春先から別誂えをお願いしていた若草色の訪問着ですが、ようやく仕立てまでが
終わって、出来上がった着物が手元に届きました
こちらは、製作を担当してくださった公庄工房様から送られてきた全体の画像
です。自宅には衣桁がないので、こうして広げた全体像を見られるのはとっても
嬉しいですね
(この画像が一番実物に近い地色です)
こちらが自宅に届いてから自分で撮影した写真です。全部は広げられないので
どうしても畳んで平置きした状態になってしまいますが...
実物はとても綺麗な若草色に華やかな友禅が施されて、これほどに綺麗で上品な
色使いの訪問着は、見たことがありません。これくらい豪華な訪問着を百貨店で
購入したらいったいいくらになるのか
上前は正倉院の「螺鈿紫檀五弦琵琶」をメインにし、竜笛・鼓・法螺貝・絵巻物
などの王朝風の古楽器や小物を配して、梅・松・楓・桜が流水に向かって伸びて
いく様子を描いています。
背景には金彩が施されたヱ霞を全体に配置してもらいました。絵巻物に描かれて
いるのは寝殿造りの簾子にお庭の遣り水と菊で、王朝風に
琵琶は全体をたっぷりした金駒刺繍で囲んであり、螺鈿細工部分の色を表現して
いるのは、淡いピンクと水色。少し離れて見ると本当に螺鈿細工のように見える
のがすごいです
後ろの裾模様には、宝尽くし柄の桧扇・鈴・琴・絵巻物などが描かれています。
絵巻物に描かれているのは子柴垣に菊。
この後ろ裾の部分に描かれた琴にも、たっぷりと金駒刺繍を施して頂きました。
すぐ脇には琴爪も描かれています。こうして上前の琵琶と後ろ裾部分の琴という
古楽器を代表する二つの大きな楽器を金駒刺繍で強調することで、全体がグッと
引き締まった印象になりました
こちらは前の左肩~左袖にかけてです。上半身に入れる楽器をどうするか迷った
結果、笙の笛を描いて頂きました。当初の図案では私が三味線を習っているので
三味線を描いて頂いたのですが、やはり今回は古楽器だけでまとめたいと思い、
こちらに変更をしています
こちらは後ろ側の右肩~右袖にかけてです。古楽器は竜笛だけにしてもらって、
絵巻物でボリュームを出しました。笛袋も描かれています
全体の背景に描かれているヱ霞は全てを金彩加工で埋め尽くしてあるのですが、
金彩で「色紙散らし」のような柄が表現されています。公庄工房様で作って頂く
着物はいつも凝った金彩加工が施されているので、毎回どんな金彩になってくる
のかが楽しみなのです
こちらは生地のアップです。少しわかりづらいのですが、程よく艶のある生地に
あまり凹凸をはっきりつけずに表現された柄が織り出されています。
こちらの生地は白生地の名門「伊と幸」さんの四丈ものを使っています。京都の
伊と幸さん本社まで、公庄工房様にお連れ頂いて生地を選びに行きました。
最高峰の生地はやはり手触りが良く、手に持ってみれば他の着物とは全く違う、
どっしりとした重さがあります
友禅や金彩だけでなく、生地からこだわる公庄様ならではの着物作りによって、
とても素晴らしい着物が出来上がりました
地色は私が選んだのですが、柄の配色については全て公庄工房様にお任せをして
ありました。やはり今回もお任せして大正解でした。一流の職人さんならではの
磨き抜かれたセンスで、私好みの華やかな訪問着になっています
これでようやく仕立てまでが終わりましたので、これまでの製作の工程の記事を
まとめてみました。これから着物の別誂えをお考えになられている方のご参考に
なりましたら幸いです
◆図案編
◆最終図案編
◆地色見本編
◆生地選び編
◆下絵編
◆糊伏せ編
◆地色染め編
◆友禅編
◆金彩・刺繍編
一昨年から私が訪問着の別誂えをお願いしているのは、こちらの工房です。
「公庄工房(ぐじょうこうぼう)」さん
http://www.yuuzen.jp/
今までの職人悉皆仲間問屋前売り問屋小売店顧客という、驚くほどに
多くの中間業者を通して行われてきた古い慣習的な流通を見直して、職人顧客
というダイレクトな流通にする事により中間マージンを抑え、着物をより身近な
ものにするとともに職人さんの生活も支えていくという、まったく新しい手法を
取り入れられた工房です
過去数十年間、欧米文化や洋服が入ってきたという背景はあったものの、着物の
値段が上がったことも一因となって、民族衣装にも関わらず、自分で着物を着る
ことが出来る人がほんの一握りとなるほどの着物離れが起き、それにより仕事を
失った職人さん達は、次々と廃業に追い込まれました
そんな中で問屋さんが打った手は安価な「プリント着物」の量産でした。最近の
安い着物の多くは、インクジェットプリントで作られているのです。
これによりなんとか残っていた職人さん達も更に仕事がなくなってしまい、この
ままでは後継者も育たず数十年後には数えるほどになるでしょう。そんな状況に
異を唱え、新しい風を吹き込もうと頑張っていらっしゃいます
私は百貨店での別誂えの経験もありますが、それと比較してもかなり質の高い、
そしてセンスも良い、素晴らしい着物を作っていただけます
気になる事にはとことん答えて下さいますし、密にコミュニケーションを取り、
アドバイスもして下さり、安心して製作をお任せする事ができる工房です。業界
でも質が高いとされる染匠の仕事を任されている職人さんでその腕は確かです
何でもそうですが、モノは業者を通せば通すほどにマージンで値段が上がって、
最終的に顧客に渡るときには数倍の値段になることもしばしばあります
流通を変える事で、顧客は質の良いものをコストを抑えて買うことができ、職人
さんは「プリント着物」に奪われてしまった仕事を取り戻すことができて、着物
業界は大切な伝統技術を継承し守っていくことができます。
一昨年秋に作った流水花筏文の単衣の訪問着も、去年秋に作った黄色の束ねのし
柄の訪問着もこちらでお願いしたもの。今回私が別誂えをお願いした訪問着も、
百貨店を通せば150万以上の値段になるものだとおっしゃっていました。
私のような庶民が、数百万単位の着物をちょくちょく作ることはできませんが
こちらの工房でお願いできるくらいの予算であれば毎年でも可能です。(そこは
夫の理解があるので、ありがたいと思っています。ありがとう)
きちんと予算に合わせてその範囲内で最大限の努力をしてくださいます。百貨店
では最初に伝えた予算から十万円以上あがることもしばしばですが、こちらでは
そんなことはありません。
それでも洋服と比べると、数十万という価格は大きく感じるかもしれませんが、
着物は洋服と違い数十年単位で着られますし、子供に譲ることも出来ます。私は
着物が大好きなので、「プリント着物」は苦手ですし(持っていますが)、私の
子供の世代まで、手描きの着物が残っていって欲しいと願っています
私は公庄工房さんの考えに全面的に共感し、その新しく素晴らしい活動を今後も
着物をお願いする事で、出来る限り応援していきたいと思っています。小紋以外
については、今後こちらに一任するつもりでいます。
店頭に置いてある在庫の中から選ぶことが普通になっている現代ですが、以前は
多くの着物が別誂えでした。好きな柄を好きな色で好きな生地に。そんな楽しい
着物が出来上がったら、本当に大切に出来るものです。
もし別誂えに興味はあるけれども躊躇している、という方がいらっしゃったら、
是非一度、お問い合わせだけでもしてみてください。
きっと誠実にお答え頂けますよ
終わって、出来上がった着物が手元に届きました
こちらは、製作を担当してくださった公庄工房様から送られてきた全体の画像
です。自宅には衣桁がないので、こうして広げた全体像を見られるのはとっても
嬉しいですね
(この画像が一番実物に近い地色です)
こちらが自宅に届いてから自分で撮影した写真です。全部は広げられないので
どうしても畳んで平置きした状態になってしまいますが...
実物はとても綺麗な若草色に華やかな友禅が施されて、これほどに綺麗で上品な
色使いの訪問着は、見たことがありません。これくらい豪華な訪問着を百貨店で
購入したらいったいいくらになるのか
上前は正倉院の「螺鈿紫檀五弦琵琶」をメインにし、竜笛・鼓・法螺貝・絵巻物
などの王朝風の古楽器や小物を配して、梅・松・楓・桜が流水に向かって伸びて
いく様子を描いています。
背景には金彩が施されたヱ霞を全体に配置してもらいました。絵巻物に描かれて
いるのは寝殿造りの簾子にお庭の遣り水と菊で、王朝風に
琵琶は全体をたっぷりした金駒刺繍で囲んであり、螺鈿細工部分の色を表現して
いるのは、淡いピンクと水色。少し離れて見ると本当に螺鈿細工のように見える
のがすごいです
後ろの裾模様には、宝尽くし柄の桧扇・鈴・琴・絵巻物などが描かれています。
絵巻物に描かれているのは子柴垣に菊。
この後ろ裾の部分に描かれた琴にも、たっぷりと金駒刺繍を施して頂きました。
すぐ脇には琴爪も描かれています。こうして上前の琵琶と後ろ裾部分の琴という
古楽器を代表する二つの大きな楽器を金駒刺繍で強調することで、全体がグッと
引き締まった印象になりました
こちらは前の左肩~左袖にかけてです。上半身に入れる楽器をどうするか迷った
結果、笙の笛を描いて頂きました。当初の図案では私が三味線を習っているので
三味線を描いて頂いたのですが、やはり今回は古楽器だけでまとめたいと思い、
こちらに変更をしています
こちらは後ろ側の右肩~右袖にかけてです。古楽器は竜笛だけにしてもらって、
絵巻物でボリュームを出しました。笛袋も描かれています
全体の背景に描かれているヱ霞は全てを金彩加工で埋め尽くしてあるのですが、
金彩で「色紙散らし」のような柄が表現されています。公庄工房様で作って頂く
着物はいつも凝った金彩加工が施されているので、毎回どんな金彩になってくる
のかが楽しみなのです
こちらは生地のアップです。少しわかりづらいのですが、程よく艶のある生地に
あまり凹凸をはっきりつけずに表現された柄が織り出されています。
こちらの生地は白生地の名門「伊と幸」さんの四丈ものを使っています。京都の
伊と幸さん本社まで、公庄工房様にお連れ頂いて生地を選びに行きました。
最高峰の生地はやはり手触りが良く、手に持ってみれば他の着物とは全く違う、
どっしりとした重さがあります
友禅や金彩だけでなく、生地からこだわる公庄様ならではの着物作りによって、
とても素晴らしい着物が出来上がりました
地色は私が選んだのですが、柄の配色については全て公庄工房様にお任せをして
ありました。やはり今回もお任せして大正解でした。一流の職人さんならではの
磨き抜かれたセンスで、私好みの華やかな訪問着になっています
これでようやく仕立てまでが終わりましたので、これまでの製作の工程の記事を
まとめてみました。これから着物の別誂えをお考えになられている方のご参考に
なりましたら幸いです
◆図案編
◆最終図案編
◆地色見本編
◆生地選び編
◆下絵編
◆糊伏せ編
◆地色染め編
◆友禅編
◆金彩・刺繍編
一昨年から私が訪問着の別誂えをお願いしているのは、こちらの工房です。
「公庄工房(ぐじょうこうぼう)」さん
http://www.yuuzen.jp/
今までの職人悉皆仲間問屋前売り問屋小売店顧客という、驚くほどに
多くの中間業者を通して行われてきた古い慣習的な流通を見直して、職人顧客
というダイレクトな流通にする事により中間マージンを抑え、着物をより身近な
ものにするとともに職人さんの生活も支えていくという、まったく新しい手法を
取り入れられた工房です
過去数十年間、欧米文化や洋服が入ってきたという背景はあったものの、着物の
値段が上がったことも一因となって、民族衣装にも関わらず、自分で着物を着る
ことが出来る人がほんの一握りとなるほどの着物離れが起き、それにより仕事を
失った職人さん達は、次々と廃業に追い込まれました
そんな中で問屋さんが打った手は安価な「プリント着物」の量産でした。最近の
安い着物の多くは、インクジェットプリントで作られているのです。
これによりなんとか残っていた職人さん達も更に仕事がなくなってしまい、この
ままでは後継者も育たず数十年後には数えるほどになるでしょう。そんな状況に
異を唱え、新しい風を吹き込もうと頑張っていらっしゃいます
私は百貨店での別誂えの経験もありますが、それと比較してもかなり質の高い、
そしてセンスも良い、素晴らしい着物を作っていただけます
気になる事にはとことん答えて下さいますし、密にコミュニケーションを取り、
アドバイスもして下さり、安心して製作をお任せする事ができる工房です。業界
でも質が高いとされる染匠の仕事を任されている職人さんでその腕は確かです
何でもそうですが、モノは業者を通せば通すほどにマージンで値段が上がって、
最終的に顧客に渡るときには数倍の値段になることもしばしばあります
流通を変える事で、顧客は質の良いものをコストを抑えて買うことができ、職人
さんは「プリント着物」に奪われてしまった仕事を取り戻すことができて、着物
業界は大切な伝統技術を継承し守っていくことができます。
一昨年秋に作った流水花筏文の単衣の訪問着も、去年秋に作った黄色の束ねのし
柄の訪問着もこちらでお願いしたもの。今回私が別誂えをお願いした訪問着も、
百貨店を通せば150万以上の値段になるものだとおっしゃっていました。
私のような庶民が、数百万単位の着物をちょくちょく作ることはできませんが
こちらの工房でお願いできるくらいの予算であれば毎年でも可能です。(そこは
夫の理解があるので、ありがたいと思っています。ありがとう)
きちんと予算に合わせてその範囲内で最大限の努力をしてくださいます。百貨店
では最初に伝えた予算から十万円以上あがることもしばしばですが、こちらでは
そんなことはありません。
それでも洋服と比べると、数十万という価格は大きく感じるかもしれませんが、
着物は洋服と違い数十年単位で着られますし、子供に譲ることも出来ます。私は
着物が大好きなので、「プリント着物」は苦手ですし(持っていますが)、私の
子供の世代まで、手描きの着物が残っていって欲しいと願っています
私は公庄工房さんの考えに全面的に共感し、その新しく素晴らしい活動を今後も
着物をお願いする事で、出来る限り応援していきたいと思っています。小紋以外
については、今後こちらに一任するつもりでいます。
店頭に置いてある在庫の中から選ぶことが普通になっている現代ですが、以前は
多くの着物が別誂えでした。好きな柄を好きな色で好きな生地に。そんな楽しい
着物が出来上がったら、本当に大切に出来るものです。
もし別誂えに興味はあるけれども躊躇している、という方がいらっしゃったら、
是非一度、お問い合わせだけでもしてみてください。
きっと誠実にお答え頂けますよ