人生には上り坂、下り坂、そしてまさかの坂があるというが…
その「まさか」が。
まさか、あそこで出会うなんて。
厳密には、私が出会ったわけでは無いけれど…。
友人が2駅先に引っ越すことになり、引越し前に新居を見学することになった。
メンバーは、かつてのテニス仲間の3人。
この仲間には、かつてもう1人いた。
その友人Sとは喧嘩をしたわけでも、嫌いになったわけでもない。
ある時期から、彼女から様々な不満と愚痴ばかりを聞かされるようになった。
多分更年期ゆえの体調の悪さだったのかもしれないが、その絶え間ない愚痴を聞いていると、私の体調がたちまち悪くなった。
私達が勧めた婦人科やメンタルクリニックに行くことより、Sが選んだのは、かつて批判をしていたカルトめいた宗教だった。
そして、私は距離をおいた。
互いに一生の友人になれると思っていた。
だから、距離を置いてから2年近く経った今でも、Sさんは元気でいるかしら?と思わない日は無い。
友人の新居を見学して駅に戻る道すがらに、ファッションのお店をみつけ寄ってみた。
3人はそれぞれ店内を回り、私がレジにいると、「Sさんがいるのだけれど…」と友人が駆け寄ってきた。
かつてのテニス仲間、その3人が仲良く一緒にいるのを見れば、嫌な感じがするのは当然だ。
なので、2人で店外へ出たけれど、もう1人の友人を置いてきてしまった。
Sさんが地理的に考えてもそこにいる理由は見つからず、それこそ、まさか、そんな所で出会うなんて…
しばらく店外で待つと、ひとり置いてきてしまった友人がやっと出てきた。
Sさんと近況を話していたらしい。
そして別れ際に、私のこと、そして私の家族は元気なのか訊ねてきたわよ、とその友人は言った。
彼女も私同様、私のことを気にしていたのだ。
しかし、私の中ではSのことを気にしながらも、2人の距離は日々開いていくのを感じている。
いつか私も狭い市ゆえ、まさかの坂で、ばったりSさんと出会うことがあるかもしれない。
その時に、まさかの坂で、私のなかにどんな想いが駆け巡るのだろうか。