福島県いわき市。日産自動車のエンジン組み立て工場にカルロス・ゴーン氏訪問時の写真がうやうやしく飾られていた。東日本大震災で被害を受けた直後の写真である。そのいわき工場の生産体制は素晴らしく、感銘を受けたのだが、ゴーン氏の写真には何か引っかかるものを感じた。結局、ゴーン氏を神格化させ奉ったのは日産自動車そのものだったのじゃないかと。取材の帰りに、思ったものである。
湯本駅前。震災復興を目指す夜明け市場は、まだ開店前。ちょっと一杯と思っていたが、まだ時間は早いらしい。ならば、ちょっとひとっ風呂。いわきは温泉街でもある。なにしろ、あの有名な日帰りハワイを擁する街である。その起源は極めて古く、奈良時代といわれ、有馬、道後と並ぶ日本三大古湯と称されるらしい。それがいわき湯本温泉である。その温泉郷のシンボルとなっているのが前述の「スパリゾートハワイアンズ」、そして共同浴場の「さはこの湯」だ。幸いにして、後者の浴場は駅から徒歩で行くことが可能となっている。さて散歩がてら、ちょっと行ってみるか。
温泉街といっても、道後や草津のような観光地という風情ではなく、田舎の小さな町。温泉ホテルが建ち並ぶ訳でもなく、点在していると表現すべきか。「さはこの湯」は住宅街の一角に。しかし、その建屋は、やや異形だった。まるでミニチュアのお城のような外観。火の見櫓をイメージしているらしい。ホームページには「江戸末期の建物様式を再現した」とある。
建物に入ると、一気に硫黄の香りが強まる。エクステリアは改築したらしいが、内装は古いまま。かつては「温泉保養所」という施設だったらしく、その佇まいが今も伝わってくる。だから、雰囲気は十分。
お風呂自体は狭い。10人も入れば混雑気味。岩風呂と檜風呂を日替わりで男女入れ替えを行うらしく、この日の男湯は岩風呂。源泉は57度ということで加水しているが、湯温は45度くらいか。かなり熱い。ただ、300円で源泉掛け流しという贅沢感は素晴らしい。ちなみにシャンプーも石鹸も備え付けはなし。だって300円だから。
山口市の湯本温泉にある、あの公衆浴場は、これこそ地元の共同浴場だと思ったものだが、この「さはこの湯」だって、銭湯とは違う公衆浴場としての雰囲気は抜群。300円だったら、毎日でも通いたい。そんなグレートな温泉だった。
これは、これは。奇遇ですね。300円の入浴er(にゅうようかー)同士ということで。
月末に千葉県の勝浦に行く予定があり、「勝浦公衆浴場」で検索すると、和歌山の「はまゆ」という公衆浴場が多数ヒットします。モノノフさんは行かれたことがありますでしょうか。
和歌山の勝浦も気になるこの頃です。