ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

「吉田さんは、どういう思いで、この日本の『あさましい』姿を見ていたのだろう」

2013年07月23日 | 日本とわたし
参院選の直前に、JCASTテレビウォッチに書かれた記事です。

「吉田さんたち、現場の人間が立っていたのは、自分だけの『死の淵』ではなく、日本という国の『死の淵』だったのである」

という言葉に、あらためて、当時その場に居合わせていた方々が、直面されていた事態の深刻さに、身の毛がよだつ思いがします。
チェルノブイリの10倍という意味を、わたしは最初、今の状況がすでにそうなのかと勘違いして驚きましたが、
あの現場で、判断を誤り、次々とすべての原子炉がやられてしまった場合、という意味でおっしゃったのでしょう。

それでも、次々と、4基の原発がやられてしまいました。
そして今、湯気という表現で報道されている、妙な現象が続いています。
地震もまた頻発に、起こり始めています。

本当に、全く何も、事故後の問題は解決していないのです。
なのに、原発をまだまだ稼働させようとしている電力会社と、原発を売り歩く現職の総理大臣。
 
『原発事故の現場で、何度も死ぬ寸前までいった吉田さんは、
どういう思いでこの、日本の『あさましい』姿を見ていたのであろう』

という文章を読んで、ハッと気がつきました。
これまで思い浮かばなかった、安倍氏や、安倍氏の言動をなぞる人間どもを見て感じる気持ち。
まさにそれは、『あさましい』という言葉だと。

今回の選挙は、その『あさましい』人間に票を入れた『あさましい』人たちと、原発事故など遠の昔に終ってしまってる人たちが多かったということでしょうか。
みなさんの周りでは、会話の中に、福島原発の事故現場のこと、作業をしてくださっている人たちのこと、高線量の汚染地に置き去りにされている子どもたちのこと、
いったいどれぐらいの回数、あがってきますか?


原発素通り参院選!
フクイチ吉田所長の言葉なんと聞く?
「隠すことはありません。チェルノブイリの10倍です」

2013/7/18

「福島第1には、6基の原子炉があります。
ひとつの原子炉が暴走を始めたら、もう、これを制御する人間が、近づくことはできません。
そのために、次々と原子炉がやられて、当然、(10キロ南にある)福島第2原発にもいられなくなります。
ここにも4基の原子炉がありますから、これもやられて、10基の原子炉が、すべて暴走を始めたでしょう」


『週刊現代』に載っている、東京電力の吉田昌郎元福島第一原発所長の言葉である。
享年58。
吉田元所長の早すぎる死は、深い悲しみとともに、あの頃の『悪夢』を、再び思い起こさせた。

吉田さんのインタビューをした、ジャーナリストの門田隆将氏によれば、
食道がんの手術をして、抗がん剤治療を終えた吉田さんに会ったのは、2012年の7月だったという。
184センチの長身で、やや猫背気味の吉田さんの容貌は、ニュース映像とはまったく違っていた。
だが、吉田さんは、人なつっこい笑顔で、「私は何も隠すことはありません」といい、
「チェルノブイリの10倍です」と続け、冒頭の言葉になる。

門田氏はこう書く。

「吉田さんたち、現場の人間が立っていたのは、自分だけの『死の淵』ではなく、日本という国の『死の淵』だったのである」

吉田さんは、全電源喪失の中で、暴走しようとする原子炉を冷却するには、海水を使うしかないと決断し、
すぐに、自衛隊に、消防車の出動を要請して、原子炉への水の注入ラインの構築に着手した。

<彼らは、放射能を遮断する全面マスクをつけて、原子炉建屋に何度も突入し、この作業を展開している>(門田氏)


奇蹟のように日本を救い、風のように去っていった男

吉田さんらしさが最も出たのは、官邸に詰めていた東電の武黒一郎フェローから、
官邸の意向として、海水注入の中止命令が来たとき、敢然と拒絶したことである。
しかし、東電本店からも、中止命令が来ることを予想した吉田さんは、あらかじめ、担当の班長にこういった。

「テレビ会議の中では、海水注入中止をいうが、その命令を聞く必要はない。そのまま注入を続けろ」と。

この機転によって、原子炉の、唯一の冷却手段だった、海水注入は続行され、
何とか、最悪の格納容器爆発という事態は、回避されたのである。

門田氏は、
<「奇蹟のように日本を救い、風のように去っていった男」吉田さんに、「お疲れさまでした。本当にありがとうございました」>と結んでいる。

電力各社は、赤字を理由に、原発再稼働を申請し、安倍首相は認める方針だ。
彼はまた、原発を世界に売り歩いている。
原発事故の現場で、何度も死ぬ寸前までいった吉田さんは、
どういう思いでこの、日本の『あさましい』姿を見ていたのであろう。


猛暑日が続く中、参議院選挙で、「脱原発」は争点にも上らない。
再び原発事故が起きなければ、福島を除く日本人の多くは、原発の恐ろしさに目覚めないのかもしれない。
だが、その日が来れば、この地に人が住めなくなるのは、間違いないのである。



