ふたりの大学の先生が、声明を出さはった。
ここは大事なポイントやなと思う部分を、勝手に太字で強調させてもろた。
ふたりとも、怒ったはるで~。そら怒らはるわな、むちゃくちゃしてんねんから。
だいたい、外交なんてまるっきりできひん連中やで。
そんなんが、自分のちっちゃい世界(日本)では虚勢張れても、ちょっと海渡ったらもう、まるで相手にしてもらえてへんのに、
なにが聖域やっちゅうねん?
交渉のコの字もできんくせして。
言いなりになることは大の得意やけど。
TPPの罠にかかってしもた国はみな、日本がのこのこ後からやってきたん見て、びっくりしとったわ。
しかも、原発の、どうしようもない、手の施しようもない、なにがどうなってんのかもさっぱりわかってない、重大事故が起こった後のことやったさかいに、余計に驚いてたわ。
アメリカの友だちらは、別に政治家でもなんでもないけど、
「もうまうみの国は、あんなどうしようもない、交渉のしようもないややっこしいもんに頭突っ込めるほど、津波やら事故やらのゴタゴタは解決してるん?」と、
誰でもが聞いてくる。
金のことさえ言うたら、なんなっと騙せると思てる政治家と、それにコロリと騙される国民。
それもこれもみんな、マスコミが悪いん?
ほんまにそうなん?
人のせいにしといたら楽やからとちゃうん?
言うとくけどな、医療保険がアメリカみたいなことになったら、ほんまに泣くで。
どんだけめんどくそうて、高うて、クソなシステムか、これだけはここで生きてみなわからんやろな。
失うて初めてわかるありがたさ、なんかにならんよう、
知ってるわたしらがひとりひとりが、ジャーナリストになって、ひとりひとりに伝えてって、TPP交渉不参加の世論を作る!
日本に住んでる人らの生活、生命、健康を守るために、闘おう!
↓以下、転載はじめ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆◇安倍首相のTPP交渉参加表明に対する岩手農民大学学長声明◆◇
~横山英信 岩手大学人文社会科学部教授(農業経済論担当)
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※本ご寄稿は、3月15日の、安倍総理によるTPP参加表明を受けて発出された、声明を転載したものです。
本日、安倍首相は、日本のTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加を表明しました。
多くの団体が、TPP交渉参加反対の声を挙げ、各地の多くの地方議会が、政府に対して、交渉参加反対、ないし慎重審議を要請するなど、
国民の中で、TPPへの懸念が高まる中、これらの声を黙殺して、交渉参加表明を強行したことを、許すことはできません。
また、今回の表明は、先の総選挙において、自民党が、
「国益を損ない、農林漁業を崩壊に導いてまでも、TPP交渉に参加する必要は絶対にありません」と、
大々的に宣伝した公約スローガンを、真っ向から踏みにじるものであり、
議会制民主主義を根底から破壊する行為として、糾弾されなければなりません。
TPPは、単なる自由貿易協定ではなく、企業の利潤追求に障害となる、各国の制度を改廃し、
経済に関わるあらゆる分野を、市場原理に委ねるという、「例外なき市場開放」がその本質です。
実際、日本のTPP参加をめぐって、政府に強い圧力をかけているのは、アメリカ政府と日本の財界です。
日本が、TPPに加盟することにでもなれば、関税の撤廃のみならず、
食品の安全を確保するための諸措置、民の生命・健康を守るための公的医療保険制度、労働者の解雇規制措置、
地域経済を守るための地場産業への支援措置などが、
「非関税障壁」として、改廃を迫られることになるでしょう。
これを拒めば、「ISD条項」(企業による対政府訴訟条項)によって、政府や地方自治体が、多額の損害賠償を請求され、
結果的に、「非関税障壁」撤廃に追い込まれることになってしまいます。
また、TPPは、海外直接投資に係る規制も緩和するため、日本企業は、従来以上に、TPP加盟の途上国に、工場を移転しやすくなりますが、これは、日本国内の雇用縮小に繋がります。
