とある土曜日に、出勤した昼下がり。社長とA藤君と、そしてボクは、酒を飲むことになった。
ボクがいると、「村役場」には行かない社長。今回、社長が選んだのは、アメ横の南側にある「一軒め酒場」である。
これ、「養老乃瀧」グループ。今や、都内にもたくさんの店舗を見かける。アメ横の端にある店は、その立地の良さから、いつも大変な混みようである。
以前、一度だけ、店に入ったことがある。それも確か土曜日だった。
一階の席にボクは着席したが、店員がなかなか現れない。どうやら、2階と1階を一人で切り盛りしているようだ。
ようやく1階に降りてきた店員に、「注文いいですか」。
ボクが声をかけると、
「ちょっと待ってください」
といって、再び2階に上がっていった。
それきり、店員はまたしばらく現れなかった。
ボクは、店を出ることにした。
だから、この店の印象は極めて悪い。けれど、今回は社長が、「ここにしようや」と言ったのだから、仕方がない。
我々は2階に通された。
顧客の細分化が進むサービス業、とりわけ飲食店のFCは、新業態の出店に余年がない。
「一軒め酒場」も、ちょい飲みを意識して作った店舗であろう。
メニューの安価さ半端ない。「サッポロ 生ビール」(389円)が全てをあらわしているといえる。A藤君がかねがね言うビール、U400説だ。U400とは4、言わずもがな400円以下の生ビールである。
もうひとつ、象徴的なメニューが「酎ハイ」関連。これが1杯205円。この安価さは、このアメ横界隈にない。「たきおか」でも、290円である。あれこれ熟考しなくとも、容易くセンベロが可能な店といえる。
例えば、「酎ハイ」を3杯飲んだとしても、残り385円も有効に使える。メニューも多いから、バリエーションも豊富だ。
そんなことを考えながら、シミュレーションしてみた。最初にオーダーしたのが、「神田旨カツ」(107円)。ボリュームもあって、素晴らしい。
A藤君も、「これ、うまいッスよ」と太鼓判を押す。タレはソースと和風から選べるのもいい。
さぁ、残り278円をどのように使うか。
ボクは、「一軒めボール」に全てを賭けた。またしても揚げ物なのだが、名前の響きがいい。メニューの写真を見ると、どうもつくねを揚げたものようである。これが、238円。トータル960円。
十分満足なセンベロが完成した。
しかし、この「一軒めボール」がうまかった。カレー風味のねりもの。鶏ではなく、魚のすり身である。これをケチャップかマスタードでいただく。ボクはオーソドックスにケチャップで食べたが、マスタードも十分ありだろう。
基本的に、チェーン展開する店には行かない。「一軒め酒場」に行くなら、「たきおか」を選んでしまう。でも、24時間営業だし、あれこれ重宝しそうな店である。
ただ、「一軒め酒場」はあまりにも安いので、ここでいっぱい頼んでしまうと、もう次がないような気がする。つまり、2軒目はなく、「一軒きり酒場」になってしまうと思うのは、ボクだけだろうか。