改めて、2月18日に日経平均がOSC値で25%という低い値をマークしてから、先週金曜日までの値動きの流れを見てみると、4月16日のOSC45%を底にして、その前のOSCのピーク値である4月14日の51%については、先週金曜日には+2%だけ抜いております。
従って、再々の上昇局面にはあるのですが、OSCをもう一度60%台に乗せるのか、それとも40%台へと沈むのかの岐路にあるように見えます。
前者の場合は巷間でも言われているとおりに、フィボナッチ比率の38.2%戻しの9518円、つまり9500円の節目の価格にまで届く可能性があります。
何故、ここまで世界の株価が戻したのかですが、これは2つの側面から眺めると分かりやすいようです。
1つは、いわゆるVIX指数、ボラティリティインデックスの動きです。今の水準は、昨年9月以降に例がないほど上昇してから、じわじわと下落をし、昨年初頭あるいは昨年3月頃の水準まで降りてきております。まだ「平時」でのピーク値あたりまでの下降度合いですが、この市場心理の変化がまず一番大きいと思います。
2つ目は、世界中の中央銀行が昨秋以降に行ってきた大量の資金供給の結果としての、マネーの行き先が、実物資産としての資源と株式へと流れ込んでいることです。
これは、この大量のマネーの供給の後のいわゆる出口戦略として、仮に近い将来に景気の底打ちがあったとしても、それらのマネーを首尾良く中央銀行へと環流させることが、かなり難しいのではないかとの認識が市場にあるために、その結果として生じるインフレあるいはそれ以上の物価上昇への対処を先手を取って行っておこうという動きが、今回の商品市場へのマネーの流入と、資源関連株式を狙い目とした株式市場へのマネーの流入を加速させたのではないかと言うことです。
こうして株式市場には先を見て資金が流入しますので、今期の日経平均のPERが200倍を越えていても、中間期や来期を睨んでの資金流入ですので、一向に問題視はされません。いわば、需給問題がすべてを乗り越えるのです。
19日追記:今回の戻しはPERを無視しているのではなく、PBRの異常な低下への揺り戻しの側面が大きいと思います。
ちょうど、昨年7月に原油が147ドルのピークを付けた時がありましたが、その時は原油とドルとの連関だけで動きましたが、今回は世界経済がここまで冷え込んでいる以上、資源の中核たる原油は、もうしばらく低位な価格レベルに押さえ込んでおき、景気回復を下支えさせたいとの思惑があるのではないでしょうか。それに、ロシアやベネズエラの特に政治面における台頭を押さえ込む狙いもあると思います。
ゴールドは少なくとも、物価水準がここまでデフレ傾向にある以上、次の段階の金融危機でも明らかにならない限り、まだインフレ先行期待で上げる訳にはいきません。また、中央銀行がここまで貨幣を大量供給しているのとパラレルに、ゴールド価格が鰻登りになることは、貨幣の信認(ひいては、国家への信認)を世界の人々に失わせないためにも避けねばならないようですね。
こうした流れは、今になってこそはっきりと誰の目にも認識されるようになってきましたが、特にヘッジファンドなど、世界の株式市場で空売りを仕掛けて来たグループが、その株式市場の意外な展開にやむを得ず買い戻し&再度の空売りの繰り返しを余儀なくされている形跡もありそうです。
そうなると、来週の各国での企業決算の結果は、どちらに転んでも株式市場は折り込み済みとなり、そうそう相場の波乱要因とはならないのではないかと思います。この中期的な流れを変えるには相当のインパクトが決算そのものに要請されますが、一旦、半分まで落ち込んだ企業業績が、更に半分に落ち込むような状況までには至っておりません。
1つだけあるとすれば、例のGM・クライスラー問題です。調整型破綻で果たしてうまく軟着陸出来るのかどうかですね。
昨年のリーマン・ブラザーズ破綻が、その当時の世界の金融のハブとしてのリーマンの実態と重要性を認識しきれていなかった元ポールソン財務長官による決断が、今回の危機の発端となったように、今度はGM破綻という出来事は、経済合理的には破綻処理が有効だと市場が認識していたとしても、リーマン破綻の時と同じような隘路が実は隠れているのではないかのではと思うのです。
いわば、リーマン・ブラザーズが世界の金融システムへの地雷源だったように、GMは世界の経済・政治システムへの地雷原であるかもしれません。それは、巷間いわれているような部品メーカーの連鎖破綻やGMのCDSにかかわる問題などではなく、もっと精神的・抽象的な意味合いとしてのGM破綻の影響があるのではないかと言うことです。
ここで政治システムと書いたのは、GMの医療費債務のことや、UAWとの労働コストをめぐる問題が、国家に代わって企業が担ってきた社会福祉政策に直結する問題だからです。
しかし、株式市場がもう一段の高値に上り詰めるためには、実体経済のもう少し力強い回復の証拠が必要ですが、これは今年後半にでもまずは住宅問題が終息することがはっきりと見えない限り難しそうです。
結果的には、昨年の秋からの急激な株式市場の変調が、今年の前半から後半にかけて起こるとは考えにくく、今般、G20各国が打った経済刺激策の帰趨が見えるまでは、何とか今の現状を中心にしての、一進一退の市場の動きが継続するように思います。
あと半年経って、住宅問題と今般の経済政策の成果が、どう今回の危機を修復しきれたのかの見極めを待って、次のマクロな変動の方向が見えるのではないかと見ております。
最後に、こうした危機の拡大の恐れに関しては、IMFが「大恐慌」との類似点を警告しているようです。
このIMFが指摘している問題はある程度正鵠を射たものです。IMFも最後に述べているように、今回の世界同時不況は「歴史的にも稀な」事態です。
