

秀作です。主人公の二人の設定が10代なのですが、演じる役者は20代後半ですっかり大人なのが残念。
また、ストーリー展開が間延び・冗舌になってしまったのも失敗でした。もっとさらりとした方が私好
みです。
前作『ムーンライト』では、黒人差別批判の直球でしたが、今度は恋愛映画を装っていますがやはり
根は今日のアメリカの「人種差別」批判と思います。
無実の青年を救うために、ふたつの家族が力を合わせて巨大な権力や法律、偏見社会の壁に立ち向か
っていく姿が感動的です。何度も黒人たちが自分たちをニグロと自称していました。私はその意味
がよくわかりませんでした。ファニー(男)の家庭は、インテリで女性たちはちょっとすっ飛んだ高
慢さですが、父親はティッシュに暖かい言葉をかけ無実を証明しようと走り回ります。父親二人は、
お金を工面するため市場の商品の窃盗までしてしまうのですから。
他方ティッシュの家族は、そろって彼女を支えます。母親は、高卒ですが、大卒一家のファニー家の女
性たちよりはるかに知的で上品で、流石でした。助演女優賞を獲得したレジーナ・キングさんは、ハッ

とする美人で特に彼女の「愛を信じるならうろたえないで」は心に残ります。強い母の言葉に、ティッ
シュも強い母になって行きます。若い白人弁護士ヘイワードも差別せずに精一杯頑張ってくれます。
彼は、白人ですが新しい考えを持っていて、正義感もあり戦いますが、若いが故の経験不足から上手
くいかないのが悔しい部分。スペイン料理店の店主ペドロシートはスペイン系、行きつけの売店のお
ばちゃんはイタリア系、不動産仲介のレヴィはユダヤ人、手伝ってくれるバーテンダーのピエトロは
プエルトリコ人やメキシコ人など、移民やマイノリティたちはわずかな時間しか画面に登場しません
が、何とも魅力的な彼らは警察の横暴と戦い、彼ら黒人たちを応援します。
私は、映画ではファニー家の女性たちは否定的に描かれほとんど登場しません。私は原作を読んで

いませんが、原作ではファニー家の女性たちも後半では若い二人を支えて行くようですがどうなので
しょうか。この映画は表向きは「ラブロマンス」として描かれていますが、内実はアメリカのひどいレ
イシズム・マイノリティ差別に負けずに健気に生きる人々の賛歌と私は思います。日本の現状もひど
いので、外国のことは強く批判できませんがやはりアメリカの現状、その闇・病は恐ろしいほどです
が、同時にこうした映画が作られ、ヒットするのもアメリカなのですね。 【7月15日】
映画「Moonight」の私のブログはここです。