労働契約法第18条は、「5年を超えて有期雇用契約を締結している労働者が無期雇用契約への転換を申し込めば、使用者はそれを承諾したものとみなされる」旨を定めている。
この規定は平成30年4月から施行され既に3年以上を経過しているが、厚生労働省の実態調査によれば、この制度を利用して無期雇用に転換した有期雇用労働者は27.8%に過ぎなかった。とりわけ、「無期転換を希望するか」との問いに「わからない」と回答し、その理由として「この制度を知らない」と答えたのが53.8%にものぼった。
【参考】厚生労働省サイト > 令和3年有期労働契約に関する実態調査(個人調査)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/172-3.html
この実態を踏まえ、厚生労働省に設置された「多様化する労働契約のルールに関する検討会」では、無期転換ルールについて有期雇用労働者個々に通知することを事業主に義務づける案が検討されている。そして、この通知のタイミングとして、「無期転換申込権が発生するより“前”に通知するのが望ましい」と答申される可能性がある。
しかし、経営側の立場としては、予め通知すると、5年を超える雇用継続の期待を当該労働者に生じさせてしまうことが考えられるので、無期転換申込権が発生する契約更新の際(初めて発生する際およびその後の契約更新ごと)に行うのが現実的と思われる。実務上は、契約更新時に労働条件を明示するのに併せて無期転換ルールについても通知することとすれば、経営側の負担はそれほど重くならないだろう。
とは言っても、公平な立場から見れば、有期雇用の更新を繰り返すよりも無期雇用に転換したほうが雇用の安定に資するので、社会的にはそれを推進するべきと言える。経営の都合や労働者本人の希望で有期雇用を続けるのは仕方ないとしても、少なくとも「制度を知らなかった」ために無期雇用にならないというのは避けたいところだ。その意味で、今般の検討会の方針自体は歓迎できる。
もっとも、ここで検討されているのは「通知義務」についてであって、育児休業のように「個別の周知・意向確認」(今年4月から義務化)まで含めるかは、今後の検討課題とされている。現時点ではその可能性が肯定も否定もできない前提で、審議を注視していたい。
なお、会社が、有期雇用労働者に対し無期転換しないよう強要したり、無期転換を申し出たことをもって不利益に取り扱ったりするのは、明らかな法違反であるので、厳に慎みたい。
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