追加で、昨日見つけた2枚の写真を載せておきます。
『白いのは、捨てられない防護服の山、青いのは除染した土の山。
貯まっていくのは、核のゴミだけじゃないんだぜ』
というコメントが記されていました。

 
コメント (8)
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「他国を愛さないでただ自国を愛する者は、他人を愛さずしてただ自己の一身を愛する者である」幸徳秋水

2013年07月23日 | 日本とわたし
舩橋淳監督のFacebookから。

非戦と原発反対の、根底にあるのは同じ。

一部の人間の意思決定により、したっぱにいる普通の市民の命を奪い、人生を狂わせる、
そんなことが許されてはならない、という思いだ。

国境という線引きで、利害を対立させ、双方が国益のためという建前で、
互いの国の人々を傷つけ合う、戦争。

市町村という線引きで、わが町を他の町よりも発展させるためという建前で、
後の世代に多大な迷惑(使用済み燃料)と借金、そして、万一事故が起こったとき、その町そのものを消し去る災禍をもたらす、原発。

国境に関係なく、県境に関係なく、基本的な人間存在を傷つけてはならない、
そんな暴挙をする権利は、何人たりとも持ち得ない。

したっぱにいるおっちゃん、おばちゃん、じいさん、ばあさん、子供たちが、どれだけ苦しい目に遭うのか。

戦争を、核を、誰かが誰かに強要することが、あってはならない。

この思いは、誰もが共有できると思うし、そんな純粋な道義心こそが、政治を動かす原動力であるべきだ。

以下の、幸徳秋水の、権力批判を読んで欲しい。
今の世に通ずる慧眼だと思う。


思うに、幼児が井戸に落ちようとするのをみたら、
誰でも走って、これを救うのに躊躇しないだろうことは、
中国の孟子が言ったとおりで、我々も同じである。
もし、愛国の心をして、本当に、この幼児を救うのと同質のシムパシー、
惻隠の念、慈善の心と同様に、ならせることができるなら、
愛国心は全く美しいもので、純粋で、一点の私心もないのである。

私は、いわゆる愛国心が、純粋な同情、惻隠の心でないことを悲しむ。
なんとなれば、愛国心が愛するところは、
自分の国土に限られているからである。
自己の国民に限られているからである。
他国を愛さないで、ただ自国を愛する者は、
他人を愛さずして、ただ自己の一身を愛する者である。
浮ついた名誉を愛するのである。
利益の独占を愛するのである。
公正と言えるであろうか。
私でない、と言えるであろうか。


幸徳秋水「帝国主義」より



https://www.facebook.com/atsushi.funahashi.58
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日本の中の狂気の沙汰を、非人道的な扱いを、もっと多くの人々が怒り闘うべき!

2013年07月23日 | 日本とわたし
前双葉町長、井戸川克隆氏が、先日の参議院選挙に立候補され、今やすっかり過去のものとされてしもた福島の現状を訴えながら、選挙運動を無事にやり終えはった。
わたしは実際にテレビやラジオを聞けへんし、新聞紙も手にとって読めへんのやけど、
今回の選挙中に、被災地のこと、事故原発のこと、汚染のことを訴えた方の数は、いったいどれほどやったんやろか?

いくら、自分の生活の中に、社会に、心配せなあかんことは山ほどあっても、
自分らが直面してるものすごい危機を、忘れたふりしてたら、そのしっぺ返しはいつか、自分の身にふりかかってくる。
ほんでそのことを学んだんは、今からまだ、ほんの2年とちょっと前やというのに……。

責任を問おうとせん報道屋と、責任を負おうとせん政治屋。
時間が経ったら、ま、えっかという気分になる。
それが奴らの一番の味方。

次の選挙まであと3年。
その間に、どんだけの原発が再稼働させられてしもて、どんだけの核のゴミが増えて、どんだけの作業員の人が酷い被曝を強制されるのか、
その間に、支援も救助もされんと、どんだけの子どもらが病んでしまうのか、
その間に、自民党という党が、どんだけやりたい放題をするのか、

けどもこの3年の間に、どうしてもせなあかんことのひとつに、
報道の仕方や投票の仕方や、それから候補になる時の制度が、選挙とは呼べん状態になってる名ばかりの選挙を、
少しでもまともな形に整えることが大事。
少なくとも、裁判所で違憲という判決が出てるんやから、それを合憲にせなあかん。

小さな声、小さな力は、踏みつぶされるか無視される。
大きな数が勝ち。多いもん勝ち。
そんなふうに教え込まれた間違うた民主主義に、わたしらは真っ向から立ち向かわなあかん。
けども、眉間にしわ寄せながらとちゃうで。
洋平くんが教えてくれた『祭り事』やねんから。
楽しんで、興奮して、その勢いで自分のことしっかり見つめて、
奴らのいっちゃん嫌いな、忘れへん、あきらめへん人間になろな!

