浜松町と田町の間を点在するように立ち飲み屋が分布するということは前々回の小欄にて書いた。
「MITONE」から、南下すると芝商店街は終点となり、通りをまたぐと「内田屋 西山福之介商店」が現れる。この店も角打ちだ。
既にこの店は踏破しているので、スルーした。
このあたりは普段からよく通る道である。通りを右に折れて、慶応通り商店街を裏側から侵入するのがいいいか、それとも第一京浜に沿って田町に入るのがいいか、しばし逡巡した。
この先、田町駅まで立ち飲み屋は、もうないのである。
田町駅周辺にはまだ見ぬ立ち飲み屋が2軒ほどあった。順序としはそこから攻めていくのがセオリーと思い、わたしは第一京浜に出た。
その国道1号線に沿って、少し歩くと、右に折れる道端に店があった。よく通る道なのに見かけない店である。念のため確認しようと店に近づくと、なんとそこは立ち飲み屋だった。
浜松町-田町間は切れ目なく、本当に立ち飲み屋が点在する区間だった。
「源喜」という店は、店頭に「ホッピー」の幟を立てた、ややくたびれた立ち飲み屋だった。ドアはなく、厚手のビニールが入口である。のれんには「おでん」の文字が染め抜かれている。
こんな寒い日に、おでんはぴったりだと思い、ビニールをかきわけ店に入った。店内は壁に沿って周囲にカウンターをあつらえたこじんまりとした店だった。
カウンターの向こうの厨房に「生ビール」(380円)と声をかけ、やや間を置いて、「みそおでんの三点盛り」(300円)をオーダーした。
「あいよ」という声が返ってきて、やがておじさんが一人現れた。どうやら、このおじさんがひとりで切り盛りしている店のようである。
店内は雑然としており、いかにも男所帯の店というあんばいだ。
短冊メニューに書かれた「生ビール」の価格は380円だが、訂正した跡があり、400円と記されていた。どうやら値下げしたらしい。店の苦渋ぶりが伝わってくる。
その生ビールをあおる。恐らくスーパードライだろう。やがて、みそおでんがテーブルに置かれた。
このみそおでんにはちょっとしたストーリーがあるようだ。
店内の壁に貼られた紙によると、横須賀の根岸というところにあった「うしず」という駄菓子屋で生まれたみそおでんをルーツにしているという。その味を今に継承しているというのが、この「源喜」のおでんであるという。
実はわたし、田楽風なおでんを好まない。
熱々のところを恐る恐る食べてみる。
ふむふむ。おでんの種は「厚揚げ」「大根」そして煮玉子。特に大根がおいしく感じられない。申し訳ないが、やはり自分の好みではない。
「チューハイ」(280円)と「ポテトサラダ」(350円)を頼んだ。
「チューハイ」の価格は安価だが、ポテサラはその水準からするとやや割高に感じた。手作りではあるが洗練されたものではない。店の外観と内装然り、料理の男所帯を脱しきれていないようだ。
みそおでんで意気消沈したせいか、わたしはそれだけ食べると、そそくさと店を出た。これ以上の喜びはないような気がしたからだ。
最近、この店の前を通り過ぎた。
まだ元気に営業されているのだと意外な気持ちになった。
だが、店内には椅子が入っていた。
今はもう完全に転んでいる。
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