50を過ぎているというのにお恥ずかしながら、この二年、おっぱいと子宮のガン検診を受けていませんでした。
忙し過ぎるだの、仕事とのタイミングが合わないだの、あ、生理がきちゃっただのと、うだうだ言っているうちに早二年。
鍼師の旦那の所には、乳ガンや子宮ガンと闘いながら、鍼治療を受けに来る女性が通っていますが、その人数が年々増えてきているそうです。
なので、早期発見のためにも、とにかく検診を受けに行け~!とうるさいうるさい。ありがたいうるささなんですけど……。
で、やっと行ってきました。昨日、ペンシルバニアから戻ってすぐに。
病院は前と同じ、モントクレアの真ん中へんにある小さなクリニック。そこは全員女医さんで、土曜日も開いてるってんで人気のある病院です。
ところが、つい先日に、我々が買っている保険会社からカードが送られてきて、そこの主治医の欄にわたしの知らない医者の名前が載っていました。
あれ?変えたつもりはないのになあ……と思いながら、まあいいや、前のお医者は今後のわたしの悩みを相談するには若過ぎるし、ナオミという名前は覚えやすいし、保険会社に問い合わせの電話をかけるのもめんどっちぃし、ということで、そのままにしておくことにしました。
どんな先生かなあ……と、ちょっと楽しみにしながら病院の受付に行き、手続きをしてもらっている間に周りを見渡していると、
あ、あったあった、先生全員の写真!ふんふん、ナオミ、ナオミっと……あ、この人ね……げげっ!
もしかして彼女、あのナオミ?まさか……でも……似過ぎ……双子ってこともある……あ、おんなじ名前の双子なんかいるわきゃね~!
いい年してこんなこと言うのもなんなんですが……わたしにはとっても苦手なナオミさんというお方がいらっしゃいまして、
彼女と出会ったのは去年の夏の始め、コミュニティバンドの練習場なのでありました。
新メンバーではなく、もともとメンバーだったのだけど、仕事が忙しくて来られなくなっていた、という感じの人で、
でも、挨拶の時点で、あ、ちょっと苦手かも、と思ってしまったわたし……あかんあかん、決めつけてしまうのは良くないとちょっぴり反省しつつ練習に。
ぐわぁ~ん!
なんちゅう音!なんちゅう音程!なんちゅうセンス!あなたの吹いていらっしゃる楽器は本当にクラリネットですかぁ~?!
マジで横目で点検しちゃいましたよ、クラリネットかどうか。それほどの迫力と訳の分からん自信がこもった音だったのでした。
それで……その日の二時間はヘロヘロに疲れてしまって……こういう場合、絶対音階とか、美しいものを好む習性とかは持つべきではありません。本当に苦しい思いをいたしました。彼女はとっても楽しそうでしたけど……。
もう二度と彼女のすぐ横で吹くもんかっ!と、強く心に誓ったのも虚しく、なぜか彼女はわたしの横の席を好んで選ぶのでした……ひぇ~!
