先ほどの大国寺から一気に山道を下り、枕崎の市街地に入る。そして、日本最南端の終着駅・枕崎に到着する。前回に続いての来訪だが、前回は列車乗り遅れのためタクシー移動、そして今回はレンタカー・・。列車から終着駅に降り立つ、という演出はならなかった。
ちょうどこの時間、列車の姿はない。もっともこの日(6月30日)は先日来の大雨で指宿枕崎線じたい運転を見合わせている。
しばらく、誰もいない終着駅の雰囲気を楽しもうかと思ったが、それより先に食事である。枕崎に来たからにはかつお料理をと思っていたが、いろいろ立ち寄っている間に時刻は14時すぎ、そろそろ昼の営業を終えている頃ではないだろうか。幸い、駅の目の前にある「一福」は14時30分ラストオーダーでまだ営業中だった。駅の見物は後にして、先に食事にしよう。
いただいたのはかつお定食(松)。メインはかつおのたたきで、その他、腹皮の天ぷら、温泉玉子と酒盗、内臓煮、かつお味噌がついてくる。かつおのたたき以外は、かつおの漁港以外だとなかなか食べる機会もないだろう。これらのおかず、せっかくならビールのお供にいただくのがよいが、指宿枕崎線で帰るならともかく、この先もレンタカー移動が続くので残念だが・・(無理にノンアルコールビールは注文しない)。
そして、これは枕崎ならではのものというのが、かつおのビンタ。ビンタとは鹿児島弁で頭を指し、これを味噌で煮込んだものをそのまま大皿に盛り付けたものだ。見た目、一瞬どきっとする。この料理、枕崎でさかんなかつお節づくりの際に不要となった頭の部位を無駄なくいただく郷土料理、家庭料理だが、現在は観光客にも人気のおもてなし料理となっている。
この食べ方に特に決めごとはないが、魚といえば目の周りの肉が美味いところである。それで目のところをぐりぐりやる。この感覚、私が先般受けた白内障手術の光景に似ているような気がする(嫌なものを思い出したものだが・・)。それはさておき、頭頂部などの身をほじるようにいただいた。
これでかつおのさまざまな料理をいただいたが、他にも枕崎ならではということで「ぶえん鰹」や、「枕崎鰹船人めし」なるものがあり、今思えばこちらも頼めばよかったところ(定食のごはんを追加料金で船人めしにすることもできた)。それはまた今度の楽しみとしよう。
向かいの観光案内所で、「日本最南端の始発・終着駅のある町 到着証明書」をいただく。枕崎といえばどうしても「終着駅」という見方になるが、「終着駅は始発駅」という言葉もある。
改めて駅に向かう。第36代木村庄之助の筆による駅看板、そして始発・終着駅を感じさせる数々のモニュメント。
ここまで来て、九州八十八ヶ所百八霊場めぐりと合わせた九州一周も本当の折り返しになった。ここからは少しずつ北上することになる。
ここからは薩摩半島の西側を通る。まず目指すのは古くからの港町・坊津である。
レンタカーを進める。市街地の向こうには薩摩酒造の「明治蔵」もある。うーん、時間の都合で枕崎は通過せざるを得ないが、今にして思えば、せっかくなら枕崎に1泊するつもりで、こうした市内のスポットや、かつお料理にしても一献やりながら味わうとか・・そうした楽しみもできたのではないかな。1泊2日は何とかなるが、2泊3日が難しい立ち位置にある。また、あくまで目的地は札所・・・。
このまま坊津に向かう前、ふと標識を見て向かったのが火之神公園。海岸にろうそくのように浮かぶ立神岩で知られる。この一帯は訪ねたことがなく、枕崎の景色ということで行ってみることにする。
こちらも先ほど訪ねた番所鼻と同じく、溶岩と灰が混じった溶結凝灰岩でできている。
また、法面整備のため車両乗り入れができず立ち寄らなかったが、この公園の一角には平和祈念展望台がある。ここでは、太平洋戦争の沖縄作戦に出撃したが、枕崎の沖合200kmのあたりで米軍の攻撃を受けて沈没した戦艦「大和」をはじめとした第二艦隊の戦没慰霊碑もあるという。
知覧、枕崎・・本土最南端は本土最前線として歴史の舞台になっている。そして坊津も・・・。