される。多分、世間の人らはこう思うだろう。
無職→犯罪。
まるで記号のように。
ともあれ、無職というのも悪くはない。何か全ての事から解放されたような。少なくとも、会社のトップの支配から自由になれたのだと。
店内は想像とは裏腹に、お客さんは誰もいなかった。口開けだけど、もしかしたら並ぶんじゃないかとさえ思った。
入店して、マスターとママにご無沙汰のお詫びをした。一月と3週間ぶりの訪問。申し訳ない。忘れられていても仕方ないとも思ったが、マスターもママもしっかりと覚えていてくれた。
いつもの通り、「紹興酒」から。
そしてこれ。特大の肉茄子炒め。
うまい。本当にうまい。
マスターがワクチンを打つらしい。副反応を想定して、一日休みをとるという。最近はワクチンの話題で持ちきりで、時の流れを感じてしまう。つい半年前まではワクチンの話題なんかひとつも出なかった。さて、あと半年後、世界はどう変わっているのだろうか。
17時20分を過ぎた頃、少しずつお客さんが入ってきた。それでも以前の大盛況の頃と比べたら客足は鈍いと思う。
今日は第二段のお通しが出てくる前に、先手を打ってオーダーしようと決めていた。お酒を出せずになっていて、恐らく客単価も減っているはずだから。
「餃子」をいただき、飲み物は「お茶割」にスイッチ。
おぉ、懐かしき「お茶割」。この強烈に濃く、それで中華の脂をすっきり流してくれる懐かしき「お茶割」が本当にうまい。
気がつくとお店はいつの間にか満席になっていた。ただし、活気がないと感じるのは気のせいか。
そしてラストが「半炒飯」。
お酒が入り、楽しくなってきたのか、ついポロっとマスターに言ってしまった。
「今日で会社を辞めました。明日から自営業です」と。あまり、人には言わないようにしようと思っていたけれど。でも、会社員最後の日に「光栄軒」に来られたのは、何か良かったなとも思う。
「半炒飯」を食べ終わる頃に、O庭さんが来店し、隣に座られた。そうだ、O庭さんは自分の会社が入居するビルのオーナーを知っているんだった。O庭さんには言わないと。会社を辞めたから、もうS藤ビルに行くこともないですよと。
O庭さんとは少し話しをしたかったが、いかんせんお腹はいっぱいだし、もうこれ以上酒も入りそうにない。丁重に詫びながら店を辞した。
マスターとママに、ご馳走を言って、お店を出るとき、マスターはこんな言葉をかけてくれた。
「熊猫さん、頑張ってね」。
お店が忙しくなりつつある時、ともすると数十分前の客との会話など忘れてしまいがち。でも、マスターはしっかり、そしてさりげなくそういう言葉をかけてくれる。泣きそうになりながら、ボクは店を後にした。
とは言え、量が食べられないので〆には炒飯を食べてみたいので、組み立ては一品のみ注文になってしまいそうです。
ご主人も復帰したようですが緊急事態宣言発令中は酒を出さなそうなので、突撃はもう少し先になりそうです…
自分もそんなに量は食べられません。なので展開によっては「半炒飯」のみオーダーということもありました。大概、お通し→「餃子」→「半炒飯」というのが自分のセオリーです。
また緊急事態となり、自分もその間は足が遠のいてしまうことに後ろめたさを感じてしまいます。
近い将来、「光栄軒」のカウンターでよしださんと隣同士になったりして。