この、井戸川さんみたいに、洋平くんみたいに。

↓以下は、今年の2月に、ジュネーブの市長から井戸川さん宛に送られてきた書簡の翻訳。
(文字の強調は、わたしがしました)

ジュネーブ市長 レミー・パガーニから、前双葉町長、井戸川克隆への書簡

井戸川克隆様

ジュネーブ 2013年2月13日

拝啓

昨年のジュネーブご訪問に、改めて感謝申し上げます。
Palais Eynard(市庁舎)に、井戸川さんをお迎えでき、大変光栄に存じます。
2011年3月に発生した原発事故後、日本国民の皆さんが直面している問題の理解が、より深まりました。

1月23日に、双葉町長を辞職された、と伺いました。
苦渋の決断だった、とお察しいたします。
井戸川さんは、福島県の首長の中でただ一人、住民を県外に避難させ、
原発事故の深刻な状況に対し、無策、 無責任な態度を取る、政府、東電を、公然と糾弾されてきました。
放射能被害から、町民の皆さんを守るために、あらゆる措置を講じられてきました。
辞職されたことは、残念に思います。

昨年10月にお会いした際、チェルノブイリと日本の避難基準を比較した、表を見せて下さいましたね。
日本政府が、直ちに健康への影響はないとの見解から、
年間の放射線許容量を、20mSvまで引き上げたと知り、驚きました。

ご存知の通り、ICRPは、
一般公衆の年間被曝許容限度を、1mSvと勧告しているほか(原発作業員の被曝許容限度は、年間20mSv)、
子供は、大人よりも放射能に対する感受性がより高いことは、周知の事実です。
また、放射能が及ぼす健康被害についても、幅広く論文化されており、
最近では、ニューヨーク・サイエンス・アカデミーが、2009年に発行した研究書に、詳細が述べられています
(脚注にあるA.ヤブロコフ博士、A.ネステレンコ、V.ネステレンコ著の「チェルノブイリ:事故が人々と環境に与えた影響」が、該当する研究書です)。
そして、多くの独立した研究者が、数十年来の研究結果から、被爆に安全なレベルはない、と唱えています
ICRPも、閾値なし直線仮説を認めています)。

ICRPが勧告した、年間被曝許容限度の引き上げ正当化の立証責任は、日本政府にあります
しかし、そんなことを実証できるのでしょうか。
実際には、これ(1mSv)以下の低線量被爆による、健康被害が認められていることから、
許容限度などは、意味を持たないのです。
政府に、福島県民の皆さんがモルモットにされている事態は、許しがたいです。
事実、政府は、IAEAとWHOの協力のもとに、福島県民の健康実態のデータを、集めようとしています
これは人権侵害であり、即刻阻止されなければなりません。

井戸川さんは、今後も、政府当局による非人道的な扱いから、市民の皆さんを守るために戦っていかれる、と伺いました。
もっと多くの人々が、共闘することを望みます。
人々が、高濃度汚染地域での生活を強いられていることは、到底受け入れられません。
政府と福島県が、双葉町の皆さんを、致死的なレベルに汚染された地域に、帰還させようと画策していることは、狂気の沙汰としか言いようがありません。

また、福島県の約40%の子供達に、甲状腺の異常が認められたことは、由々しき事態です。
福島県外でも、甲状腺異常の発生率が増加している、と伺いました。
このような非常事態の中、医療関係者は真実を隠蔽し、被曝の影響を否定しています。
お会いした時にも、井戸川さんが強調なさっていた通り、日本人は、チェルノブイリから学ばなければなりません。
福島の状況は、住民の皆さんの健康被害の発生頻度を見る限り、チェルノブイリよりも更に深刻に思えます。
ご存知かと存じますが、チェルノブイリ周辺で、甲状腺ガンの発生率は、1990年代に入ってから増加し始めました。
双葉町では、約300人の住民の皆さんが、福島第一原発の第1号機爆発により発生した、高濃度の放射能の灰を浴びた、と仰っていましたね。
にもかかわらず、政府や医療関係者は、被害者の皆さんに対して、健康調査を実施しなかったとのこと。
会合の際、お約束しましたが、ジュネーブ市は、医療関係者やIndependentWHOなどをはじめとする、団体と協同して、
適切な健康調査が実施されるよう、最大限サポートしていく所存です。
他に、何か協力できることがありましたら、遠慮なく仰って下さい。

今後、益々のご活躍をお祈りするとともに、正義を勝ち取るための戦いに、多くの皆さんが団結することを、望んでやみません
くれぐれも健康に留意され、また、ジュネーブでお目にかかれることを楽しみにしております。

敬具

ジュネーブ市長
レミー・パガーニ


http://rollienne.jp/wp-content/uploads/Pagani_to_Idogawa.pdf

待ち受けていた福島の、避難所に暮らしておられる方々の前で、最後の街頭演説をする井戸川氏。
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