TPPで恩恵を受けるのは、ほんの一握りの大企業・富裕層に過ぎず、多くの国民は、TPPで、生活を脅かされることになります。
だからこそ、農林漁業団体のみならず、医療関係団体、生活協同組合、地方建設業界、労働団体、地方財界、そして地方議会など、
幅広い分野での、反対の声が挙がっているのです。
安倍首相の交渉参加表明に合わせて、政府は、日本がTPPに参加する場合の、国内への経済効果の試算を発表しました。
そこでは、GDPが、3.2兆円拡大する一方で、
試算対象の農林水産物の生産額は、現在の7.1兆円から4.1兆円まで、3兆円も減るとされています。
この試算を前提にしても、規制緩和・市場原理を徹底するTPPの下では、GDPの3.2兆円拡大分の恩恵のほとんどは、一握りの大企業・富裕層に流れてしまうでしょう。
しかし、農林水産業の3兆円もの落ち込みは、農林漁業者と地域経済を、直撃することになるのです。
岩手県では、沿岸部を中心に、東日本大震災からの復旧・復興に、必死に取り組んでいますが、
日本のTPP参加は、被災地の地域経済に、決定的な打撃を与え、今までの努力を、水泡に帰させることになります。
被災県に住む者として、これを、絶対に認めるわけにはいきません。
安倍首相は、先の2月22日の、日米首脳会談後の日米共同声明によって、
「TPPでは、『聖域なき関税撤廃が前提ではない』ことが明確になった」と吹聴し、これを、今回のTPP交渉参加表明決断の、最大理由としています。
しかし、共同声明の当該箇所が意味するのは、
「交渉に入る段階では、農産物の関税撤廃が前提とされない」、ということに過ぎません。
共同声明は一方で、
「全ての物品が、交渉の対象にされること」
「2011年11月12日に、TPP首脳によって表明された、『TPPの輪郭(アウトライン)』において示された、包括的で高い水準の協定を達成すること」として、
「例外なき市場開放」というTPPの原則を、確認しています。
「聖域」=「関税撤廃の例外となる農産物」が確保される保証は、どこにもありません。
そもそもTPPでは、関税撤廃の例外品目を、輸入品の1%確保することさえ、容易ではありません。
これは、米1品目だけでも、例外にできるかどうか、という水準です。
今回の、安倍首相の交渉参加表明に当たって、自民党では、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの重要5品目等を、「聖域」として、
政府に対して、TPP交渉で、その確保を求めていくとしていますが、
それが、TPPの実態を踏まえない、農林水産業者・国民向けの、弁明に過ぎない空論であることは明らかです。
加えて、TPPが、経済のあらゆる分野に関係することを受けて、先の総選挙で自民党は、TPPに関して、
「政府が、『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対する」という項目以外に、
「自由貿易の理念に反する、自動車等の工業製品の、数値目標は受け入れない」
「国民皆保険制度を守る」
「食の安全安心の基準を守る」
「国の主権を損なうようなISD条項は合意しない」
「政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる」の5項目も、公約に掲げました。
しかし、これら5項目は、安倍首相の交渉参加表明でも、曖昧にされたままです。
さらに、3月7日・8日の、東京新聞(中日新聞)の報道で、
TPP交渉への後発参加国は、2010年までに交渉に参加した9カ国で、すでに合意した条文を、原則として
受け入れなければならず、
交渉を打ち切る終結権もなく、再協議も要求できない、という事実が明るみに出て、
「TPP交渉で、日本に有利なルールを作る」という、これまでの政府の主張が、大きく揺らぎました。
これは、衆議院予算委員会でも取り上げられ、野党議員が政府を追及しましたが、安倍首相は、明確な答弁を行
いませんでした。
このように、TPP問題を、農業問題に矮小化し、その農業問題を、空手形に終わる可能性が極めて高い「聖域」確保問題に矮小化し、
