FC東京が西が丘に帰ってきた夜、ボクは嬉しかった。おらが街のサッカークラブとして応援してきたが、ホームスタジアムを東京スタジアム(現、味の素スタジアム)に変更して以来、かのクラブは都下のクラブになってしまった。だが、この日、FC東京は、我が街に帰ってきた。リーガエスパニョーラ2部のSCサパデルとの練習試合のために。
味の素フィールド西が丘。ゴール裏の向こうに古い団地が見える。このサッカー専用スタジアムが我が街にある幸せ。かつて、川縁三郎がチェアマン時代に言った「23区にひとつずつクラブがあっていい」という言葉を思い出す。確かにそう思う。TOKYO23ではなく、スペリオ城北でもない、もっとミクロなクラブが。
ゲームは面白くなかったが、スタジアムから自転車で帰宅できる喜びを胸に、ボクは酒場に急いだ。赤羽か十条のどっちで飲むか悩んだが、落ち着いて飲める十条で止まり木を探す。十条銀座に続く細い道を通った時、ボクは立ち飲み屋を見つけた。こんなところに、立ち飲み屋があっただなんて。自転車を止めて、しばし見た後、この日は立ちっぱなしだったこともあり、別の店に向かうことにした。
だが、15分程度、店を物色したが、ここぞという店を見つけられず、さっきの立ち飲み屋を再び探しに出かけたが、はておかしい。見つからないのだ。何度も何度も近辺の道を行き来したが、結局店は見つからなかった。王子の狐にでも化かされたか。
失意のまま、別の店を探すことにした。
そうこうすると、一軒の店の前に辿り着く。
臙脂の看板に氣楽と書いてある。
店頭にあるメニューには「生ホッピー」の文字が躍る。
これが決め手となった。生ホッピーの魅力には叶わない。
だが、店に入ると暗雲が漂った。
店には数人の客しかいなかったからだ。
ボクは店の片隅に陣取り、生ホッピーとポテトサラダを頼んだ。
店の主人は着物デザイナーのきよ彦さんのような方だった。オネエではなかったが、このご主人が店の主役だった。女将さんは、きよ彦さんの奥さんだろうか。
テレビはボクシング世界戦。常連客はその試合に一喜一憂する。
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