7.『何もそこまで』~ナンシー関。タレントのヘンを綴る。息抜き。
6.『イラク 爆撃と占領の日々』~豊田直巳=岩波フォトドキュメンタリー
クラスター爆弾と劣化ウラン爆弾による破壊に残されるものは、アメリカを初めとする占領国(日本を含む)へのぬぐいがたい怒りだ。
同時にアメリカは、第二のベトナム後遺症=兵士の劣化ウラン弾による病と、精神の病と、国論の分裂だろう。
【メモ】原子力発電の燃料を造る際に、反応を活性化するために濃縮したウラン235が必要でその残りを劣化ウランという。ウラン238などを含み、密度の高い金属。ウラン235より放射能が弱いとされ、アメリカでは合金として使われる。
5.『ちんちん千鳥のなく声は』山口仲美

犬は、英語圏ではバウバウ、日本ではワンワンと聞き表してきた。そこには、聞こえ方・表音のし方にいろんな物が関係しているんだろうなとは、予想させる。
「日本人は、鳥の声をどのようなことばでうつしてきたのか。それらの言葉の背後には、日本人のどんな物の見方や生活環境がうつし出されているのか。」と山口さんは語る。
ニワトリは、カケロ、コケコー、コッカッコー、コッケイコー、とカ行音でうつす一般的なニワトリの声の歴史があり、室町から江戸時代にかけて、トーテンコー、トッケイコーとタ行音でうつすニワトリの声もあったそうだ。
英語ではcock a doorle doo、フランス語ではcoquericodo、ドイツ語ではkikeriki、イタリア語ではchiccirichi、ロシア語ではkykapekyというそうだ。[ニワトリだけ外国語が紹介された]
なぜ、そのように聞こえ、表現したのか、聞こえ方が変わったのはなぜか、表現の仕方が変わったのはなぜか、について説得ある説明はないが、歴史的変化、言葉遊び(掛詞、隠し言葉=隠喩)、言葉のリズム遊び、などいろんな楽しい紹介がある。
『中国の蝉は何と鳴く』は、著者の中国への日本語学教師として赴任した時の中国人との交流記録でとても佳作であった。
11月19日のTV“世界一受けたい授業”で山口さんが出演したが、気付くのが遅く見逃した、残念。
4.『続 あらすじで読む 古典落語の名作』野口卓著・柳家小満ん監修:気分転換
3.『神も仏もありませぬ』 佐野洋子
著者は、『100万回生きた猫』を書いた絵本作家。65歳。
重いテーマが続いたので、気分転換にと「笑える」と紹介されていた本著を選んだ。
でも、笑いも随所にあるが、隠されたテーマは重く、しんどい。
佐野さんは、老年=死に近づいている日常の小さな出来事を、フワリと語る。
“穏やかな死”をいかに迎えられるのか、なんて考えるから。
女言葉を使わないのがとてもいい響きだ。
食った、うまい、糞する、など。
魅力的文章、女性だ。
2.『サラーム・パックス』~バグダッドからの日記
サラーム・パックス著[サラームは、ペルシャ語(確か)で平和、パックスも平和、パックス・ローマと同じ使い方]