さらに、TPP交渉への後発参加国の不利な条件について、事実確認を曖昧にしたまま、安倍首相がTPP交渉
参加表明を行ったことは、
国民を二重・三重に愚弄したものであり、政府のあり方として許されません。
安倍首相の、TPP交渉参加表明への対応として、自民党が作成した、「TPP対策に対する決議」では、
政府に対して、
「仮に、交渉参加を決断する場合において」
「特に、自然的・地理的条件に制約される、重要5品目等や、これまで営々と築き上げてきた、国民皆保険制度の聖域(死活的利益)の確保を最優先し、
それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとする」とされています。
しかし,そもそも総選挙で、
「国益を損ない、農林漁業を崩壊に導いてまでも、TPP交渉に参加する必要は絶対にありません」という公約スローガンを掲げながら、
いとも簡単に、公約を反故にして、交渉参加を認めたような政党が、
「死活的利益」が確保されないと判断した際に、どのように、交渉脱退を政府に迫るというのでしょうか。
農業について言えば、米だけでも例外にすることが困難なTPP交渉で、農産物5品目を関税撤廃の例外にすることは、およそ不可能です。
それとも自民党は、TPP交渉で、5品目のうちどれか1品目でも、関税撤廃までの期間が若干でも延長
されたならば、
「例外を勝ち取った」として、「死活的利益を守った」と強弁するのでしょうか。
「だから、交渉から脱退する必要はない」と言うのでしょうか。
これ以上のごまかしは許されません。
日本のTPP交渉参加については、先発参加9ヶ国のうち、まだ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドが了承していません。
とくにアメリカは、日本の交渉参加を了承する前提として、この間、様々な要求を日本に突きつけており、日本政府は、それに応じてきています。
BSEの関連で、アメリカからの輸入牛肉にかけられてきた、「20ヶ齢以下」という月齢制限措置が、
本年2月から、「30ヶ月齢以下」に緩和されたのは、その一環です。
ここには、国民の安全よりも、企業の利益追求を上位におくTPPの本質が、はっきりと示されています。
安倍首相の交渉参加表明だけで、すぐに日本が、交渉に正式参加することにはなりません。
これから日本が、正式にTPP交渉に入るまでの間、アメリカを中心に、先発参加国から、次々と新たな要求が日本に突きつけられてくるでしょう。
しかし、それは、国民にTPPの本質を知らしめるものであり、TPP反対の国民運動を、さらに大きくしていくでしょう。
今、私たちには、国民の生活、健康・生命を守るため、早期に、政府に、TPP交渉参加を、断念・撤回させる闘いをしていくことが求められています。
岩手農民大学も、学習活動を通して、その一翼を担う決意です。
2013年3月15日
岩手農民大学学長 横山英信
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆◇TPPにもの申す◆◇
~渡部岳陽 秋田県立大学 生物資源科学部助教
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
TPPをめぐる議論において、
『農業が、日本経済発展の足を引っ張っている』、
『行き過ぎた農業保護のために日本社会全体が苦しんでいる』、
という、誤った主張が、大手マスコミを中心に、流布されてきた。
こうした主張が、秋田県、及び全国の農業者の誇りを奪い、悩み苦しませているのではないだろうか。
TPPは、例外品目なく、100%関税撤廃をめざし、参加国内で、ヒト、モノ、サービスなどの取引や移動を、自由にすることを目的としている。
アジア、ASEAN中心ではなく、米国中心の枠組みで、APECレベルでの、自由貿易圏へ発展させたい狙いがある。
これまでのFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)では、相手国を選び、品目毎に交渉できたが、
TPPでは、全ての関税障壁の撤廃が、交渉の前提となる。
『平成の開国』、『(参加しないと)世界の孤児になる』といったフレーズをよく耳にするが、
