サスペンス映画です。面白かったです。
ついこの前、マイアミ郊外の高校で銃乱射事件でたくさんの死傷者が出ました。
映画は、アメリカ上院での銃規制派と反対派のロビイストの話です。
アメリカには3万人のロビイストがいると言われています。
この映画は、銃規制が必要か不要か、どちらに正義があるかを巡る論争、理屈ではありません。
ロビイスト達にとってそれはどうでもいいことです。彼らは、自分たちの理念のためでは無く
クライアントの要望実現のために作を立て、実行するのです。
そのためには虚々実々の駆け引き、違法紙一重の行動を取ります。
「アメリカの恥部をえぐる、政治のひずみをただす」などという見解もあるようですが、そうではありません。
スローンは手段を選ばぬ、冷徹敏腕ロビイストです。
彼女は銃規制派から要請を受けます。
その時、「報酬のメモ」が渡されます。しかし、その内容は観客には明かされません。
サスペンスですから、驚きの四転六転、そしてどんでん返しが待っています。
まだ、見ていない人も多いと思うのでそのプロットと結末は?としておきます。
この映画の面白さはもちろんそのプロットにあるのですが、ちゃんと落ち着くところに
落ち着く穏やかさを用意していました。
彼女の信念は、クライアントの要望が良いとか、正しいとかではなく、不正や正しくないことでも
要望に応え、キャリアを積み、成功のステップを上ることです。
しかし、それは彼女の心底にある心や感情との折り合いは必ずしもつきません。
こうして彼女は、自らの健康と命を削っています。彼女の精神はほとんど病んでいます。
彼女は、報酬ゼロ円のこの仕事を引き受け、「肉を切らして骨を削る」で、5年の有事判決を受けます。
しかし、そのおかげで彼女は自らの健康を回復します。
うがった見方をすれば、彼女はこの結末を実は深淵に準備していたのです。
更にうがった見方をすれば、それも表向きの理由、実はこの事件で新たなキャリアを得、
自らをより高く売ることができるようにするためとも言えます。
この映画の最大の難点は、セリフが多く早すぎること、しかもプロットの展開が早すぎ、
考えていると展開に追い付けないことです。
それにしても、邦題の大仰なこと、私の解釈が正しいなら、「彼女はすべてを得た」です。
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マイケル・ムーアは、 1999年4月20日に発生したコロンバイン高校銃乱射事件を
扱ったドキュメンタリー映画 Bowling for Columbineを2002年発表しました。
以降、アメリカは少しは進歩したのでしょうか?
アメリカ社会は、民主主義の成熟した社会と言われますが、私は決してそうは思いません。
市民社会の発達が未成熟で、他民族・他人種や古い先人達の文化を尊重しない野蛮社会です。
かつても今もアメリカファーストの国で、恥じ知らずの国です。
アメリカが自分たちよりはるか昔に築いたメソポタミア文明・西アジア、アジア、
中南米に少しでも尊敬の念があればあれほどの破壊と略奪はあり得ません。
アメリカネイティブ、黒人に対して心からの感謝と謝罪があるでしょうか。
自分の命を守るために銃は不可欠、自国の利益のためには核と軍事力で他国を脅す、はとんでもないです。
スローン達はそんなアメリカでうごめいているのです。 【2月26日】