ラジオフォーラムに掲載されていた、小出裕章ジャーナルの9月14日分を、ここに転載させていただきます。
↓以下、転載はじめ
五輪プレゼン・汚染水完全ブロックの嘘
「海というのはみんなつながっているのです。どこかで完全にブロックされるなんてありうる道理がありません」
~第36回小出裕章ジャーナル~
ラジオ放送日 2013年9月14日~20日
Web公開 9月14日
聞き手:
2013年9月8日、アルゼンチンで行われた国際オリンピック委員会の総会で、2020年のオリンピックが、東京で開催されることが決まりました。
福島第一原発から漏れ出ている、高濃度汚染水について、たくさんの質問が出ました。
その場で、安倍総理が、いろいろなことをおっしゃいましたが、このことについて、小出さんにお伺いしたいと考えています。
「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の、0.3平方キロメールの範囲内で、完全にブロックされている」と安倍総理はおっしゃいましたが、これは、科学的見地から見ていかがでしょうか?
小出さん:
そんなことあり得るはずがない。
皆さん、わかっていただけないでしょうか。
海というのは、みんなつながっているのです。
汚染はもちろん、福島第一原子力発電所の敷地から、流れてきているわけですけれども、
海に流れこんだ汚染は、太平洋全部、そしてさらには、地球全部の海に、結局は流れて出ていってしまうのです。
要するに、その時に薄まっていくというだけであって、
どこかで完全にブロックされるなんてありうる道理がありません。
聞き手:
なるほど。
漏れ出さないように、港湾内で遮る作業を、一応はしているわけですよね?
小出さん:
スクリーンというものを下ろしているのですけれども、海というものは、満ち引きもあるわけですし、波もあるし、海流もあるし、
そんなスクリーンで、留めることが出来るはずがない。
海水はもちろん港湾内と港湾外を出入りしていますし、
汚染はもちろん海へ流れていっているのです。
聞き手:
完全にブロックされているというのは、間違いということですか?
小出さん:
間違いというより嘘ですね。
聞き手:
福島第一原発というのは、もともと、原発から出た温排水を、遠くの外海に出るように作られているのではないですか?
小出さん:
福島も含めて、原子力発電所の温排水はほとんどの場合、海岸近くから放水しています。
聞き手:
ということは、排水路が外についているわけではないのですか?
小出さん:
今、六ケ所村につくられている、六ケ所再処理工場というところは、膨大な放射性物質を流さざるえない。
はじめからそういう設計になっていて、海岸線では到底流すことができないので、
沖合3キロまで排水管を引っ張って、確か水面下43メートルだったと思いますけども、そこから流すという設計になっています。
原子力発電所の場合には、それぞれ、
膨大な海水を流しているのですけれども、ほとんど場所では、海岸の近くで流しています。
福島(第一原発)もそうです。
聞き手:
小出さんは、安倍さんが言ったことはウソだ、とおっしゃいましたが、こういうことも言っておられます。
「また、わが国の食品や水の安全基準は、世界で最も厳しい、被ばく量は、日本のどの地域でも、その100分の1程度だ。
健康問題については、今までも、現在も、将来も、全く問題ない、ということをお約束いたします。
抜本解決に向けたプログラムを、私が責任を持って決定し、すでに着手しております」
こういう発言については、どう思われますか?
小出さん:
ひたすら呆れますし、
こんな軽々しい発言をする人を一国の首相に持っていることを私自身は大変恥ずかしく思います。
残念ながら、福島第一原子力発電所の事故は、起きてしまいました。
もちろん、
その発電所は、自民党政権が安全性を確認したといって、認可した発電所なのであって、
自民党政権の中心メンバーで、トップにいる安倍さんに、責任があるのであって、
そのことをまず謝罪して、責任をとることが、本当は必要なことだと思います。
2年半経っても、事故自身を収束できないまま、今日まできていて、ですから、汚染水問題がみんなの問題になるということであって、
安倍さんなんかがどんなに責任を取るといっても、事故自身を収束できなかったというのが、事実として目の前にあるのです。
聞き手:
小出さんは、汚染水が漏れているから、タンカーで新潟(柏崎刈羽原発)まで運ぶべきだとか、
5月の時点では、遮水壁をつくらなあかん、という話をされているのですが、
あの時は、何も漏れていないということで、動かなかった、という経過がありましたよね?
小出さん:
あの時はすでに、ピットと呼ばれている水路が敷地の中にあって、
海岸に突き出している部分からジャージャーと、汚染水が外に漏れているのが見えたのです。
それで慌てて、割れている部分だけを塞いだのです。
そうしましたら、多くのマスコミも、汚染水問題は方(かた)がついたと思ってしまったのだと思いますが、取り上げることがなくなってしまいました。
しかし
ピットにしろ、トレンチにしろ、原子炉建屋、タービン建屋、地下のところ、要するに、地面の下に埋まってしまっていて、仮に、割れがあっても見えないというだけなのです。
聞き手:
もともと、海を埋め立ててつくっていますよね?
小出さん:
そうです。
海を、海面のところまで、大地を切り下げていってですね、建てているのですが、
要するに、コンクリートの構造物ですので、
割れないコンクリートの構造物なんて、この世には存在しないのです。
ましてや、地震に襲われていますので、そこら中に割れがあるはずだし、もちろん、液状化も起きているはずなのです。
当然、
穴があいて、汚染水が、当時からずっと漏れていたのです。
そのことを皆さん、知らん顔しながら来て、今になって、汚染水問題が大変だと言っているわけですけれど、
私から見ると、何を今さら言っているのですか、と思ってしまいました。
聞き手:
7月22日、つまり、参院選の翌日に発表していますよね?
小出さん:
汚ないやり方ですね。
聞き手:
今回の、全くブロックされているというウソ、こういうことを世界中に発信してしまったわけですよね?
これ、あとで責任と問われたら、どうやって責任を取るんでしょうね?
小出さん:
必ず、責任を問うて欲しいと思いますし、安倍さんが責任を取るべきだと思います。
聞き手:
安倍さんの一連の見解は、アルゼンチンではなく、福島の人たちに向けて決意を述べるべきだ、と思いますが、いかがお考えですか?
小出さん:
おっしゃる通りです。
今も、福島第一原子力発電所の事故で、10万人ではきかない人が、苦難のどん底に落とされてしまって、
2年半経っても、何の改善もされない状況なのですね。
まずは、安倍さんが、何かそのことに対して、何か
きちっとしたプログラムがあるというのであれば、それこそきちんと説明しないといけないのであって、
そんなことをしないまま、世界には、何かプログラムを持っているかのようにいうわけですね。
本当に軽々しい発言だな、と私は思います。
↑以上、転載おわり