日本の非農産品関税率は2.5%と、極めて低い水準にある。
農産品に関しても、ごく一部の品目を除き、無関税、もしくは低関税である。
また、TPPは、環太平洋と名が付くが、中国、韓国は参加していない。
つまり日本は、『開国済み』であり、TPPに入らなくても、世界の孤児にはならない。
『国内GDP割合1.5%の、第1次産業を守るため、98.5%を犠牲にするな』という意見もあったが、
GDPで、たった1%の農業を、米国は手厚く保護しており、農業所得に対する政府支払い比率は、日本よりずっと高い。
日本の農業は、大して守られてないのである。
そもそも、農業が生み出すものは、農産物だけではなく、1.5%を強調するのはおかしい。
加工、流通などを含めた食品産業全体だと、GDPの10%近くにもなる。
TPP参加国に、日本を加えた経済規模を見ると、日米で、全GDPの81%を占める。
アジア市場への輸出は、ほとんど見込めず、実質は、『日米の自由貿易協定』である。
一方、米国は、高失業率を背景に、輸出を増やそうとしており、日本から米国へ輸出を伸ばすことも、困難である。
TPP参加によって、米国からの、安い農産物の輸入が増え、ますます、日本国内のデフレが進むことが見込まれる。
TPP参加により、農林水産物生産額が、3兆円減少すると国は試算しており、国内農業に、壊滅的影響を与えることは明らかである。
また、TPPでは、農業を含めた24の分野での、規制緩和が求められ、
農業以外にも、金融、労働、サービス、知的財産権など、様々な領域の『国内ルール』の撤廃が目指される。
米国主導の枠組みのもと、『アメリカンスタンダード』が押しつけられる公算が大きく、国民生活への影響が、深く懸念される。
現状では、TPP参加の具体的メリットは、なんら示されておらず、イメージだけが先行している。
たとえ、参加によって、一部の企業が儲かったとしても、大都市圏に富が集中する構造では、秋田をはじめとする地方圏に、その恩恵は届かない。
自民党は、TPP問題を煮詰めて、「TPP参加6条件」遵守を公約として、選挙を戦った。
この条件については、安倍首相も、日米首脳会談において、「守る」と明言している。
TPPの脅威を、正確に国民に知らせ、TPP交渉不参加の世論を盛り上げ、
その声をバックに、政府が「強気」で交渉に臨まざるをえない政治的環境をつくること
が、今、何より求められる。
ここは大事なポイントやなと思う部分を、勝手に太字で強調させてもろた。
ふたりとも、怒ったはるで~。そら怒らはるわな、むちゃくちゃしてんねんから。
だいたい、外交なんてまるっきりできひん連中やで。
そんなんが、自分のちっちゃい世界(日本)では虚勢張れても、ちょっと海渡ったらもう、まるで相手にしてもらえてへんのに、
なにが聖域やっちゅうねん?
交渉のコの字もできんくせして。
言いなりになることは大の得意やけど。
TPPの罠にかかってしもた国はみな、日本がのこのこ後からやってきたん見て、びっくりしとったわ。
しかも、原発の、どうしようもない、手の施しようもない、なにがどうなってんのかもさっぱりわかってない、重大事故が起こった後のことやったさかいに、余計に驚いてたわ。
アメリカの友だちらは、別に政治家でもなんでもないけど、
「もうまうみの国は、あんなどうしようもない、交渉のしようもないややっこしいもんに頭突っ込めるほど、津波やら事故やらのゴタゴタは解決してるん?」と、
誰でもが聞いてくる。
金のことさえ言うたら、なんなっと騙せると思てる政治家と、それにコロリと騙される国民。
それもこれもみんな、マスコミが悪いん?
ほんまにそうなん?
人のせいにしといたら楽やからとちゃうん?
言うとくけどな、医療保険がアメリカみたいなことになったら、ほんまに泣くで。
どんだけめんどくそうて、高うて、クソなシステムか、これだけはここで生きてみなわからんやろな。
失うて初めてわかるありがたさ、なんかにならんよう、
知ってるわたしらがひとりひとりが、ジャーナリストになって、ひとりひとりに伝えてって、TPP交渉不参加の世論を作る!
日本に住んでる人らの生活、生命、健康を守るために、闘おう!