で、数ヶ月後、かなり限界に近づいていたわたしは、こうなりゃパートを変えるっきゃない!と悲壮な決心をしていたところ、ぷっつりと来なくなった彼女。
ありがとう!また仕事が忙しくなったのね。そのままずうっとお仕事頑張ってね。
看護士さんから問診を受けながら、あのぉ~、わたし、このまま帰っちゃってもいいっすか~などと聞いてみようかな~と思ったりしましたが、
今日は彼女はお医者さんです。まさかここでクラリネットを吹くわけないし、あの性格はまさに医者向きかもしれないしと、コクンと覚悟を決めました。
看護士さんが部屋から出てしばらくすると、ドアがカチャリと開いて、
「ハイ、ナオミです。どうなさいましたか?」と彼女が入ってきました。
小さな備え付けの机の上にパソコンを置いて、わたしの資料を読みながらチラチラとわたしの方を見る彼女。
「ええと、どこも悪くないんですけど、ただ乳ガンと子宮ガン検診を受けるための紹介状が必要なので来ました」
「ふんふん、帝王切開が二度、その他の大きな病気は無しっと……。大腸ガンの疑いが一回、ふんふん……」
そこでナオミ先生、眼鏡を外してじっくりわたしの顔を見て、「あれ?どこかでお会いしましたか?お子さんの診察とか?」
あかん……白状した方が良かろう。
「あはは、ナオミ、わたしよわたし、ほら、コミュニティバンドのクラリネット吹き。あなたの横で座ってた」
んでもって、あまりの苦しさに、あなたにあんまり愛想が良く無かった女だよ(←もちろんこの部分は心の中に仕舞っておきましたが……)。
「あ~!!そうそう、思い出したぁ~!!また忙しくなって行けなくなっちゃってるのよね~!!」(そのままずうっと忙しくしてていいのよ~)
「でも、あなた、どうして担当医を変えたの?」
「保険会社からの手紙にナオミの名前が書かれてあって、それで、会社に聞いたら、ラモス先生はもうここにいらっしゃらないって」
「え?彼女はまだここで働いてるわよ、火曜と木曜に」
「へ?知らなかった。でもいいです。彼女もとてもいいお医者さんだけど、わたしにはちょっと若過ぎるから」
「ふふん、そうね、わたしはあなたより年上だもんね」
「いや、あの、そ~ゆ~意味じゃなくて……」
眼鏡をずらし、診察台の上のわたしをジロリと見るナオミ。狼狽えるわたし。
「そりゃそうとまうみ、あなた、この体重変じゃない?前に計った時より○○パウンドも減ってるわよ。なにか体調とか崩してるんじゃない?」
「あ、ご心配なく。病気じゃなくてYMCAのイベントに参加して減らしただけなので」
「でも、どれくらいの期間で」
「3ヶ月」
「そんな短期間でこんな量減らしちゃったらだめじゃないの?」
「え?でも、別にどっこも悪くないし」
「そういう思い込みがね……ぶら~ぶら~ぶら~ぶら~(英語的あ~でもないこ~でもない表現です)」
ああナオミ、あなたはやっぱりあのナオミだったのね。クラリネット吹いても吹かなくても。
おっぱいと子宮のガン検診のための紹介状を手に、複雑ぅ~な気分で病院を後にしたのでした。
忙し過ぎるだの、仕事とのタイミングが合わないだの、あ、生理がきちゃっただのと、うだうだ言っているうちに早二年。
鍼師の旦那の所には、乳ガンや子宮ガンと闘いながら、鍼治療を受けに来る女性が通っていますが、その人数が年々増えてきているそうです。
なので、早期発見のためにも、とにかく検診を受けに行け~!とうるさいうるさい。ありがたいうるささなんですけど……。
で、やっと行ってきました。昨日、ペンシルバニアから戻ってすぐに。
病院は前と同じ、モントクレアの真ん中へんにある小さなクリニック。そこは全員女医さんで、土曜日も開いてるってんで人気のある病院です。
ところが、つい先日に、我々が買っている保険会社からカードが送られてきて、そこの主治医の欄にわたしの知らない医者の名前が載っていました。
あれ?変えたつもりはないのになあ……と思いながら、まあいいや、前のお医者は今後のわたしの悩みを相談するには若過ぎるし、ナオミという名前は覚えやすいし、保険会社に問い合わせの電話をかけるのもめんどっちぃし、ということで、そのままにしておくことにしました。
どんな先生かなあ……と、ちょっと楽しみにしながら病院の受付に行き、手続きをしてもらっている間に周りを見渡していると、
あ、あったあった、先生全員の写真!ふんふん、ナオミ、ナオミっと……あ、この人ね……げげっ!
もしかして彼女、あのナオミ?まさか……でも……似過ぎ……双子ってこともある……あ、おんなじ名前の双子なんかいるわきゃね~!
いい年してこんなこと言うのもなんなんですが……わたしにはとっても苦手なナオミさんというお方がいらっしゃいまして、
彼女と出会ったのは去年の夏の始め、コミュニティバンドの練習場なのでありました。
新メンバーではなく、もともとメンバーだったのだけど、仕事が忙しくて来られなくなっていた、という感じの人で、
でも、挨拶の時点で、あ、ちょっと苦手かも、と思ってしまったわたし……あかんあかん、決めつけてしまうのは良くないとちょっぴり反省しつつ練習に。
ぐわぁ~ん!