もうそろそろ、日本のマスコミも「百年に一度の危機」という言葉は撤回して欲しいものです。百年に1度かどうかの根拠は何らありません。
従って、再々の上昇局面にはあるのですが、OSCをもう一度60%台に乗せるのか、それとも40%台へと沈むのかの岐路にあるように見えます。
前者の場合は巷間でも言われているとおりに、フィボナッチ比率の38.2%戻しの9518円、つまり9500円の節目の価格にまで届く可能性があります。
何故、ここまで世界の株価が戻したのかですが、これは2つの側面から眺めると分かりやすいようです。
1つは、いわゆるVIX指数、ボラティリティインデックスの動きです。今の水準は、昨年9月以降に例がないほど上昇してから、じわじわと下落をし、昨年初頭あるいは昨年3月頃の水準まで降りてきております。まだ「平時」でのピーク値あたりまでの下降度合いですが、この市場心理の変化がまず一番大きいと思います。
2つ目は、世界中の中央銀行が昨秋以降に行ってきた大量の資金供給の結果としての、マネーの行き先が、実物資産としての資源と株式へと流れ込んでいることです。
これは、この大量のマネーの供給の後のいわゆる出口戦略として、仮に近い将来に景気の底打ちがあったとしても、それらのマネーを首尾良く中央銀行へと環流させることが、かなり難しいのではないかとの認識が市場にあるために、その結果として生じるインフレあるいはそれ以上の物価上昇への対処を先手を取って行っておこうという動きが、今回の商品市場へのマネーの流入と、資源関連株式を狙い目とした株式市場へのマネーの流入を加速させたのではないかと言うことです。
こうして株式市場には先を見て資金が流入しますので、今期の日経平均のPERが200倍を越えていても、中間期や来期を睨んでの資金流入ですので、一向に問題視はされません。いわば、需給問題がすべてを乗り越えるのです。
19日追記:今回の戻しはPERを無視しているのではなく、PBRの異常な低下への揺り戻しの側面が大きいと思います。
ちょうど、昨年7月に原油が147ドルのピークを付けた時がありましたが、その時は原油とドルとの連関だけで動きましたが、今回は世界経済がここまで冷え込んでいる以上、資源の中核たる原油は、もうしばらく低位な価格レベルに押さえ込んでおき、景気回復を下支えさせたいとの思惑があるのではないでしょうか。それに、ロシアやベネズエラの特に政治面における台頭を押さえ込む狙いもあると思います。
ゴールドは少なくとも、物価水準がここまでデフレ傾向にある以上、次の段階の金融危機でも明らかにならない限り、まだインフレ先行期待で上げる訳にはいきません。また、中央銀行がここまで貨幣を大量供給しているのとパラレルに、ゴールド価格が鰻登りになることは、貨幣の信認(ひいては、国家への信認)を世界の人々に失わせないためにも避けねばならないようですね。
こうした流れは、今になってこそはっきりと誰の目にも認識されるようになってきましたが、特にヘッジファンドなど、世界の株式市場で空売りを仕掛けて来たグループが、その株式市場の意外な展開にやむを得ず買い戻し&再度の空売りの繰り返しを余儀なくされている形跡もありそうです。
そうなると、来週の各国での企業決算の結果は、どちらに転んでも株式市場は折り込み済みとなり、そうそう相場の波乱要因とはならないのではないかと思います。この中期的な流れを変えるには相当のインパクトが決算そのものに要請されますが、一旦、半分まで落ち込んだ企業業績が、更に半分に落ち込むような状況までには至っておりません。
1つだけあるとすれば、例のGM・クライスラー問題です。調整型破綻で果たしてうまく軟着陸出来るのかどうかですね。
昨年のリーマン・ブラザーズ破綻が、その当時の世界の金融のハブとしてのリーマンの実態と重要性を認識しきれていなかった元ポールソン財務長官による決断が、今回の危機の発端となったように、今度はGM破綻という出来事は、経済合理的には破綻処理が有効だと市場が認識していたとしても、リーマン破綻の時と同じような隘路が実は隠れているのではないかのではと思うのです。
いわば、リーマン・ブラザーズが世界の金融システムへの地雷源だったように、GMは世界の経済・政治システムへの地雷原であるかもしれません。それは、巷間いわれているような部品メーカーの連鎖破綻やGMのCDSにかかわる問題などではなく、もっと精神的・抽象的な意味合いとしてのGM破綻の影響があるのではないかと言うことです。
ここで政治システムと書いたのは、GMの医療費債務のことや、UAWとの労働コストをめぐる問題が、国家に代わって企業が担ってきた社会福祉政策に直結する問題だからです。
しかし、株式市場がもう一段の高値に上り詰めるためには、実体経済のもう少し力強い回復の証拠が必要ですが、これは今年後半にでもまずは住宅問題が終息することがはっきりと見えない限り難しそうです。
結果的には、昨年の秋からの急激な株式市場の変調が、今年の前半から後半にかけて起こるとは考えにくく、今般、G20各国が打った経済刺激策の帰趨が見えるまでは、何とか今の現状を中心にしての、一進一退の市場の動きが継続するように思います。
あと半年経って、住宅問題と今般の経済政策の成果が、どう今回の危機を修復しきれたのかの見極めを待って、次のマクロな変動の方向が見えるのではないかと見ております。
最後に、こうした危機の拡大の恐れに関しては、IMFが「大恐慌」との類似点を警告しているようです。
このIMFが指摘している問題はある程度正鵠を射たものです。IMFも最後に述べているように、今回の世界同時不況は「歴史的にも稀な」事態です。
もうそろそろ、日本のマスコミも「百年に一度の危機」という言葉は撤回して欲しいものです。百年に1度かどうかの根拠は何らありません。