「アキバのカレー戦争」と書いたのは、東京新聞だったか。
確かにアキバにカレー屋は多いけれど、粒ぞろいではない。だって、「Tokyo Walker」、「dantyu」は最近こぞってカレー特集をしたけれど、いずれもアキバからは1店も掲載されなかった。
アキバのカレー屋は概してチェーン店ばかりだ。そりゃだって小僧ばかりが集まっているのだから。
店は多いが、内容がない。アキバのカレーはそんな評価か。
しかし、本当にそうなのだろうか。何もカレー専門店で出されるカレーばかりがカレーではない。
「東京人」3月号で特集しているように喫茶店のカレーはどうか。それをわたしは足利の喫茶店「杏奴」で身を持って知った。喫茶店のカレーは別格である。いや、喫茶店ばかりではない。居酒屋のカレーは?それともラーメン屋のカレー南蛮はどうか。
今回、秋葉原にあるありとあらゆるカレーを探索しようというのが、このコーナーの趣旨である。
そうすると、意外なことが分かってきた。
アキバ電気街とは対極にある昭和通り口、神田佐久間町の一角を探索。この一角は侮れない。
なにしろ、本格欧州カレーから、喫茶店、レストラン、そしてインド料理にタイ料理、さらにはラーメン屋と蕎麦屋まで、まさにカレーのるつぼだったからだ。
このエリア、アキバカレーの穴場である。
1. 金子屋(もつ焼き屋)
本格的な欧州カレーを食べさせてくれる同店。名店のカレーを復活させたという触れ込みでランチのみの販売とのこと。プレーンのカレーはなんと480円。破格な価格であるが、グレービーボートで供されるカレーは感動的だ。わたしは680円の「野菜カレー」に挑戦した。カレーはじっくりと煮込まれた感のあるトロトロ系。野菜はゴロゴロ。長芋が入っている点には驚かされた。シャクシャクと歯ごたえのある長芋はマッチングしている。
うまい。マジでうまい。欧州カレーだから、やや上品である。
「辛口」を注文した際、店員から「辛いですよ」と念を押されたが、それほど辛くはなかった。
昭和通りの入口のところで割引券つきのチラシを配っている。食べに行くなら、このチケットをゲットしてから暖簾をくぐろう。
住所:千代田区神田佐久間町2丁目11 AOIビル
2.バーンチェン(タイ料理)
路地の片隅にある小さな小さなタイ料理屋。店のおばちゃんは恐らくタイ人であろう。ふくよかな方でにこにことしている。
「グリーンカレー」は750円と比較的リーズナブル。ココナッツミルクの香りとナンプラーのそれが食欲をそそる。一口食べて感じたのは無難な味。
コクが物足りない。香辛料が少ないのではと疑問に思う。
もうひとつ注文するとしたら、タイ米の炊き方。クオリティの悪いタイ米なのか、それとも炊き方の問題なのか。お米がふっくらとしていない。
もし、お米がうまく炊けていたら、コクの物足りなさをカバーして、「おいしい」と心から思える一品になっていたと思う。
ランチメニューはドリンクがサービスとなっている。
住所:千代田区神田佐久間町2丁目12−101
3.サガン(喫茶店)
店頭には10種類ほどのカレーメニューが飾られ、カレーファンをひきつける。
外観は完全に喫茶店然とした趣。ソファが少し古い。
20種類のスパイスを使ったというカレーを注文した。これが実に1,000円。この界隈はもちろん、さすがに1,000円を超えるランチは勇気がいる。
アーモンドパン状のごはんの形にワンプレートで盛り付けられたカレーはルーがやや黒い。スパイスを多用していることはこの点からも感じられる。
香りがいい。ジャンル的には欧州カレーである。辛さはそれほどではないが、鼻腔を突き抜けるスパイシー感が面白い。
食後にワンドリンクが付くが、さすがに1,000円という金額を考えれば満足感は少ない。
住所:千代田区神田佐久間町2丁目8−1
4.フレンド(レストラン)
一見喫茶店。だが、店の外観には「レストラン」と表記されている。この店のカレー、「ジャンボカツカレー」はすさまじかった。
「今日のサービス品」と書かれた紙が店の外に貼りだされている。だが、いつ行ってもこの紙は貼りだされたままだ。つまり、毎日「サービス品」なのである。
660円の「ジャンボカツカレー」。大きなお皿にボリューム満点のカレーライスとカツ。まずはそのビジュアルに驚きである。だが、それだけではない。
その後、店のマスターが様々なものを運んでくる。
「ひじき」の小皿。お味噌汁。そして生卵。食後には薄いコーヒーがついてくる。
これで価格はたったの660円なのだ。
