風そよぐ部屋

ウォーキングと映画の無味感想ノート

映画/Dallas Buyers Club,Philomena

2014年08月20日 | 映画


マシュー・マコノヒーが登場して驚きました。

ダラスのマコノヒー              マッドのマコノヒー 
"MUD"や"ペーパーボーイ"の彼は、筋骨たくましい青年でしたが、別人と見間違う程やせていました。
エイズ患者を演じるために20キロほど体重を落としたそうです。
共演者のレイヨン役のジャレッド・レトも18キロ減量して挑んだそうです。
さて、ロイは、ある日突然倒れ、「HIVに感染し余命30日」と告げられます。
この当時は、HIVイコールホモセクシュアルの病気と思われ、今以上の偏見と差別がありました。
一方、大病院と製薬会社とFDA(アメリカ食品医薬品局)は、新薬開発を急ぎましたが、その三者は癒着し金儲けの為に腐敗し、
彼らは“個人の健康のために薬を飲む権利を侵害”していました。
副作用が強く大きいAZTの臨床試験が行われていました。
それはウイルスも殺すが多くの患者も死んで行く薬でした。
他方、有効と思われる未承認の薬は使えず、また処方箋が無いと薬が使えないなどの事情があったそうです。
ロイは、猛勉強と知恵を駆使して、ペプチドTなどの未承認薬や処方箋無しで薬が使えるように悪戦苦闘します。
当然それはイリーガルにならざるを得ないのですが…。
彼はその後約2550日余を生きました。
この映画が成功したのは、シリアスな題材を生真面目に「清く正しい患者の涙ぐましい努力と戦い」の"感動物語"ではなく
コメディタッチに仕上げたことです。
いわば「麻薬と酒とセックスに溺れ、ゲイへの差別主義者」のチンピラ風男がまさにドンキホーテのように
巨大悪に挑むのですが、笑いの連続です。
でも、映画館では全く笑いが起きないのです。
本当に最近、映画は、「高尚な芸術」になってしまったのでしょうか。
マシュー・マコノヒーは、若き日のポール・ニューマンに似たハンサム俳優ですが、
話題作に次々出演し、魅力を振りまいています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

人生の終焉を迎え始めたフィロミナは、50年前に強制別離させられた息子のことが脳裏から離れません。
彼女の唯一の気がかりは彼が「私のことを思っていてくれたかしら」。
かつてイギリスが養護施設の子どもを海外に移民させていたことをテーマにした映画・「オレンジと太陽」がありました。
今回の映画も、同じようにイギリスを舞台に、しかも修道院で同じことが行われていました。
しかも今回は多額の金銭の授受があったことと修道院の中には「セックス=快楽で堕落」という強固な観念の持ち主が
いると言うことです。
神に仕える我が身こそ最高と自負する彼らは、事実の一切を闇に葬ることに何の後ろめたさを感じません。
すべての記録が焼けたと平気で嘘をつき、死んで行った子らの墓は放置し、荒れています。
この映画の良さ、成功は、「ダラス・バイヤーズ・クラブ」同様、シリアスな題材を深刻がらずに
ユーモアたっぷりに描いていることです。
映画のもう一人の主人公は、フィロミナとともに息子を探すBBCを首になったエリート、マーティンです。
フィロミナは「あなたはオックスブリッジ卒業なの」とマーティンに聞きます。
私には、それは皮肉に聞こえたのですが、彼女にとってはそんなことは些細なことでどうでも良いことなのでしょう。
映画の最後に、事実を隠してきたヒルデガード修道女に、マーティンは「私はあなたを赦さない」と言います。
他方、フィロミナは「私はあなたを赦します。赦しには苦しみが伴うものですが…」と言います。
フィロミナのこの精神の高みに、私もマーティンもそしておそらくヒルデガードも心が洗われるのです。
この映画の隠れたテーマは、フィロミナの言う「赦し」とE・S・エリオットの名言、
「我々のすべての探求は、最終的に初めにいた場所に戻り、その場所をはじめて認識することである。」
The end of all our exploring. Will be to arrive where we started. And know the place for the first time.
にあるのかも、と私は思いました。
そして、
マーティンは、神の存在を信じない「近代知」の固まりのような「エリート」です。
他方、セックス=堕落とするヒルデガードはすべてを神に捧げた「宗教者」です。
マーティンとヒルデガードの二人は、正反対のようですが実は根本の所では同じような精神の持ち主、
形而上学だけの世界で生きているように私には思われました。
マーティンは、フィロミナの「教養のなさ」をこれまで低く見て来たのですが、
映画の最後で、これまで下らないと馬鹿にしてきた三文小説の筋を彼女に聞きます。
日本の映画タイトル、"あなたを抱きしめる日まで"はとても頂けません。
私は、イギリスは好きではありませんが、イギリス英語の発音は耳に心地良いです。
number は米語ではナンバーですがイギリス英語ではナンバァの感じ。
さて、
イギリスが養護施設の子どもを海外に移民させていたことをテーマにした映画・「オレンジと太陽」の私のブログはここです。
【8月18日鑑賞】