バグダッド・バーニングと同じ、インターネットのブログ。
「同性愛者で大酒飲みで、中学の頃にオーウェルの“1984年”を読んだ」20歳代と思われる男性。
前半は、興味を引かない話題があったり、かなりの皮肉屋で言いたいことが分からないこともあったが、アメリカが戦争を始めそうだと言う頃から俄然緊迫する。
戦争が始まる直前、彼がしたことは、
・家のすべての窓にテープ
を貼ったこと、
・庭に掘った井戸に手動ポンプを付けたこと、
・小型発電機様に60リットルのガソリンを買いだめしたこと、
・石油コンロを二つ買ったこと、
・避難部屋をつくったこと、
・親類用に部屋を二つ用意したこと、 であった。
2003年3月11日、リバーベンドという名前が登場したときは、とても感動した。
「自らを“国際社会”と呼ぶ国々は、ずっと昔に自分の責任に気付くべきだった。自分たちが科してきた制裁措置の本当の意味を、なぜもっと考えてくれなかったのか。兵器や人権侵害の報告に、なぜもっと早く耳を傾けてくれなかったのか。“イラクの民主化を支援する”というのが、なぜ、“イラクを爆撃する”ことになるんだ。これまでずっと長い間、非民主主義的なこの国のことなど気にもかけなかったくせに、なぜ今になって爆撃するのだ? 頼みたいのは、戦争の後何が起こるか、しっかり監視してほしい」には、頭をが~んとたたかれた思いだ。
3月24日から5月1日までネットに接続できず、中断、5月7日にその間の日記が書き込みされる。
酒井啓子さんの【解説】とても素晴らしい。
「サラームは世界を把握しているのに、世界はサラーム=イラクを正確に把握していないことに、彼は怒っている」
「結局、彼が強調するのは『外の人たちはイラクのことはわからない』ということだ。外の世界から勝手にイラク人のことをあれこれ同情しないでくれ」
「自分が攻撃しようとしている相手が、同じ歌を聴き同じ映画を見て、インターネットして、同じジョークに笑いながら一緒に酒を飲めるような『隣のにいちゃん』みたいなヤツだと、気がつきさえすれば、そいつに刃を平気で向けることなんか、できるはずはないんだ」、はそうだよね。
ジョン・レノンの“想像力”の欠如なんだよな。
【メモ】イスラム圏では、赤十字社の「十字」という言葉を避けて、イスラムの象徴である「三日月」を使い、「赤新月社」と名前を変えている。
1.『バグダッド・バーニング』~イラク女性の占領下日記、

著者:リバーベンド
著者は、24歳のイラク女性である。
GOOGLEのブログ[2003.8.17~2004.5.22]を日本の女性たちが翻訳・出版した。すごい感動である。
30年以上も前、雑誌『世界』に“韓国からの通信”が連載されていた。[1973年5月号から88年3月号]
著者は、TK生。それ以外何の紹介もなかった。
72年10月に戒厳令が布かれて以来の緊迫する韓国の政情、民主化を求める知識人の動き、民衆の声、金大中氏拉致事件を含む激動が生々しく報告された。
韓国の軍政時代、韓国内の民主化運動の真実を伝えたのは、日本の雑誌「世界」に連載された秘密通信「韓国からの通信」だけだった。
他にあったかもしれないが、大衆的には「世界」だけだった。
「世界」は、マスコミといえるほど大衆的ではないかもしれないが。
軍政が血眼になって追い、民主化運動の人びとには希望の灯となった通信の筆者は、当時東京女子大学教授であった池明観さんであることが明らかにされたのは、つい最近のことである。
池明観さんは1924年北朝鮮生まれ。ソウル大学卒業。東京女子大学で教鞭を取りながら「韓国からの通信」を書き続けた。翰林大学校翰林科学院日本学研究所所長を務めた。
私はほとんどこの通信を読むためだけに『世界』を毎月買っていた。
一般的にはかなりの年輩の知識人だと言われた。
身分が明らかになれば、即刻逮捕され死刑にされたことは確実だった。
当時の韓国は凄まじい反共国家であり、韓国国内の民主運動等の情報はほとんど知らされることなく、この“韓国からの通信”は数少ない貴重な情報源であった。
徐勝兄弟の消息など息を殺して読んだものであった。
時代は大きく変わり、ブログで瞬時に世界中に情報が伝わる。
私達がどんなにアメリカ一辺倒の情報に影響=洗脳され、現地イラクの人々の生活を知らないか、ということをこの本でつくづく思い知らされた。
今日のイラクは、遅れた国で、女性は抑圧され、大学教育など受けることないとされてきた。バグダッド・バーニングの原文は英語であり、このように英語を書けるインテリ女性はイラクにはいない、だからこのブログはでっち上げだというメールが数多く届いたそうだ。
著者のリバーベントさんは大学卒業後、一般企業に勤めていたそうだ。
バグダッド・バーニングのブログはまだ続いている。
日本語訳は、http://www.geocities.jp/riverbendblog/
原文は、http://www.riverbendblog.blogspot.com/