カレーはオーソドックスな日本カレー。いや、その純朴さに「ライスカレー」と表現してもいい。カレーとご飯がお皿の上で対峙せず、ごはんの上にカレーがかけられている、その様はまさに脚本倉本聰、時任三郎、陣内孝則、W主演のドラマ「ライスカレー」そのもの。
話は脱線した。そう、この店のカレーのボリュームはものすごい(多分、カレーだけではないだろう)。
かつて、「フレンド」に14時に訪問したことがある。マスターは一言「食事は終わっちゃったんだよね~」。早々に売り切れてしまうので要注意だ。
住所:千代田区神田佐久間町3丁目37 ホテルフレンド内
5. インディアンレストラン アールティ(インド料理)
ビルの狭い階段をのぼると現れるインド料理屋。階段の途中からクミンシードの薫りがし始め、いやが上にも期待は高まる。
ランチは3種。カレーの数によって値段が違う。1種類のカレーであれば、750円。2種類は900円だ。カレーの種類とサフランライスorナンを選ぶ。わたしはダルカレーにサフランライスをチョイスした。ビリヤニがメニューにあるということは南インドの店であると想像できる。カレーはドロ系。スパイス感は高く、辛さもほどよい。インドで食べたターリーにかなり近いと感じるが、豆臭さにもの足りなさを感じてしまう。マサラと豆感がいまひとつと感じた。だが、この店食べログでは3.56(2014年6月19日現在)の数字を叩き出しているが、その数字ほど評判通りとはいえない。
食後にはラッシーがつく。
住所:千代田区神田佐久間河岸50 大岩ビル2F
6.庄や 秋葉原東口店(居酒屋)
レストラン「フレンド」とは目と鼻の先、恐らく値段設定は十分「フレンド」を意識したであろう。660円という設定がそれを物語る。
「アキバカレー」と称したカツカレー。ジャンボなカツにボリューム満点のカレーライスは見事に張り合っている。だが、サイドメニューはサラダのみである。いや、「フレンド」が異常であって、「庄や」が普通かもしれない。
さてさて、肝心のカレーの味だが、かなりのドロ系。カレーの色は茶褐色。だが、恐らく冷凍ものだ。どこか気の抜けた味がつきまとう。味は市販のルーとは異なり、やや荒削り感を感じる。野菜は見事にオーソドックス。まるで友人の家でごちそうになっているかのようだ。だが、660円という値段設定は立派。
住所:千代田区神田佐久間町2丁目8−3 東紳協ビル1・2階
7.紬麦(ラーメン)
当欄にてアキバのNo.1ラーメンの称号を与えた「紬麦」。
ラーメンもうまいが、実はカレー南蛮も素晴らしかった。カレー南蛮の出汁は味わい深くなければおさまりが悪いが、この店の出汁は見事。これだけでも店の真価は証明された。
出汁はすっきりとしている。鰹の香りが漂うのは分かるが、恐らくそれだけではあるまい。動物系も入れているはずで、それは恐らく鶏ガラだろう。そして圧巻は麺である。テレビ「だけど食堂」で讃岐のうどん粉を用いていると紹介された。もちもちの麺が素晴らしい。「ダメ」と思いつつも、気が付けばスープも飲み乾してしまった。
普通にラーメンを食べるのもいいし、カレー南蛮でキメてもOKだ。後者は奇をてらったメニューではなく、ある意味、裏ローテのエースともいえる。
住所:千代田区神田平河町1 第三東ビル B1F
8.かぐらや(蕎麦屋居酒屋)
店に入った瞬間に、「しまった」と思った。これは長年、居酒屋をさすらう者の勘である。なんとなく、雰囲気が悪いのだ。
だが、その悪い予感は当たってしまう。「カレー南蛮せいろ」の蕎麦はこしがないというどころのものではなかった。ふにゃふにゃなのだ。しかも、見事に蕎麦のボリュームが少ない。これで850円の設定なのだから、恐れ入る。
食べた瞬間、自らを呪いたくなった。「この850円でもっとおいしいものが食べられたはずだ」と。そう、この店から北に100mほど行ったところにある「富士そば」でカレーセットを食べた方が安価でしかもおいしいはずである。「富士そば」の蕎麦はこしがあり、弾力も見事。それに引き換え、この店の蕎麦といったら。しかも、従業員は料理を出したら、ホールの女の子とおしゃべりをはじめる。さらには、背後の客は自分が食べ終わると、タバコに火をつけ、吸い始めた。分煙ではなかったのか、この店は。勘定を支払う段でも気持ちのいい対応はなかった。近年まれにみる素敵な店であった。
住所:千代田区神田佐久間町2-1
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