↓以下、転載はじめ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆◇安倍首相のTPP交渉参加表明に対する岩手農民大学学長声明◆◇
~横山英信 岩手大学人文社会科学部教授(農業経済論担当)
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※本ご寄稿は、3月15日の、安倍総理によるTPP参加表明を受けて発出された、声明を転載したものです。
本日、安倍首相は、日本のTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加を表明しました。
多くの団体が、TPP交渉参加反対の声を挙げ、各地の多くの地方議会が、政府に対して、交渉参加反対、ないし慎重審議を要請するなど、
国民の中で、TPPへの懸念が高まる中、これらの声を黙殺して、交渉参加表明を強行したことを、許すことはできません。
また、今回の表明は、先の総選挙において、自民党が、
「国益を損ない、農林漁業を崩壊に導いてまでも、TPP交渉に参加する必要は絶対にありません」と、
大々的に宣伝した公約スローガンを、真っ向から踏みにじるものであり、
議会制民主主義を根底から破壊する行為として、糾弾されなければなりません。
TPPは、単なる自由貿易協定ではなく、企業の利潤追求に障害となる、各国の制度を改廃し、
経済に関わるあらゆる分野を、市場原理に委ねるという、「例外なき市場開放」がその本質です。
実際、日本のTPP参加をめぐって、政府に強い圧力をかけているのは、アメリカ政府と日本の財界です。
日本が、TPPに加盟することにでもなれば、関税の撤廃のみならず、
食品の安全を確保するための諸措置、民の生命・健康を守るための公的医療保険制度、労働者の解雇規制措置、
地域経済を守るための地場産業への支援措置などが、
「非関税障壁」として、改廃を迫られることになるでしょう。
これを拒めば、「ISD条項」(企業による対政府訴訟条項)によって、政府や地方自治体が、多額の損害賠償を請求され、
結果的に、「非関税障壁」撤廃に追い込まれることになってしまいます。
また、TPPは、海外直接投資に係る規制も緩和するため、日本企業は、従来以上に、TPP加盟の途上国に、工場を移転しやすくなりますが、これは、日本国内の雇用縮小に繋がります。
TPPで恩恵を受けるのは、ほんの一握りの大企業・富裕層に過ぎず、多くの国民は、TPPで、生活を脅かされることになります。
だからこそ、農林漁業団体のみならず、医療関係団体、生活協同組合、地方建設業界、労働団体、地方財界、そして地方議会など、
幅広い分野での、反対の声が挙がっているのです。
安倍首相の交渉参加表明に合わせて、政府は、日本がTPPに参加する場合の、国内への経済効果の試算を発表しました。
そこでは、GDPが、3.2兆円拡大する一方で、
試算対象の農林水産物の生産額は、現在の7.1兆円から4.1兆円まで、3兆円も減るとされています。
この試算を前提にしても、規制緩和・市場原理を徹底するTPPの下では、GDPの3.2兆円拡大分の恩恵のほとんどは、一握りの大企業・富裕層に流れてしまうでしょう。
しかし、農林水産業の3兆円もの落ち込みは、農林漁業者と地域経済を、直撃することになるのです。
岩手県では、沿岸部を中心に、東日本大震災からの復旧・復興に、必死に取り組んでいますが、
日本のTPP参加は、被災地の地域経済に、決定的な打撃を与え、今までの努力を、水泡に帰させることになります。
被災県に住む者として、これを、絶対に認めるわけにはいきません。
安倍首相は、先の2月22日の、日米首脳会談後の日米共同声明によって、
「TPPでは、『聖域なき関税撤廃が前提ではない』ことが明確になった」と吹聴し、これを、今回のTPP交渉参加表明決断の、最大理由としています。
しかし、共同声明の当該箇所が意味するのは、
「交渉に入る段階では、農産物の関税撤廃が前提とされない」、ということに過ぎません。
共同声明は一方で、
「全ての物品が、交渉の対象にされること」
「2011年11月12日に、TPP首脳によって表明された、『TPPの輪郭(アウトライン)』において示された、包括的で高い水準の協定を達成すること」として、
「例外なき市場開放」というTPPの原則を、確認しています。
