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さすら碑 037 - 北区岸町の景勝地 - 「権現坂の石碑」(北区岸町)

2024-09-21 22:02:14 | さすら碑

一風呂浴びて外に出たら、タトゥーの若者が数人いて、たむろしていた。通り過ぎようとしたら、そのうちの一人が声をかけてきた。

「この辺りにご飯食べられるところありますか」。

咄嗟に思いつかず、「王子駅の方に行ったら、いっぱいあるよ」とだけ、答えた。

「ありがとうございます」。

本当は礼儀正しくて気のいい奴らなんだと思った。

さて、自分も帰るかと王子駅の方へ向かった。

この権現坂の中腹に石碑がある。それは以前から知っていた。何度か立ち止まって見た覚えがあるものの、内容はほとんど記憶にない。

「王子の狐火」だったかと思ったら違っていた。1枚の古地図と古い絵、そして江戸百景を描いた広重の錦絵がはめこまれていた。

 

そして碑文にはこう書かれていた。

「ここは、現在、岸町一丁目に属します。 岸の地名は、すでに、戦国時代の記録にあります。 古くからの主要道である若槻街道が通っており、また東に筑波山を望んで、景観も優れていました。 江戸時代から、王子稲荷の参拝人や、海老屋、扇屋に憩う人々、名主の滝を訪れる人々で賑わう名所として親しまれています。

昭和62年3月31日 東京都北区役所」

年度末に建てられた、どうでもいい石碑。

当時、北区は予算が余っていたとみえる。

石碑は、要するに北区は飛鳥山だけでなく、岸町も景勝地として賑わっていましたよと言いたいらしい。

 

碑文に出てくる「海老屋」は確か、落語「王子のきつね」の舞台となった大店の割烹。そして、「扇屋」もその噺に登場する老舗の卵焼き屋さんである。「扇屋屋」は今も小さな店舗で商売している。以前、自分も買ったことがあり、別のWEB記事で取り上げた。

このように岸町は音無川と料理屋さん、王子稲荷、そして名主の滝がある、江戸の一大スポットだった。

自慢したくなるのもなんとなく分かる。

今では料理屋はもうないが、その代わりに「平澤かまぼこ」があり、そして「いこい」もある。名主の滝はもう存在感はないが、この両店の存在は都内でも屈指だろう。

石碑の設置代は恐らく相当なコストを要しただろう。今ならそのコストで、もっとちがう方法で町興しができたのではないかとも思う。

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