スピルバーグ監督が自ら予告編に出演し、映画冒頭でも時代背景について述べていました。
南北戦争の戦闘シーンもあるのかと思ったのですがさわりだけでした。
しかし立錐の余地が全くないほどの屍の山のシーンはかえってリアリティゼロでした。
リンカーン大統領の生涯の伝記では無く、奴隷制度撤廃の憲法修正を巡る与野党の攻防・リンカーンの多数派工作劇です。
そのためには、買収や利益誘導や脅しも行われたようです。
リンカーンがいかに崇高で信念の人で、アメリカ中興の祖の英雄だったかを描くことが目的のような映画でした。
当時のアメリカ議員は仰々しいまさに誇大主義の塊で、その生意気さなどにうんざりしました。
奴隷制度を巡る南北の争いは、決してヒューマニズムや民主主義の問題が主では無く、経済体制を巡る争いが本質でした。
資本主義列強に入り始めたアメリカにとっては、奴隷制社会は自由な経済活動、人々の自由な移動を著しく阻害し、
その経済・社会体制はまさに封建的封鎖社会としか言わざるを得ない桎梏となっていました。
北部が人権や平等や民主主義に第一義的価値を置いていたのでは決してありません。
映画としては普通作品です。
現在のアメリカの政界は、共和党が保守で、当時は民主党が保守で今日と逆なのも面白いです。
今日、アメリカは、世界の警察官、民主主義の守り手などと豪語していますが、わずか150年前まで300~400万人の奴隷が
存在していたのです。
アメリカは、奴隷制度をなくしましたが、黒人とアメリカネイティブに犯した犯罪への謝罪と損害賠償はしていませんし、
彼らへの偏見と差別は今日もなお根強く残っています。
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【9月2日鑑賞】