なんちゅう音!なんちゅう音程!なんちゅうセンス!あなたの吹いていらっしゃる楽器は本当にクラリネットですかぁ~?!
マジで横目で点検しちゃいましたよ、クラリネットかどうか。それほどの迫力と訳の分からん自信がこもった音だったのでした。
それで……その日の二時間はヘロヘロに疲れてしまって……こういう場合、絶対音階とか、美しいものを好む習性とかは持つべきではありません。本当に苦しい思いをいたしました。彼女はとっても楽しそうでしたけど……。
もう二度と彼女のすぐ横で吹くもんかっ!と、強く心に誓ったのも虚しく、なぜか彼女はわたしの横の席を好んで選ぶのでした……ひぇ~!
で、数ヶ月後、かなり限界に近づいていたわたしは、こうなりゃパートを変えるっきゃない!と悲壮な決心をしていたところ、ぷっつりと来なくなった彼女。
ありがとう!また仕事が忙しくなったのね。そのままずうっとお仕事頑張ってね。
看護士さんから問診を受けながら、あのぉ~、わたし、このまま帰っちゃってもいいっすか~などと聞いてみようかな~と思ったりしましたが、
今日は彼女はお医者さんです。まさかここでクラリネットを吹くわけないし、あの性格はまさに医者向きかもしれないしと、コクンと覚悟を決めました。
看護士さんが部屋から出てしばらくすると、ドアがカチャリと開いて、
「ハイ、ナオミです。どうなさいましたか?」と彼女が入ってきました。
小さな備え付けの机の上にパソコンを置いて、わたしの資料を読みながらチラチラとわたしの方を見る彼女。
「ええと、どこも悪くないんですけど、ただ乳ガンと子宮ガン検診を受けるための紹介状が必要なので来ました」
「ふんふん、帝王切開が二度、その他の大きな病気は無しっと……。大腸ガンの疑いが一回、ふんふん……」
そこでナオミ先生、眼鏡を外してじっくりわたしの顔を見て、「あれ?どこかでお会いしましたか?お子さんの診察とか?」
あかん……白状した方が良かろう。
「あはは、ナオミ、わたしよわたし、ほら、コミュニティバンドのクラリネット吹き。あなたの横で座ってた」
んでもって、あまりの苦しさに、あなたにあんまり愛想が良く無かった女だよ(←もちろんこの部分は心の中に仕舞っておきましたが……)。
「あ~!!そうそう、思い出したぁ~!!また忙しくなって行けなくなっちゃってるのよね~!!」(そのままずうっと忙しくしてていいのよ~)
「でも、あなた、どうして担当医を変えたの?」
「保険会社からの手紙にナオミの名前が書かれてあって、それで、会社に聞いたら、ラモス先生はもうここにいらっしゃらないって」
「え?彼女はまだここで働いてるわよ、火曜と木曜に」
「へ?知らなかった。でもいいです。彼女もとてもいいお医者さんだけど、わたしにはちょっと若過ぎるから」
「ふふん、そうね、わたしはあなたより年上だもんね」
「いや、あの、そ~ゆ~意味じゃなくて……」
眼鏡をずらし、診察台の上のわたしをジロリと見るナオミ。狼狽えるわたし。
「そりゃそうとまうみ、あなた、この体重変じゃない?前に計った時より○○パウンドも減ってるわよ。なにか体調とか崩してるんじゃない?」
「あ、ご心配なく。病気じゃなくてYMCAのイベントに参加して減らしただけなので」
「でも、どれくらいの期間で」
「3ヶ月」
「そんな短期間でこんな量減らしちゃったらだめじゃないの?」
「え?でも、別にどっこも悪くないし」
「そういう思い込みがね……ぶら~ぶら~ぶら~ぶら~(英語的あ~でもないこ~でもない表現です)」
ああナオミ、あなたはやっぱりあのナオミだったのね。クラリネット吹いても吹かなくても。
おっぱいと子宮のガン検診のための紹介状を手に、複雑ぅ~な気分で病院を後にしたのでした。