1軒の立ち飲み屋があるということは、周囲にまだ他の立ち飲み屋があるはずである。
立ち飲み屋は地域に支持されなければ続けていけない。
「もりすけ」は繁盛していた。したがって、蕨という地域に立ち飲みが支持されたのである。
駅の周囲を散策してみることにした。
すると、「焼鳥 あかり」という立ち飲みが、いとも容易く見つかった。やっぱり、蕨は立ち飲みの街だった。
だが、この「あかり」という店もディープだった。多くの客でごった返し、立錐の余地がないほど混雑している。
もう1周してから来てみよう。
しばらく歩くと、また一風変わった店を見つけた。
「ちょいのみ」。
このくたびれ感。陰気くささは只者ではない。中を覗いてみる。椅子がなく、そこは立ち飲みだった。
またもや立ち飲み。きてるな、蕨。
だが、この「ちょいのみ」、客もいなければ、店の人もい見えない。
だが、電気はついているから、店はやっているのだろう。恐る恐る、扉を開けてみると、扉は開いた。蛍光灯の灯が薄暗くぼんやりと店内を照らしている。
「こんばんは」。
声をかけると、カウンターの向こうで小柄な老人が突如現れた。どうやらしゃがんでいたらしい。色の浅黒い、痩せた男性である。
さて、何を飲もうか。
「ビール(中)」が450円。「お酒」450円、「ウーロンハイ」300円、「ホッピー」350円。「電気ブラン」(450円)というのもある。
ホッピーはすでに飲んでしまったので、ここは「レモンサワー」(350円)で。
さて、つまみを何にしようか。
「韓国のり」150円。「チーズ」150円。「とんび」200円。ふむふむ。
「さけとば」250円、「にんにく醤油漬け」250円。なるほど。もっとお腹にたまるものがほしいところだが、仕方ない。
「にんにく醤油漬け」、大好きなんだよなぁ。
「レモンサワー」は、こんな蒸している夜にはぴったり。
塩気がある「醤油漬け」に「レモンサワー」という相性も抜群。
店の壁に貼ってあるメニューに、恐らく店主であろう似顔絵が描かれている。よくよく見ると、その絵は女性のように見える。
髪はボーイッシュなショートカットなのだが、女性のようだ。この店主の絵なのだろうか。そうすると、わたしが男性と思った、この店主は女性なのだろうか。なんとなく、まじまじと見てしまう。どう見ても男性である。
メニューとは別に、営業時間を示す紙にも同じ似顔絵。
営業時間は「15時から疲れるまで」。
「疲れるまで」って。
年季が入った店の壁にその営業時間を示す黄色い紙が燦然と輝く。
しかし、15時から営業とは。
「もりすけ」が13時から。
なんだ、蕨も昼飲み天国だったか。
結局、「レモンサワー」をお代わりして、店を出た。
その後「焼鳥 あかり」に行き、そこの常連さんから「ちょいのみ」の店主が女性であることを聞いた。
男性と疑わなかったわたし、大変失礼いたしました。
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