青葉区あざみ野。広大な原っぱと樹木が拡がり、例えればサバンナのようなイメージ。でも、一応横浜市だし、ましてやターミナルの駅だから。それはないだろうと思っていたが案の定、中途半端に田舎だった。
駅を降りると、あたりは真っ暗で、店が少ない。こりゃ、立ち飲みどころか、居酒屋を探すのも苦労しそうだ。
しばらく歩いてみたが、目ぼしい店がなかった。こりゃ困った。もう一度駅の周囲をゆっくり見て回ることにした。すると、ちょっとした古い雑居ビルが目についた。赤いテントに「あざみ野センタービル 飲食街」とある。
いかにも古臭いレトロな雰囲気である。飲食街というから、ある程度の店舗が入っているのだろう。そう思って、ちょっと探検してみようと階段を昇った。その飲食街とやらは2階にあるのだ。
階段に続く長い廊下を超え、2階にあがると店はたったの3軒。居酒屋と中華料理屋である。飲食街って。でも、この怪しげな建物と雰囲気。訳ありなのだろうと思う。もしかすると、ここは戦後の闇市だったのではないだろうか。
ともあれ、そんな怪しげな雰囲気のビルにある、その居酒屋は「越後 三百八十文」。この店名も極めて不明。怪しさ満点である。だが、他に行き場もないし、そもそもこの怪しげな雰囲気を味わってみるのも悪くはないと、意を決して店に入ってみた。
店内は昔ながらの古き良き居酒屋さんだった。厨房とカウンター。奥にはテーブル席。今時、こんな絵に描いた昭和な酒場も珍しい。
新潟系の酒場は都内でも珍しくないが、その多くは重厚である。いい意味でも悪い意味でも。多分、日本酒が店のコンセプトの核になっていることと、恐らく無関係ではないだろう。だから、必然的に重厚で堅い店ができるのだと思う。
越後の酒か、それとも「ホッピー」か。かなり、ボクは悩んだ。これから、家に帰るまでちょっとへべれけにはなれないな。
ボクは「ホッピー」と「栃尾のあぶら揚げ」(294円)を頼んだ。
メニューには刺身、串焼き、一品もの、いずれもオールラウンドに取り揃えていた。その品数は、かなり多い。さすが新潟系。
短冊メニューの字は書きなぐったかのような乱雑さ。そのいずれも魅力的だ。けれど、何故かワクワクしない。メニューの豊富さとワクワク感は比例するとばかり、思っていたけど、必ずしもそうでないことが分かった。この重厚感がそうした気持ちを阻んでいるのだろうか。
「栃尾あぶら揚げ」は、さすがにうまかった。ホッピーとの相性も抜群だ。
さて、もう一品をどうするか。メニューを見て、悩んでいると、隣に座るおじさんに話しかけられた。「ここは、魚を食べなきゃ」。
ボクに対するアドバイスだった。
メニューを見ると、確かに魚が豊富だった。刺身は300台から。焼き魚も200円台だし。カレイは唐揚げにもしてくれる。確かに、おじさんの言うとおりだった。これなら、最初から酒を飲めばよかった。
ボクは、豊富なメニューから「さばの塩焼き」(294円)をチョイスした。
おじさんと話をするうちに、おじさんがボクの住む街で子どもの頃を過ごしたことが分かった。しかも、娘の小学校の先輩である。知らない酒場の取り持つ縁とは、なんとも不思議である。
「さばの塩焼き」は確かにうまかった。しかも、値段もずいぶんと安い。
なんとも気持ちのいい酒だった。
それは、それは。
あざみ野、初めて降りたけれど、お店があまりなかったよ。
怪鳥の場合、わざわざひとつ向こうには、なかなか行かないよね~。
先は交通費も掛かるし(笑)。実際、あざみ野にわざわざ行ってみたい店が今のところないんだよな~。でもここは良さそうじゃない?
この店、一度、1度に行ってみて下さいまし。
行けばわかるさ。