映画/American Hustle、はじまりは5つ星ホテルから

2014年08月06日 | 映画


抱腹絶倒、文句なしに面白いです。
実話を元にして、とありますが全くのフィクションです。
原題の、Hustleには、日本語でよく使う「がんばる=ハッスル」の他に、"詐欺"とか"激しいダンス"などの意味があるようです。
この映画では、もちろん「サギ」です。
冒頭、主人公の天才詐欺師・アーヴィンが写ります。
ものすごい相撲腹、涙ぐましい努力で、はげ頭にカツラを付けます。
この時点で、この映画は「コメディだ」と言っているのです。
ストリーにリアリティはありません。
政治家、マフィアを一網打尽に捕まえたい野心に燃える(ハッスルする)FBI捜査官(ディマーソ)に、
アーヴィンは、脅され、司法取引とおとり捜査に従わざるを得ません。
市長は、町の活性化のためにカジノ建設を企んでいます。
FBI捜査官・ディマーソは、カタールの投資家・シークをでっち上げ、
マフィアの仲介で市長にカジノ建設のための偽りの融資を画策します。
カタールの投資家・シークは、メキシコ人のFBI職員なのですが彼はアラビア語は出来ません。
取引の現場で、マフィアの親分が突然アラビア語でシークに話しかけます。
シークはしばらく沈黙、万事休すと思われた時、なんと見事なアラビア語で応え、取引は成功します。
お金を渡す場面で、マフィアの親分が現れず、全権委任された代理人の弁護士が出てきて交渉します。
"チョット待てよ"、少しおかしいぞと思い始めます。
「見事大成功を収めたFBI捜査官」は、ハッスル(激しいダンス)します。
この後、どんでん返しがあるのですが、それは、見ていない人のために隠しましょう。
さて、映画はサスペンスチックに展開しますが、根本はコメディで、隠されたストリーには、「落ち着き」(愛情)と"髪の毛"があります。
アーヴィンの妻(ロザリン)は、アーヴィンと別れマフィアの若い一員との生活を選び、
他方、アーヴィンは、詐欺から足を洗い愛人(シドニー)と彼の息子とともにまっとうな生活に入ります。
もう一つは"髪の毛"です。

アーヴィンは禿げとカツラ、FBI捜査官はパンチパーマ、二人の女性の髪型もすごい上に、市長はプレスリーみたいなリーゼント、
シドニーとFBI捜査員の二人がカーラー姿で登場するおかしさです。
「禿げ・ヘアスタイル」への強いこだわりには制作者の深い哲学的意味があるのでしょうが私にはわかりませんでした。
この映画のオチは、FBIもマフィアも政治家も詐欺師以上の「嘘つき」、詐欺師が一番全うと言うことだと私は思います。
二人の女性はハッとする美しさとセクシーさですが、セックスシーンが皆無なのはとても良かったです。
この映画、シドニーとロザリンの二人の女性で持っています。
シドニーは、表向きはセクシーなのですが実はとてもクールで頭が良く、
他方、ロザリンもセクシーなのですが、結構常識人なのですが、突拍子もなく「ぶっ飛んで」いて、
こんな素敵な女性二人に惚れられる、アーヴィンなのです。
これほどの喜劇なのに、映画館の私の周りからはクスリとも、もれないのですから、不思議を通り越して、奇妙です。
「実話」というマジックにとりつかれ、シリアスな映画と勘違いしたのでしょうか。
大声で笑って、拍手喝采しながら見たいです。
---------------------------------------------

三つ星レストランを調査するミシュランはかなり有名だが、イレーネは、5つ星ホテルのサービスをチェックする覆面調査員。
私は、三つ星レストランも5つ星ホテルにも全く興味はありませんが…。

などをチェックするそうです。
私は、もう少し観光地が紹介されるのかと思ったのですが、期待外れでした。
ストーリーは単純です。
イレーネが年齢を感じ始め、自分の行き方に少し動揺・疑問を感じ始め、自分を見つめ直す、
と言うとってつけたようなテーマです。
実際は、庶民には無縁の高級ホテルの紹介みたいな映画です。
映画のタイトル・「はじまりは5つ星ホテルから」は、全く頂けません。
イレーネを演じるマリガリータ・ブイがしっとりきれいですので、「許す」って感じ。

ところで、イレーネの妹夫婦、最近は夜の営みが疎遠のよう、そんな二人のベッドでの会話が傑作でした。
庶民には、ドラマチックな人生が滅多にあるわけではないのですから、
「自分探し」などと屁理屈を言わないで、世界中を旅し、いろんな人々の生活ののぞき見を楽しみとしている、
なんて映画にすればもっと面白い映画になったのに、と私は思いました。
そうすると全く違う映画になってしまいますが。
予想外のホテルの手落ちとか、言語の行き違いや、世界各地の生活習慣の違いなどから来るおかしさとか、
覆面調査員が失敗した時のホテルの心憎い対応とかサービスとか、などの方が十分楽しめると思います。
もちろん、お仕着せがましい「感動秘話」みたいなエピソードは無しに…。
私の旅は、一つ星から三つ星のホテルですが、1週間も泊まって顔なじみとなると、楽しい一言二言が味わえます。
トルコでは四つ星ホテルなのにバスタブの栓がなくて困りましたが、つたない英語での交渉など楽しい思い出です。
【8月4日鑑賞】