「聖域」=「関税撤廃の例外となる農産物」が確保される保証は、どこにもありません。
そもそもTPPでは、関税撤廃の例外品目を、輸入品の1%確保することさえ、容易ではありません。
これは、米1品目だけでも、例外にできるかどうか、という水準です。
今回の、安倍首相の交渉参加表明に当たって、自民党では、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの重要5品目等を、「聖域」として、
政府に対して、TPP交渉で、その確保を求めていくとしていますが、
それが、TPPの実態を踏まえない、農林水産業者・国民向けの、弁明に過ぎない空論であることは明らかです。
加えて、TPPが、経済のあらゆる分野に関係することを受けて、先の総選挙で自民党は、TPPに関して、
「政府が、『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対する」という項目以外に、
「自由貿易の理念に反する、自動車等の工業製品の、数値目標は受け入れない」
「国民皆保険制度を守る」
「食の安全安心の基準を守る」
「国の主権を損なうようなISD条項は合意しない」
「政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる」の5項目も、公約に掲げました。
しかし、これら5項目は、安倍首相の交渉参加表明でも、曖昧にされたままです。
さらに、3月7日・8日の、東京新聞(中日新聞)の報道で、
TPP交渉への後発参加国は、2010年までに交渉に参加した9カ国で、すでに合意した条文を、原則として
受け入れなければならず、
交渉を打ち切る終結権もなく、再協議も要求できない、という事実が明るみに出て、
「TPP交渉で、日本に有利なルールを作る」という、これまでの政府の主張が、大きく揺らぎました。
これは、衆議院予算委員会でも取り上げられ、野党議員が政府を追及しましたが、安倍首相は、明確な答弁を行
いませんでした。
このように、TPP問題を、農業問題に矮小化し、その農業問題を、空手形に終わる可能性が極めて高い「聖域」確保問題に矮小化し、
さらに、TPP交渉への後発参加国の不利な条件について、事実確認を曖昧にしたまま、安倍首相がTPP交渉
参加表明を行ったことは、
国民を二重・三重に愚弄したものであり、政府のあり方として許されません。
安倍首相の、TPP交渉参加表明への対応として、自民党が作成した、「TPP対策に対する決議」では、
政府に対して、
「仮に、交渉参加を決断する場合において」
「特に、自然的・地理的条件に制約される、重要5品目等や、これまで営々と築き上げてきた、国民皆保険制度の聖域(死活的利益)の確保を最優先し、
それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとする」とされています。
しかし,そもそも総選挙で、
「国益を損ない、農林漁業を崩壊に導いてまでも、TPP交渉に参加する必要は絶対にありません」という公約スローガンを掲げながら、
いとも簡単に、公約を反故にして、交渉参加を認めたような政党が、
「死活的利益」が確保されないと判断した際に、どのように、交渉脱退を政府に迫るというのでしょうか。
農業について言えば、米だけでも例外にすることが困難なTPP交渉で、農産物5品目を関税撤廃の例外にすることは、およそ不可能です。
それとも自民党は、TPP交渉で、5品目のうちどれか1品目でも、関税撤廃までの期間が若干でも延長
されたならば、
「例外を勝ち取った」として、「死活的利益を守った」と強弁するのでしょうか。
「だから、交渉から脱退する必要はない」と言うのでしょうか。
これ以上のごまかしは許されません。
日本のTPP交渉参加については、先発参加9ヶ国のうち、まだ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドが了承していません。
とくにアメリカは、日本の交渉参加を了承する前提として、この間、様々な要求を日本に突きつけており、日本政府は、それに応じてきています。
BSEの関連で、アメリカからの輸入牛肉にかけられてきた、「20ヶ齢以下」という月齢制限措置が、
本年2月から、「30ヶ月齢以下」に緩和されたのは、その一環です。
ここには、国民の安全よりも、企業の利益追求を上位におくTPPの本質が、はっきりと示されています。
