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居酒屋さすらい 0666 - 天串という生き方 - 「立ち呑み 天串の店 秀吉本店」(台東区根岸)

2013-08-06 13:40:19 | 居酒屋さすらい ◆立ち飲み屋
長い戦いの果てにたどり着いたのは。
いつ終わるとも知れぬ真夏の太陽の下で。日暮れの里を遙かに見上げると、あの日の空と同じような茜色が見えたのか。
駅から伸びる橋の上で振り向いた顔を正面に向けると、ダンスホール「新世界」。
小さな階段を下りて、そこには戦後まもなくの頃とあまり変わらないであろう風景が広がる。
狭い路地裏に白煙があがり、いかがわしい男どもがワンカップをあおる。その店を左に折れると、そこは娼婦どもが立つ一角だ。
この変わり身の早い東京の姿に思わず口に出るのは「恐れ入谷の鬼子母神」。
母が子どもを食べるのは比喩にしか過ぎず、今の方がよほど恐ろしいことが起きているような気もする。
雑然とした街並み。
歩道橋のトンネルはほこりっぽくて、思わず手で口をおおった。

「新世界」の裏道。袋小路となるこの一角に「天串 秀吉」。この小さな街角の存在には気づかなかった。
「ささのや」がドヤであるならば、「秀吉」はホワイトカラーが多かった。
だが、「秀吉」も充分にくたびれた店だった。
引き戸を開けると10坪ほどの店に出る。入口のドアに近いカウンターに陣取り、発泡酒「生搾り」のジョッキ(300円)を頼み、一気にのどに流し込む。
その恍惚とした意識の中でいつもの通り、つぶやいてみた。
「今日も1日生き延びた」と。

おばちゃんが発泡酒の入ったジョッキを持ってくると同時に「お兄さん、チケット買ったら」と言った。
「秀吉」はチケット制だった。財布から1000円を出して100円お得な1,100円分のチケットを購入した。

「天串」。
串焼きと串揚げが全盛の立ち飲み界にあって、この「天串」の存在は異質だ。
天ぷら串の専門店。
いまだかつて聞いたこともないジャンル。
試しに「いか」「きす」「海老」「ソーセージ」を頼んでみた。全て各100円。
これがホクホクでうまい。目の前で揚げてくれるまさに揚げたて。

「生搾り」を飲み干して、さて何を飲もうかと思案するが、飲み物メニューは寂しい。
最も充実しているのが、日本酒の数々だった。天ぷらと日本酒って合わないんじゃないか。日本酒には淡泊なものこそよく合うはずだ。しかしながら、仕方なく「高清水」(400円)を冷やで頼んでみることにした。冷やとはつまり常温のことである。
だが、意外に。
意外においしいことに気が付く。
多分、天ぷらがベタベタではなく、適度な衣をつけてサクッと揚げているため脂分が少ないからだろう。

店には3人のおばちゃんがいた。
そのおばちゃんらには序列があった。いや、ヒエラルキーといってもいい。おばちゃんの世界が垣間見えた。

チケットを使い切り、店をあとにした。
駅前は人の往来が激しくなっていた。歩道橋からは、もはや太陽の残照は跡形もなく消え、眼下にはひっきりなしに電車が走る。
電車からは大勢の人が降りてきては、また大勢の人を乗せて走っていく。それが約3分毎に繰り返された。
走り去っていく電車の赤く点るテールランプを見ていると、その繰り返される営みが馬鹿馬鹿しく思えてきた。

星は見えないが、夜空は晴れている。
日本はどうやら平和らしい。

そういえば、家康の死因は天ぷらにあたったからという説がある。
家康亡き後を継いだ秀吉。だからか、だから天ぷらなのか。

夜の風はかなり涼しくなっているた。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (熊猫)
2013-08-07 11:48:44
香港のラッキーゲストハウスで、師と出会ったのは1996年の12月22日だったな。
はるか昔にも思えし、ついこないだの出来事のようでもあるよ。

ダミアンとは関係ないけど、最近そんなことをふと思いだした。

じゃ、また来月!
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なにが (ふらいんぐふりーまん)
2013-08-06 15:45:20

何がダミアンなのか?

・・・、と思ったら、そうか!そうだったのか・・・。
居酒屋さすらいも、もう666回か。

すんげえ行ってるね!師よ!!!

飲み過ぎんなよ!

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