ひと風呂浴びて、さて酒でも飲もうか。あわよくば、立ち飲みなんかがあればいい。
そう思いながら、ボクは適当に歩いた。
京急の穴守稲荷駅周辺に果たして立ち飲みはあるか。たいした期待もなかったが、もしかすると角打ちくらいならあるかもしれないと、ボクは淡い期待を持った。
しかしながら、延々と住宅街が続き、酒場どころか、商店の1軒も見つけられなかった。立ち飲みは、もう見つからないと思った瞬間、奇妙な店に出くわした。
ボロい建物の前を通り過ぎたとき、「一番搾り」ののぼりが目についた。
「おや?ビール飲めるのか?」
反射的にそう思った。ちょっと立ち止まって建物の中を覗いた。
酒場のようには見えない。いや、そもそも何の店かも分からない。
店頭には大きな業務用の保冷機があるのみだ。
そこにベタベタと貼り紙がされている。
「鮪野菜串焼」150円。
「鮎の田楽味噌焼」500円。
「真鱈フライ」200円。
こんな具合にメニューが貼り出されている。
とても、料理屋さんには見えないが、どうやら調理をしてくれるらしい。
すると、店主と思しき人物が奥から現れた。
ボクより少し歳をいったおじさんである。
「調理してくれるんですか?」。
そうボクが尋ねると、おじさんは大きく頷く。
これは面白そうだ。
だが、店内には食べるスペースがない。
ボクがそういう仕草をしたのだろう。おじさんは、「その椅子で食べてってよ」という。
道端に椅子とテーブルが用意されている。
面白い。
店に入りきらず、路上で立ち飲みしたことはあるが、本当の路上に勝手に椅子とテーブルを持ち込んで食べるなんて、まさにワイルドだ。
「じゃあ、生ビールと『北海つぶ貝焼』」ね。
この「つぶ貝焼」は1本が250円。
ボクはこれを2本注文した。
すると、おじさんは生ビールを注ぐと、ささと店の奥に入り、そのままこもってしまった。
どうやら、家の台所に入ったようだ。
風呂上がりのビールは格別だった。
体がまだポカポカしていて、ビールの冷たさが五臓六腑に落ちていくのが分かった。
昼間の下町の路上で、椅子に座って、我が物顔で飲むビール。
たまらなく最高である。
店の看板がこじんまりと出ていた。
「ワイルドダイナー」と書かれている。
その下に小さく「栄養薬理療法研究所」という文字もある。
なんとも摩訶不思議な店である。
ビールを1杯飲み干した頃に、ようやく「つぶ貝焼」が出てきた。
早速、口に運ぶとこれがコリコリでたまらなくうまい。
生ビールをお代りして、ボクは串焼きの貝をほおばった。
すると、おじさん。
「海老の頭はビールのあてになるからね。ちょっと焼いたから、よかったらどうぞ」。
おぉ、大きな海老じゃないか。
つまんでかじってみる。
パリパリのえびせんじゃないか。こりゃたまらん。
「しかし、変わった店ですね」。
ボクがおじさんに言うと、「おもしろいでしょ」。
とニコニコして言う。
ボクは3杯目のビールをお代わりした。
そんなボクの姿を見て、道行く人はジロジロと白い目で見ていく。
飲める魚屋。
とりあえず、そういうカテゴリーでいいのかも。
こんな破天荒で野性味溢れる店はあまりない。
偶然にもこんな店を見つけられて、今日のボクはラッキーだった。
それよりも、自分らが今も仲良く酒を飲んでいるっていうのも、ちょっと信じられないかも。
あと、亀戸の養老の瀧とか(笑)。
素質はあったね。
君とは10代のころはそれほど行かなかったねえ~。
亀戸の「養老」ってN村君とこかな。
水道橋の「どんたく」には行かなかった?
OムやH塚が入り浸ったあの伝説の店。
OムやH塚との付き合いは卒業後に多くなったからね~。
水道橋ではあまり飲まなかったな~。
2年くらい前に、気になって、「どんたく」に行ってみたら、閉店してた。
しかも、閉店一週間後みたいだったから、ちょっと残念。
在学中に怪鳥とはほとんど飲んでないね~。
道玄坂の途中にあった「天狗」。
今もあるのかな?
「天狗」で食べた「かた焼きそば」が忘れられないよ。
4人で行ってホッケとかた焼きそばだけで充分だったよねえ~。今はさすがに形態も変わってるから同メニューは無いだろうな~。