安倍首相の交渉参加表明だけで、すぐに日本が、交渉に正式参加することにはなりません。
これから日本が、正式にTPP交渉に入るまでの間、アメリカを中心に、先発参加国から、次々と新たな要求が日本に突きつけられてくるでしょう。
しかし、それは、国民にTPPの本質を知らしめるものであり、TPP反対の国民運動を、さらに大きくしていくでしょう。
今、私たちには、国民の生活、健康・生命を守るため、早期に、政府に、TPP交渉参加を、断念・撤回させる闘いをしていくことが求められています。
岩手農民大学も、学習活動を通して、その一翼を担う決意です。
2013年3月15日
岩手農民大学学長 横山英信
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆◇TPPにもの申す◆◇
~渡部岳陽 秋田県立大学 生物資源科学部助教
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
TPPをめぐる議論において、
『農業が、日本経済発展の足を引っ張っている』、
『行き過ぎた農業保護のために日本社会全体が苦しんでいる』、
という、誤った主張が、大手マスコミを中心に、流布されてきた。
こうした主張が、秋田県、及び全国の農業者の誇りを奪い、悩み苦しませているのではないだろうか。
TPPは、例外品目なく、100%関税撤廃をめざし、参加国内で、ヒト、モノ、サービスなどの取引や移動を、自由にすることを目的としている。
アジア、ASEAN中心ではなく、米国中心の枠組みで、APECレベルでの、自由貿易圏へ発展させたい狙いがある。
これまでのFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)では、相手国を選び、品目毎に交渉できたが、
TPPでは、全ての関税障壁の撤廃が、交渉の前提となる。
『平成の開国』、『(参加しないと)世界の孤児になる』といったフレーズをよく耳にするが、
日本の非農産品関税率は2.5%と、極めて低い水準にある。
農産品に関しても、ごく一部の品目を除き、無関税、もしくは低関税である。
また、TPPは、環太平洋と名が付くが、中国、韓国は参加していない。
つまり日本は、『開国済み』であり、TPPに入らなくても、世界の孤児にはならない。
『国内GDP割合1.5%の、第1次産業を守るため、98.5%を犠牲にするな』という意見もあったが、
GDPで、たった1%の農業を、米国は手厚く保護しており、農業所得に対する政府支払い比率は、日本よりずっと高い。
日本の農業は、大して守られてないのである。
そもそも、農業が生み出すものは、農産物だけではなく、1.5%を強調するのはおかしい。
加工、流通などを含めた食品産業全体だと、GDPの10%近くにもなる。
TPP参加国に、日本を加えた経済規模を見ると、日米で、全GDPの81%を占める。
アジア市場への輸出は、ほとんど見込めず、実質は、『日米の自由貿易協定』である。
一方、米国は、高失業率を背景に、輸出を増やそうとしており、日本から米国へ輸出を伸ばすことも、困難である。
TPP参加によって、米国からの、安い農産物の輸入が増え、ますます、日本国内のデフレが進むことが見込まれる。
TPP参加により、農林水産物生産額が、3兆円減少すると国は試算しており、国内農業に、壊滅的影響を与えることは明らかである。
また、TPPでは、農業を含めた24の分野での、規制緩和が求められ、
農業以外にも、金融、労働、サービス、知的財産権など、様々な領域の『国内ルール』の撤廃が目指される。
米国主導の枠組みのもと、『アメリカンスタンダード』が押しつけられる公算が大きく、国民生活への影響が、深く懸念される。
現状では、TPP参加の具体的メリットは、なんら示されておらず、イメージだけが先行している。
たとえ、参加によって、一部の企業が儲かったとしても、大都市圏に富が集中する構造では、秋田をはじめとする地方圏に、その恩恵は届かない。
自民党は、TPP問題を煮詰めて、「TPP参加6条件」遵守を公約として、選挙を戦った。
この条件については、安倍首相も、日米首脳会談において、「守る」と明言している。
TPPの脅威を、正確に国民に知らせ、TPP交渉不参加の世論を盛り上げ、
その声をバックに、政府が「強気」で交渉に臨まざるをえない政治的環境をつくること
が、今、何より求められる。