伊豆大島の土砂災害現場を訪れた。
山肌はえぐられ、見るも無惨な姿をさらけ出していた。その状況は想像を絶していた。
我々は日々の情報に晒される中で、感度は鈍い。だから、実際目の当たりにして、初めて感じることができる。伊豆大島の被災地は自然の猛威をボクの中に刻んだ。
この日も雨が降りそぼっていた。
献花台には花が添えられていた。
視察を終えて、グループは昼食となった。
我々は少しずつ、生気を取り戻し、島の郷土料理のメニューに目を通した。
「べっこう寿司」というのが大島の名物だった。
辛味が強い島唐辛子なつけたしょうゆに白身魚をひたした、いわゆるづけをネタとする握りである。べっこうのような美しい茶色をしていることから、このような名称がついたと想像できる。
白身魚の正体が分からないが、かなりの肉厚だ。多分、白身の淡白な魚ほど、づけの相性がいいのだろう。
この、べっこう寿司が運ばれてくると同時に、誰からか、酒がほしいという声があがった。
平日の昼過ぎである。
ましてや、たった今、被災地を見てきたばかりで、そんな気分じゃない。
けれど、ビールが自分の前に運ばれてきて、その流れで乾杯となった。
意志が弱い。いや、長いものに巻かれてしまう弱い自分。
べっこう寿司。
一口食べて、そのうまさに驚愕した。ピリッと辛い唐辛子醤油が口の中を支配する。身の厚い魚とシャリが渾然一体となる。
「なにこれ、うまい」。
周りの多くが同調した。
すると、飲んべえのK毎、T澤さんが、「焼酎飲もう」と言い出した。
もはや、この流れを止めることはできない。
我々は「御神火」をボトルで頼み、いつしか場は宴会になった。「御神火」とは、三原山の噴火の火柱を指していう。もちろん、この焼酎は地元、伊豆大島のものだ。
いつしか、テーブルには「ちぎりくさや」が出され、我々は、「御神火」のお湯割りをくさやであおった。
くさやはそれほど強烈ではなかった。
もう、何年も前に土産でもらったくさやは凄まじく、うんこ臭く、その印象しかなかったが、この店の「ちぎりくさや」はマイルドで、すいすいと食べてしまえる。
やはり、地元の酒には、地元の肴がよく合う。それは、絶対的で、しかもその場で食べてこそ、意味がある。
〆は「お茶漬け」。仲居さんが言うには、「べっこう寿司をご飯の上に載せてください」と。
よかった。「べっこう寿司」を残しておいて。
これマジうまい。
伊豆大島、うまいもんがいっぱいじゃないか!
被災地視察の後、酒に飲まれた我々に、「御神火」のご加護を!
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます