株に出会う

独自開発のテクニカル指標で株式市場の先行きを読む!

ソフトバンクの理念と今回の件

2006-03-18 16:21:11 | 株に出会う
ソフトバンクの経営理念は「デジタル情報革命を通じて、人々が知恵と知識を共有することを推進し、人類と社会に貢献すること」と、孫社長の挨拶に書かれております。孫社長は、理念と志が最も重要で、2番目に重要なのがビジョンと言っております。そして、3番目が戦略ということのようです。そのビジョンと戦略については、HPを探してみましたら、孫社長のストリーミングビデオがありましたので再確認しましたところ、ビジョンは、「あらゆるシーンがインターネットとつながるということ」、いわゆるユビキタス社会を実現することのようです。そして、戦略は、別の情報では、①デジタル情報サービスで世界ナンバーワンになる。②サイバースペースに集中する。③自己増殖型組織で昆虫のような群戦略。④企業価値を創造する経営。となっておりましたが、ストリーミングビデオでは、①ブロードバンドのリーディングカンパニーとして、新しいサービスを革新的なスピードで提供する。②インフラからコンテンツまでブロードバンドでつながったさまざまな会社が活躍する企業集団を作る。と表現しておりました。

これだけ企業活動におけるリーダーシップを明確にしている会社はやはり稀有であり、ここまでソフトバンクが進化してきた理由かと思います。

今回のボーダフォンの買収は、ビジョンを「革新的スピード」で実現するためにも必然であり、デジタル情報サービスで世界一になるには携帯抜きでは不可能です。

しかし、ちょっと筆者の理解が進まないのは、固定電話の日本テレコムの買収です。IPの高速バックボーンを世界で初めて構築したソフトバンクが、何故日本テレコムの旧式の音声ネットワークまでも取り込む必要があったのかということです。企業ユーザーへのデータセンターサービスの橋頭堡という意味合いがあったのかも知れません。しかし、こんな些細なことはどうでもいいことです。

実は、ストリーミングビデオを見て強く印象づけられたのは、彼は幕末の坂本龍馬の生き方が好きと、唯一顔をほころばせながら語っていた箇所です。つまり、志に絡んでの話ですが、お金やモノでは人生は満足できるものではない、自ら死んでも良いとの志を持って、それを実現することにこそ、人生において血湧き肉躍る高揚感が得られるものだ、との下りです。

これでは、NTTやauのサラリーマン経営者がかなう訳はありません。何か足を引っ張る出来事でもない限り勝負は見えております。2兆円に迫る借金など孫社長にとっては、下品な表現ですが、屁のカッパなのです。何せ彼は命をかけているのです。お金やモノは彼の命がけの理念を実現する手段です。そして、その理念の実現を通して世の人々に喜んでもらえることに最高の価値を置くことで、彼自身の内部だけではなく、社会との関係においても正当化されております。

しかし、問題はもっと深いところにまだあります。それ故筆者は、単純に彼の仕事を手放しで評価する訳にはいきません。それはデジタル情報革命が提供するインフラやコンテンツで、人々のライフスタイルが変わり、生活が楽しくなり異口同音に喜んでもらえると、彼は一途に思いこんでいるふしが見受けられることです。本当にその通りでしょうか? これ以上、場所を越え、時間を縮め、情報量を増やすことで、本当に人々にこれまでより喜びを与えることができるのか、ということです。それによって失うものの回復、また、富める国、富める人々と、そうでない国や人々とのさらなる格差の拡大により、場合によっては勃発する戦乱と人々の心の荒廃、等々は、もちろんビジネスを越えた事柄ですが、結果としてビジネスが支えることでもあります。こうしたブロードバンド社会が抱える副作用の影響に対してまで、そうまで命がけで手がけるなら、今後は是非、視点を拡げていって欲しいものです。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする