ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

父と恩師の誕生日に

2013年09月08日 | ひとりごと
今日は亡き父と、いっちゃん大変やった頃にめっちゃお世話になったピアノの師匠の誕生日。



父がもし生きとったら、ひとまわり年下の師匠が古稀を迎えはるんやから、82才になってるんやなあ。



なんとも爽やかな、空からカラカラと笑い声が聞こえてきそうな9月の朝、ニューヨーク・タイムズの一面に、大はしゃぎするオリンピック招致委員会の人らの写真が載ってた。



東京でオリンピックを開催したい。開催されたら出場したい。いろんな人たちの願いや祈りがそこにはあると思う。



2011年の、あの、とんでもなく深刻な、2年半も経ってるのに、どうしたらええのか、いよいよ難しくわからんようになってる事故さえ無かったら……。



そのことで、日本という国の見えへんとこで、いったいなにが起こってるのかについて、知らんふりをせんようになってへんかったら……。



「まうみ、多分IOCは日本を選ぶと思う」



気功瞑想のクラスの雑談中に、イスラエル人のミリアムが、はっきりと断言した。



「だって、IOCの役員は、この招致ゴッコでお金を儲けて、それをみんなで分け合うのだから」



「だから、日本の原発がどうだの、汚染がどうだのなんて、全く気にしてなんかいない。日本がどれだけの札束を積んでくるか、それが一番大事なの」



「選手のことだってそう。気の毒に選手は、夢を叶える場を与えられることで、その国が抱えている問題次第では、自分の身に危険が迫っていることに鈍感になる」



「テロが起こっても、事故が起こっても、それで命を奪われたり、一生苦しむ傷や病を抱えることになるのは選手で、招致ゴッコで儲けた連中には、責任を感じることさえない」



「『こんな悲しいことになって、我々は心から同情する。我々の心はあなた方と共にある』、みたいなことを、ちょっと悲しそうな顔で言うだけ」



「原発と一緒。軍隊と一緒」



「世の中の、ほんのひとかけらの人間と会社と組織が、わたしたちのかけがえの無い暮らしと命を、日々、一日も欠かすことなく、追いつめているの」



「原発は、電気を作って生活を便利に快適にしてくれる」



「軍隊は、悪いやつをやっつけて、困ってる人たちを救ってくれる」



「五輪は、ひとつのことに打ち込んで、夢を追いかけている人たちの、日々の成果を披露できるお祭りで、観る人をわくわくさせてくれる」



「みんなみんなそうやって、その陰でバカ儲けしてる人間が、そのおこぼれをもらおうと寄って来る子分と一丸となって、大ウソの幻想を叩き込む」



「気づかないのではなくて、気づきたくないの。気づいたらめんどうだし、苦しいし」



「だから気づかないふりをする。気づかなくてもいいじゃないか、みんなだってそうやってるんだしって、自分に言い訳しながら」



「だからなかなか伝わっていかないのよね。そこが一番しんどいのよね」



父が生きてたら……時々そんなことを考える。



父は、わたしの懸念や心配を、共有してくれたやろか。



それとも、なにアホなこと言うとんねん!アメリカで頭がおかしなったんちゃうかと、怒ったやろか。



いずれにしても、2年半経っても考えを変えるどころか、さらにいろんなことが見えてきて、それが絡み合いながらつながってることがわかってきたわたしを、
とりあえず、気に入らんでも、しゃあないなと認めてくれてたやろか。



うまいもんを食すのが大好きな、生きてたら82才の父は、「うまいもん我慢するくらいなら、1年や2年、命が縮まってもかまへんわ」と、
これ見よがしに、わたしの前で、わたしが食べん方がええよと言うもんをわざと選んで、パクパクと食べてたやろか。



世界に向けて、『収束宣言』をした前首相と、『安全宣言』をした現首相。



これから始まる『オリンピックだワイワイ』茶番劇場を、今苦しみの真っただ中にいる人たちは、どんな気持ちで見てはるのやろう。

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こんな日本になってもて、トトロも腹の底で泣いてるわ!

2013年09月08日 | 日本とわたし
ツィッターの中で見つけました。

『五輪反対の声が渦巻いてる。
売れない広告業者としては、ここで改めて自作ポスターを投稿して、お国のためを強調したい』
kinokuniyanet ‏@kinokuniyanetさんから
9月5日
  

pic.twitter.com/livGSqzA5a


フェイスブックの中で見つけました。

外国の方の作品だそうです。




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「1%は、原発事故を起こしてくれた福島を、次々と投下される巨額税金に集りなぶり殺し続ける」兵頭氏

2013年09月08日 | 日本とわたし
2020年のオリンピック開催地に、東京が選ばれたというニュースを聞き、ポカ~ンとしています。
なんじゃそりゃ?

頭の中でぐるぐるぐるぐる回ってるだけで、いっこうにまとまってこない思いが、今日届いた兵頭氏のメルマガに、そっくりそのまんま書かれてあったので、
さぼるつもりはないんですけど、そのメルマガ『兵頭正俊の知らなきゃ滅ぶニュースの真相』の内容を、そのまま転載させてもらいます。

転載させてもろた上に、厚かましいんですが、強調したいと思うところを太文字にさせてもらいました。

↓以下、転載はじめ

◆ 東京オリンピックのための福島殺害 ◆

━━━━━━━━━━

これから東京オリンピックをテーマに論ずるのだが、それに先だって、『毎日新聞』(9月8日)が、
「<震災関連死>福島県内で直接死上回る 避難生活疲れで」と題して、次のように報じているのを取り上げよう。

『東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災者の死亡例のうち、福島県内自治体が「震災関連死」と認定した死者数が、8月末現在で1539人に上り、
地震や津波による直接死者数1599人(県災害対策本部調べ)に迫っていることが、毎日新聞の調査で分かった。
少なくとも109人について、申請中であることも判明。
近く、直接死を上回るのは確実だ。

長引く避難生活で体調が悪化したり、自殺に追い込まれたりするケースがあり、原発事故被害の深刻さが裏付けられた。

関連死の審査会を設置しているか、今年3月末までに関連死を認定したケースがある、福島県内25市町村を調べた。
復興庁が公表した、3月末の関連死者1383人から、5か月で、156人が新たに増えたことになる。

南相馬市が431人で最も多く、浪江町291人、富岡町190人の順だった。
年代別では、回答が得られた355人のうち、
▽80歳代以上233人(65.6%)
▽70歳代79人(22.3%)
▽60歳代32人(9.0%)などで、高齢者が多かった。

死因については、多くの市町村が「今後の審査に影響する」と、回答を避けた
復興庁による、昨年3月末のデータを基にした、県内734人の原因調査では、
▽「避難所などの生活疲労」33.7%
▽「避難所などへの移動中の疲労」29.5%
▽「病院の機能停止による既往症の悪化」14.5%など。
自殺は9人だった。

宮城県では、今年8月末現在で869人、岩手県は413人だった。
関連死申請の相談を受けた経験がある、馬奈木厳太郎弁護士は、
原発事故による避難者数が多い上、将来の見通しも立たずにストレスがたまっている。今後も増える可能性がある」と指摘している』

(引用終わり)


阪神・淡路大震災でもそうであったが、神戸や淡路から他府県に避難・移住して、そこで自殺する人も多かった。
つまり、県が公的に発表する死者の数は、実態に即したものではないのである。

わたしは、このような他府県の死者も、直接的な死者と同等に扱うべきだ、と考えている。
まして、同じ県にとどまり、時間を置いた死者は、震災による死者、と扱うべきである。

地震や津波による直接死者数は1599人である。
「震災関連死」が、8月末現在で、1539人という。

現在、109人が申請中であるというから、これを足すと、「震災関連死」は1648人になる。
さらに申請は増えるであろうから、上回ることは確実だ。


そんななかで、東京オリンピックを決めた連中が、ブエノスアイレスで、有頂天になっている。
投票の結果は、以下の通りだった。

【1回目】
東京      42
イスタンブール 26
マドリード   26

【最下位決定の投票】
イスタンブール 49
マドリード   45

この結果、マドリードが除外になった。

【決選投票】
東京      60
イスタンブール 36

汚染水問題で、逆風にさらされていた東京が、なぜ勝ったのだろうか。

東京開催決定は、1%の、世界的な富裕層が決めた

世界の99%の認識は、ロンドンオリンピックの開会式で、日本選手団を排除した方にあった。
さらに、日本の汚染水問題を追及した、ジャーナリストの方にあった。


それなのになぜ、東京に決まったかというと、
世界の原子力マフィアを中心とする1%の富裕層にとっては、東京の放射能汚染や汚染水漏れは、逆に東京開催を決定する要素だったのである。

そこで重視されたのは、日本の原発再稼働だった。
これを日本にやらせるために、開催は決められたのである。

つまり、東京オリンピックをやりたい安倍らにとっては、福島原発事故は福音であり、漏れた汚染水はカミカゼだったのだ。
順序は逆である。
「福島復興のための東京オリンピック」ではない。
「東京オリンピックのための福島原発事故」だったのだ。

福島が、困難な状況になればなるほど、国際原子力ロビーは、将来の放射性廃棄物のゴミ捨て場としての日本を、助けなければならなくなった。

核のゴミ捨て場に関しては、元農水大臣の山田正彦が、先の参議院選挙の街頭演説で、日本の原発輸出に関して、この密約があることを暴露している
つまり、日本を核のゴミ捨て場にする戦略は、すでに動いているのである。

http://bit.ly/19vLVh6


日本の政治家は、黒を白と言っても、御用メディアに追及されることはない。
そのまま、御用メディアが国民を洗脳してくれるので、嘘が生業になっている。

安倍晋三と東京五輪招致委員会の竹田恒和理事長が、東京オリンピック開催に向けて、世界に発信した真っ赤な嘘を、いくつか挙げてみよう。

まず、AP通信にスッパ抜かれた、東京五輪招致委員会の竹田恒和理事長が、IOCの委員らに宛てた手紙。

東京の生活は、これまでと変わったこともなく、安全なまま。空気も水も影響を受けていない
皆さんも、福島原発の状況をニュースで見たかもしれませんが、もう一度、言わせてほしい。東京は全く影響を受けていない、と
東京の空気と水は、毎日計測されており、何か問題があるという根拠は全くない。それは日本政府によっても確認されている
世界中が、政治的にも経済的にも不安定な中、東京は極めて安全。地震や津波から復興するうえで、五輪招致を、国の魂を高揚させるチャンスにしたい
(引用終わり)


9月4日、20か国・地域(G20)首脳会議に向かう前に、安倍晋三が、2020年の五輪開催地決定について発言。
福島原発の汚染水問題については、

政府が前面に出て、完全に解決をしていく
7年後の20年には、全く問題はないということをよく説明していきたい
(引用終わり)


9月6日、竹田理事長が記者会見で。

福島から250km離れているので、みなさんが心配するような危険性は、東京には全くない
東京の放射能濃度は、ニューヨークやロンドンと同レベルだ
(引用終わり)


9月7日、IOC総会での、安倍晋三の発言。

(漏れた汚染水は)福島第一原発の港湾内の0.3平方km範囲内の中で、完全にブロックされている
世界で最も安全な都市の一つです。それは今でも、そして2020年でも同じです。
 懸念を持っていらっしゃる方もいるかもしれません、福島第一原発について。
 私は、みなさんにお約束します。
 状況はコントロールされております

そしてわが国の、食品や水の安全基準は、世界でも最も厳しい基準であります。
 食品や水からの被ばく量は、日本どの地域においても、この基準の100分の1であります。
 ま、つまり、健康問題については、今までも、現在も、そして将来も!全く問題はない!ということをお約束いたします

(引用終わり)

このように並べてくると、嘘で勝ちとったオリンピック開催だった、ということがわかる。

安倍や竹田が喋ったことは、原子力村、福島エートス・プロジェクト、国際原子力ロビーが言ってきたことと、ぴたりと一致している
「笑っていれば、汚染水など怖くはないのです」と言っているのと、同質の嘘である。


さて、安倍晋三がやったことは、世界の1%のパシリになって、やれないこと、手に負えないことを引き受けたのにすぎない。
今後、状況は、次のように展開してゆくだろう。

その1
まず、オリンピック開催の経済効果などというものは、ないことを押さえておきたい。
一部の関係業種が潤うだけで、一般の国民には何のメリットもない

その2
憲法改悪後、(あるいはそれ以前にでも)、完全な米軍の傭兵になった国防軍が、世界の紛争地に出兵する。
その結果、攻撃された国の恨みを買って、東京オリンピックは反撃の標的となる可能性が高い。

その3
福島は、その国の首相が「何の問題もなく、コントロールされている」と広言し、世界がそれを圧倒的に認証し、開催国に決定したので、福島はこれで見捨てられる
放射能汚染や、避難・移住などを叫ぶ輩は、非国民として排除される動きが強まるだろう。

その4
東電を、法的に破綻処理させる案は、完全に消える
東電の救済は、国民の税金に転嫁され続ける
東電は税金で救済し、福島県民は放射能汚染地帯に封じ込める、棄民政策が継続する。

その5
汚染水問題に関する、世界の1%からの非難は収束する。
つまり、世界は、「福島第一原発の港湾内の0.3平方km範囲内の中で、完全にブロックされている」という、安倍の嘘を認めたので、
逆に、世界の海産物汚染に抗議できなくなり、福島の棄民とともに世界の棄民が、なし崩しに進む


その6
検察と警察が、国と東電の捜査に入る可能性も、消えた

その7
ネット監視が強まる。
公務員だけでなく、一般の国民も、脱原発や政府の政策を、批判できなくなろう



事実は、東京は安全ではない
すでに2年前から、危険な放射能汚染のなかにある

汚染水も確かに危険だが、オリンピック開催に直接関係するのは、放射能汚染である。
呼吸や食材からくる、内部被曝が問題なのだ。


ドイツ放射線防護協会会長セバスティアン・プフルークバイル博士は、ベルリンの講演会で、次のように語っていた。

東京は安全圏ではない
現在の東京の状況は、チェルノブイリのときのキエフと同じようなものだと言える。
 あのときも、ウクライナ政府は、キエフの汚染を認めるわけにはいかず、プルトニウム汚染地図では、汚染は、ちょうどキエフ市の手前で止まっていた。
 人口の多い首都を、避難区域にすることができないから、どうしても汚染の事実を認めないのだ


(引用終わり)


この発言は、2011年11月27日のものだが、最近に至るまで、外国や国内の良心的な学者の意見は、東京が危険、ということで一致している。
だからこそ、竹田への、厳しい世界のジャーナリストの追及があったのだ。

ここでわたしたちは、ひとつの認識に到達する。

真実も、1%側の真実と、99%側の真実のふたつがある、ということだ。
ひとつは、既得権益支配層の作られた物語であり、他方は、民衆の掴む真実である。

この国では、マスメディアが1%の側につき、99%に対して、絶えざる洗脳を繰り返している

「もう決まったのだから」
「世界が、安倍の約束履行に注目するのはいいことだ」

これも、1%の罠だ。
福島では、冒頭に紹介した、関連死が進んでいる。
その福島は、東京オリンピックのために、また殺された。

1%は、原発事故を起こしてくれた福島を、除染、汚染水、廃炉、核のゴミ捨て場、東京オリンピックと、
巨額の、投下される税金にたかり、なぶり殺し続ける
のである。


今日も最後まで読んでくれてありがとうございます。

 年々にわが悲しみは深くして
   いよよ華やぐいのちなりけり
             岡本かの子

また、面白い文章を書きますね。
みんな、あしたこそ、幸せになあれ!

0∞∞0∞∞0∞∞0∞∞0∞∞0∞∞0∞∞0∞∞0∞∞0

あとがき

ご意見、ご感想はツイッターやフェイスブックでください。
お待ちしています。

0∞∞0∞∞0∞∞0∞∞0∞∞0∞∞0∞∞0∞∞0∞∞0

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発行人 :兵頭正俊
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ショックドクトリン(危機や惨事につけ込んで私腹を肥やす人でなし)から、自分や家族を守るためには

2013年09月08日 | 日本とわたし
約45分半のビデオです。
長くて観る時間の無い方のために、翻訳された文章を書き写しました。
このビデオは、中国のオリンピックの前に行われたインタビューで、かなり古いものですが、
内容を聞き進めていくにつれて、今のわたしたちが抱えている問題、今後、抱えさせられるかもしれない問題に、恐ろしいほど共通したものがあることに気がつきました。

火事場泥棒。

この、最低の、非倫理の、人でなしの資本主義の仮面をかぶった一部の人間や企業に、世界が少しずつ殺されている事実を、まず知ってもらいたいと思いました。
強調したい部分や、自分の意見を書き込みたいのですが、書き写しに時間がかかり過ぎてしまいました。
明日また、その作業をしたいと思います。




DEMOCRACY NOW!

エイミー・グッドマン:
ほぼ20年以上もの間に渡り、石油とガスの海底掘削を禁じている1990年の大統領令を、ブッシュ大統領が解除しました。
これは、ガソリン価格の急騰(4リットル/4ドル以上)を受けた措置ですが、大陸棚や北極圏野生生物保護区の環境が、犠牲になります。
禁止令を出したのは、父ブッシュ大統領です。
この解除に実効はありません。
海底掘削を禁じる、別の法律があるからです。
7月14日、大統領は議会に、禁止を解くよう促しました。

ブッシュ大統領:
すぐに対策を取るべきです。
国民もそれを望んでいます。
そういうことで、大陸棚での石油採掘を禁止する大統領令は、本日解除しました。
行政府による海底探査の制限は、これで無くなりました。
米国民と膨大な石油資源の間に立ちふさがっているのは、連邦議会だけです。
すべては、議会の決断次第です。

エイミー・グッドマン:
退任間近のブッシュ大統領には、経済が最優先の課題です。
原油は1バレル140ドル、1年前の2倍以上です。
石油高騰による世界的な食糧危機のため、新たに1億人以上が、貧困に陥りかねません。
同時に、住宅金融危機が進行中で、米財務省と連邦準備理事会は、2大住宅公社の救済に向け、思い切った措置を発表しました。
相次ぐ危機に対処する、政府の施策の真の狙いは?
ナオミ・クラインさんは、著書の『ショックドクトリン』を、2007年9月に出版しました。
この本で論じたことは、ここへ来てますます、現実味を持ってきました。

食糧、燃料、住宅、気候変動など、危機について伺います。
まず石油から。

クライン氏:
経済だけでなく、人々の日常も、ショックの津波にのまれています。
これらの危機は絡み合い、相乗効果を出しています。
本に書いたことがそのまま、現実に起きているのです。
『ショックドクトリン』と私が呼ぶ政治戦略が、数十年前から使われ始め、
動転した人々が判断力を失い、魔法のような即効薬に飛びつくのを利用して、評判の悪い政策を断行するのです。
本当の問題解決にはなりませんが、多国籍企業は大儲けします。
7月14日のブッシュ演説は、まさにその典型です。
危機の克服には、生活様式を根本から変え、経済システムを転換する複雑な改革が必要だというのに、
特に重要なのは、エネルギー源の多様化です。
人々は実際、そうした考えを支持しています。
そこに登場するのが、『ゆすりの親玉』ブッシュです。
彼は国を人質にしています。
気候変動や石油高騰への、長期的な対策はなにも無く、石油を掘らないとバカンスに行けないぞ、と脅すのです。
掘削を許可すればガソリン代が下がる、という主張に、根拠はありません。
面白いことに、昨日の大統領発表を受けて、石油の先物価格は上昇しました。
価格はこれからも上がり続けていくでしょう。

エイミー・グッドマン:
禁止が解かれたとして、海底採掘された石油が市場に出るのは、いつごろですか?

クライン氏:
まず皆にしってもらいたいのは、ガス石油業界がメディアを使って、大がかりな宣伝をしている事です。
いまや、報道と区別がつきません。
ガス石油業界のコマーシャルは、採掘拡大によって、価格高騰は解決できると繰り返します。
ニュース解説者のコメントも、これに同調するものばかりです。
チェイニー副大統領は、中国がキューバ沖で掘削しているとデマを飛ばし、発言撤回に追い込まれました。
そんな事実は無いのです。
このように、激しい宣伝攻勢がしかけられていますが、実際に石油が出るまでには、5年から10年はかかります。
業界では常識です。
調査と掘削設備の建設には、長い時間が必要です。
10年も先の話なのです。

北極圏野生生物保護区や、大陸棚内陸部泥岩地帯などでの掘削を推進する人たちに問い質すと、
それでもガソリン価格はすぐ下がる、と言います。
その理由は、掘削を解禁すれば、市場と投機家に対し、今後石油供給は増える、というメッセージになるからです。
つまり、政府も市場ゲームをするのです。
昨日のブッシュ氏の発表が重大だったのは、在職中の最後の仕事にしようと真剣だと分かるからです。
やってのける可能性は十分です。
メディア攻勢で世論を抱き込めば、民主党も世論に押されます。
彼らが対抗するには、真剣な環境政策が必要ですが、期待薄ですね。

エイミー・グッドマン:
海底掘削の禁止解除と、イラクの現状との関係は?
イラク石油省の内情や、米政府が強く求める駐留の恒常化との関係は?

クライン氏:
ブッシュ政権は、ガス石油業界に、最後の置き土産を配っているのです。
国内では、北極圏の野生生物保護区を開放し、イラクでは、多国籍企業の油田支配を認めさせる。
これは最高の贈り物です。
これは、2段階で進んできました。
最初は、短期的な請負契約で、入札無しの契約です。
未調印ですが、1970年代にイラクから追放された、大手石油会社が舞い戻ります。

エイミー・グッドマン:
入札無しの契約の仕組みは?
誰が署名するのですか?

クライン氏:
イラクにはまだ、石油法が無いため、長期的な探査契約が結べません。
クルド自治区で行われているものは、非合法な契約であり、将来接収される可能性もあります。
法律が無いので、高リスクです。
ブッシュ政権は、米国主導の石油法を承認せよと、イラク国会に迫りますが、
この法案は、イラク統一の象徴という説明に、納得する者はいません。
石油法への抵抗が根強いのは、イラクにとって、石油国有化が、反植民地闘争の中心だったからです。
近隣アラブ諸国でも同じです。
これは、サダム派やバース党だけでなく、アラブ民族主義の核心なのです。
イラク石油労働者組合はじめ、多くの政治勢力が強硬に反対し、
「石油掘削に、外国の多国籍企業など必要ない」「管理権や所有権は渡さず、技術支援だけ受けよう」と主張する。
強調しておきますが、イラクの石油は、海底や泥岩地帯の石油とは違い、大量の技術や投資が要りません。
ブッシュ政権が解禁を進める石油は、開発に多額の投資が必要なので、原油価格が高いままでなければ、採算が取れません。
硬い岩からの原油抽出は困難で、海底採油も高コストです。
掘削施設の建設が必要ですから。
イラクは違います。
地面に棒を刺せば、石油が出てきます。
イラク人は、自分で採取できます。
多国籍企業が必要だ、というのは神話です。
奇妙なことに、BPやテキサコなどの大企業が、採掘会社でもないのに、採掘契約を入札無しで結んでいます。
この契約の本当の目的は、将来のもっと大きな契約への、優先権を与えることです。
こうした小型契約の発表の1週間後、次は長期管理契約を行うと、イラク石油省が発表しました。
イラクの既存油田を運営する権限を、石油会社に与えるものですが、石油会社が75%を獲得し、イラクには25%しか残りません。
この地域では、前代未聞です。
探索が必要な新油田でも、国は最低51%取るのが標準です。
すでに稼働中で技術もある、既存の油田の運営で、外国企業が75%も取るなんて、白昼強盗も同然です。
いや、武装強盗ですね。

エイミー・グッドマン:
『ショックドクトリン』の著者、ナオミ・クラインさんがゲストです。
クラインさんの出身国カナダは、米国への最大の原油供給国です。
サウジアラビアではありません、カナダです。
最近訪問された、中国における米軍需産業と中国政府の関係、そして彼女がなぜ、米国政府を告訴しているのかも伺います。

『ショックドクトリンー惨事活用型資本主義』は、25カ国語に翻訳されました。
最近、廉価版も発売されました。

石油の話を続けましょう。
原油価格は史上最高値なのに、エクソンモービルやシェブロンも過去最高益です。
なぜでしょう?

クライン氏:
無競争市場での価格上昇は、企業の利益増を意味します。

エイミー・グッドマン:
供給難が価格上昇の理由ではない?

クライン氏:
投機バブルが進行し、市場がゲームになっています。
住宅バブルに代わる新しいバブルです。
世界で起きる悪いことはみな、投機家にとって値段つり上げのチャンスです。
昨日も同じで、海底油田開発のブッシュ発表と同時に、ブラジルで石油ストが起き、価格は上昇しました。
あらゆる理由で石油価格が上昇する、典型的なバブルです。
供給問題もありますが、高騰の主な原因ではありません。

エイミー・グッドマン:
ご出身のカナダは、米国の主要石油供給国です。
ちょっと意外ですね。
北極圏の自然保護についても話してください。

クライン氏:
先ほどの大統領発言のような主張には驚きます。
石油の対外依存を避けるため、海底油田掘削が必要だ、との主張です。
多くの米国人は、石油の大半が、サウジなどから来ると思っています。
でも、イラク侵攻後、石油価格の急騰に伴い、変化が起きました。
米国への石油供給1位は、サウジやメキシコではなく、カナダです。
カナダには海底油田があり、北極圏の保護区や、泥岩地帯での採掘も行われています。
距離も近く、米国にとって絶対安全な供給地です。
なぜかというと、北米自由貿易協定(NAFTA)によって縛られているからです。
カナダ人は不満ですが、米国への石油供給の停止は、違法なのです。
たとえ、石油危機に直面し、自国民に石油を供給できなくなっても、米国への供給は止められません。
継続供給は、法的な義務なのです。
だからカナダが、最大供給国なのです。

もうひとつの共通点は、環境破壊です。
カナダから輸入される石油の多くは、タールサンドから採れます。
最近はオイルサンドとも言いますが、これは石油業界の呼び換え戦略です。
この特殊な石油と原油価格高騰は、密接に関連しています。
原油1バレルが30ドルだった頃、膨大なタールサンドは、埋蔵量に勘定されていませんでした。
粘度が高いタール状の物質を、液状の石油に精製するには、多額の費用がかかるからです。
1バレル25~30ドルもするので、埋蔵原油とみなす意味がなかった。
投資しても利益が出ないからです。
イラク戦争で石油価格が急騰すると、この石油が『発見』され、世界の原油埋蔵量の一部になりました。
今では、世界最大の石油埋蔵量とされています。
でも、採掘はやめるべきです。
環境保護団体は、採掘の一時停止を求めています。
タールサンドから石油を精製するには、イラクにあるような、最初から液状の原油に比べ、3倍の化石燃料を燃やさなければなりません。

エイミー・グッドマン:
CO2排出は激増しますね。

クライン氏:
こうしてカナダは、米国と並ぶ、環境破壊国になりました。
タールサンド精製には、CO2排出増に加え、大量の水も消費します。
タール状物質の液化の過程は、環境汚染を引き起こします。
利用をやめるべきです。

もう一つの論点は、カナダは石油ブームのおかげで、米国より経済が好調なのに、
これほど供給が増えても、原油価格に何の影響も無いことです。
北極圏、海底泥岩層の掘削を検討する際に、考慮すべき点です。
現に今、カナダでは大変な石油ブームが起きているのに、石油価格は上昇を続け、ガソリン価格には全然影響しません。

エイミー・グッドマン:
最近書いておられることのひとつに『オバマ・ボーイズ』があります。

クライン氏:
オバマの『シカゴボーイズ』ね。
でも、あと一点だけ言わせてください。
石油業界の宣伝攻勢によって、世論が変化しつつあります。
世論調査では、米国人の67%が、海底油田掘削に賛成です。
石油が安くなる、と期待しているから。
でも、石油会社は、実際に掘削するでしょうか?
彼らは、開発許可を押さえたいだけです。
そうすれば、石油供給を支配する力が強まります。
供給量が支配できれば、価格も支配できます。
現実は、説明と正反対です。
石油会社は、供給調整によって、価格つり上げができる。
既に手に入れた開発許可を、行使してもいないのにさらに要求するのは、供給を支配し、価格決定権を得るためです。

エイミー・グッドマン:
この問題は、右派も含め、幅広い政治的立場の人々が連携する、全員共通の関心事ですね。
解決案はバラバラですが。

クライン氏:
石油業界のボロ儲けには、右派も反発していましたね。
3日間ぐらいの束の間でしたが、余りに露骨でしたからね。
シェルの四半期利益は、70億ドルに上がりました。
気候変動は、皆の大問題です。
彼らの利益の一部は、そのために回収すべきです。
石油会社は、気候変動の元凶ですから。
世界のほかの国々は、石油高騰の今を好機と捉えて、代替エネルギーやインフラに投資しています。
太陽光や風力発電の活用には、新興企業育成だけでは不十分です。
国家が、送電網などの、大規模なインフラ投資をすべきです。
公共部門でなければできません。
今が絶好の機会です。
石油企業への不満が高まった今こそ、利益の一部を公共部門に投資し、代替エネルギーを開発すべきです。
この点では右派も、一瞬ですが合意していたのに、ガス石油産業のデマ宣伝で、流れはすぐに変わってしまいました。

エイミー・グッドマン:
オバマのシカゴボーイズとは誰ですか?

クライン氏:
一人目はオバマ本人です。
保守的なシカゴ大学の法学部で、彼は10年間も教えていました。
オバマ氏の経済政策の根っこにある保守性について、シカゴ大学と関連づけて、最近コラムを書きました。
住宅ローン危機に関し、オバマ氏は当初、人々が家を追い出されないよう政府が救済措置を取ることは、モラルハザードを招くと懸念を示しました。
貸し手の大企業ではなく、低所得者層のモラルハザードです。
いかにもシカゴ学派らしい反応の仕方です。
彼の主任経済問題顧問は、シカゴ大のグールズビー氏でした。
今の主任経済顧問のファーマン氏は、シカゴ大学閥ではありませんが、経済政策では、民主党の中でも、右派に属します。
ウォルマート社への批判に反撃し、同社は進歩的企業で、低所得者を低価格で支援していると弁護し、
生活賃金の要求は、低所得者を苦しめる、と論じました。
オバマ氏の顧問が保守派である事実は、知っておくべきです。

エイミー・グッドマン:
彼は、ヒラリー氏がウォルマートの社外重役だった点を攻撃し、あそこでは買わない、と言いましたね。

クライン氏:
彼は、二枚舌を使い分けていますね、政治キャンペーンですから。
グールズビー氏が、カナダ領事館員に言ったことが、後で問題になりました。
「オバマ氏のNAFTA見直し発言は、真に受けるな。あれは選挙用だから」と、領事館員に伝えたそうです。
ウォルマートに関するオバマ氏の発言も、それと同じでしょう。

エイミー・グッドマン:
フォーチュン誌に載った、オバマ氏自身の発言もありますね。
彼は、労働運動が盛んな州を遊説中に、NAFTAをさんざん非難しましたが、
グールズビー氏は、「それは本当ではない、ちょっとした言葉のあやだから心配するな」と言ったと。
同じ発言を今度は、オバマ本人が、フォーチュン誌で述べました。

クライン氏:
「あれは言葉のあやだ」とね。

エイミー・グッドマン:
彼は、NAFTAと自由貿易を支持しています。

クライン氏:
クリントン大統領が当選した時に似ています。
労働と環境の基準を争点に、当初はNAFTAを批判していました。
条約批准よりも前のことです。
でも、その後、方向転換しました。
選挙で勝ってから就任までの間に、決定的な会合があったのです。
私の懸念は、ルービン氏のような経済学者が、クリントン政権の経済政策を方向付けたのと同様、
『民営化』と『自由貿易至上主義』を全面的に信奉する民主党経済学者が、オバマの周りを固めていることです。
フォーマン氏は、ルービン元財務長官の弟子で、同じシンクタンクで働きました。
このシンクタンクは、民主党が、『大衆迎合』の経済政策に傾かないようにするのが目的でした。
世界中で信用を失った自由貿易至上主義が、見直されるのを阻止するのです。

エイミー・グッドマン:
NAFTAに関し、オバマ氏は、立場を換えたと見られています。
米国民の、令状無し盗聴にも、賛成に転じました。

クライン氏:
誤解のないように言うと、オバマ氏の経済政策は、もともと保守的でした。
でも、予備選の過程で、ヒラリー候補が大衆路線を取ったので、オバマ氏もそちらに振れました。
ヒラリー離脱後、元に戻っただけです。
オバマ氏がもとから、進歩的な立場を取ってきた分野もあります。
外交政策はそうです。
でも、経済政策は違います。

エイミー・グッドマン:
ヒラリー、エドワーズ両氏との討論で、自由貿易合意を『誤り』『大問題』と呼びましたが、
フォーチュン誌では「選挙中の言葉のあや」と釈明し、「自分は常に、自由貿易を支持する」と語っています。

クライン氏:
ヒラリー氏が予備選から降りた翌日、ファーマン氏を顧問に任命しました。
元のさやに戻ったのだと思います。
サブプライム危機への反応は、低所得者層の強制退去もやむなしで、さもなくばモラルハザードを招く、
つまり、そんなローンを受けた個人の責任だ、という基本姿勢です。

エイミー・グッドマン:
令状無しの盗聴に関し、訴訟しておられますね。
これは、オバマ事務所の声明です。
「通信事業者を、過去にさかのぼって、免責することに反対する」
「憲法が定めた、議会の義務である、市民保護の規定にも反している」
「本法案の議事妨害を支持する」
でも結局、オバマ氏は法案を支持し、通信事業者は、過去にさかのぼって免責されました。

クライン氏:
ブッシュ政権が、石油業界と同様、通信業界のお仲間にも配ろうとする、置き土産ですね。
政権の優先順位が丸見えでがっかりです。
お話に出た告訴は、米国自由人権協会(ACLU)による、前向きな取り組みです。
こんな法案を、議会が通すはずがない、ACLUはそう見ていました。
けれども、万一の事態に備え、告訴の準備を整えていたのです。
議員が裏切ったときは、自らの手で法を守る。
ACLUの本領発揮です。
ACLUは、国際的なNGOやジャーナリストを束ねました。
私はクリス・ヘッジズと共に、ネイション誌を代表して、訴訟の名義人になっています。
外国の情報提供者や、外国の同業者との通信が、やりたい放題に盗聴され、何の歯止めも無しに、完全に恣意的な監視の下に置かれることは、
業務を著しく妨害すると、私たちは抗議しています。
嘆かわしいのは、オバマ氏その他の民主党員が、自らの変節を取り繕うため、法律の内容に関して、正直に言わないことです。
もう十分に修正されて、心配はなくなったと言いますが、自己を正当化するための、ひどい背信行為です。
おかげで、この法律の恐ろしさが、知られていません。
通信事業者の免責自体ひどいことですが、もっと問題なのは、立証責任が無いことです。
条件は、監視対象が米国外にいることだけです。
例えば、私が米国内に居て、アルゼンチンの誰かと通信しているとします。
政府は、アルゼンチン側がテロ関係者だと疑う理由を、説明する必要が無く、米国人でないと説明できれば良いのです。

エイミー・グッドマン:
『ショックドクトリン』の短編映画版は、ネットでご覧になれます。
クラインさんは、中国から戻ったばかりです。
中国では、米軍事産業の助けで、警察国家化が進んでいます。

イラクに関するオバマ・マケイン両候補について伺い、それから、食糧危機と、中国で起きている事について聞きます。

クライン氏:
イラクについては、オバマ氏に完全撤退の計画は無く、駐留軍を徐々に縮小させるだけです。
米大使館周辺はそのまま残す、と明言しています。
これは、傭兵会社ブラックウォーター温存を意味します。
私がこの点を突くのは、オバマ叩きが目的ではありません。
彼には、支持者からの圧力が必要です。
彼は、反戦運動の力と組織を、取り込んでいるからです。
彼を支える反戦運動の根源は、イラク問題への怒りと、変化を望む心です。
現在、反戦運動の主流はオバマ支持ですが、彼に対して、支持に見合う明確な要求をしていません。

エイミー・グッドマン:
彼は、アフガン1万人増派を唱えていますね。

クライン氏:
彼に資金提供する企業の中に、ひとり、シカゴボーイがいます。
ケン・グリフィンという、ファンドマネージャーで、元共和党員です。
勝ち馬に乗るため、オバマ側に寝返りました。
ウォールストリートや、軍需産業、ヘッジファンドの資金が、オバマ陣営に流れ、力を振るっています。
共和党にくら替えもできるからです。
反戦運動には、そんな切り札がありません。
草の根の支援者がオバマ氏を支え、力を与えたのは、環境、イラク、国内経済政策を、どうにかして変えたいからです。

エイミー・グッドマン:
マケイン氏は、「イラクに百年留まる」と言っています。

クライン氏:
二大政党制の欠陥ですね。
選択肢が無い。
「革新は駆け引きを知らない」と、ラルフ・ネーダー氏は言いました。
二大政党制だけが問題なのではなく、候補者への支援に条件をつける、無党派の運動が必要なのです。
ロックスターのファンなどのように、無条件の支援ではだめなのです。

エイミー・グッドマン:
別の選択肢もあります。
棄権による意思表示です。

クライン氏:
それもある種の脅威です。
でも、オバマ支持者は、もっと強く、条件や批判や要求を、突き付けるべきです。
支持者層は、彼の政策よりずっと左寄りだからです。
住宅ローン危機、NAFTA、イラク、どれをとってもそうです。

エイミー・グッドマン:
世界的な食糧危機については?

クライン氏:
ショックドクトリンの、もうひとつの応用例ですね。
途上国が国際援助を求めるような、絶望的な危機状況を利用して、企業寄りの、評判の悪い政策を押しつけます。
例えば、アジアの津波の時、スリランカなど援助が必要な国に、国際金融機関がやって来て、
援助と引き換えに、水道や電力の民営化や、海岸のリゾート開発などを要求します。
世界食糧危機でも、企業が火事場泥棒に励みます。
援助や債務免除が必要とされる中、世界銀行や米国務省やアグリ企業が、口を揃えるお題目は、
『遺伝子組み換え作物の禁止が、食糧危機の原因だ』
『遺伝子組み換え作物こそ、食糧危機の救世主だ』
この機に乗じて、法的な障壁を、一気に破ろうとしています。
石油危機を利用して、掘削禁止を解除する手口とそっくりです。
遺伝子組み換え食品が、世界の腹を満たすというお題目に、科学的根拠は無く、実は逆です。
遺伝子組み換え種子は、収穫を増やしません。
増えるのは、農業関連企業の利益だけです。
収穫はむしろ、減ります。

エイミー・グッドマン:
なぜ?

クライン氏:
それが目的ではないからです。
例えば、ラウンドアップ耐性作物の目的は、製品適合性のみです。

エイミー・グッドマン:
大豆と化学肥料との?

クライン氏:
モンサント社の除草剤を使える事が目的です。
収穫増ではなく。
収穫増技術は見つかっていません。
心配なのは、石油危機と同じで、食糧危機の中、大手農業関連企業が、過去最高益を上げていることです。
彼らは、『気候変動耐性』種子の特許を買いあさっています。
除草剤に耐える品種と同じ理屈で、気候変動耐性品種なら、気候変動に対応できるため、
干ばつでも育ち、洪水後の、塩分が多い土地でも育つ、としています。
モンサントやシンジェンタ等、大手のバイオテクノロジー企業は、特許を大量に買い占めています。
気がかりなのは、気候変動が商売になると、将来の混乱を回避する意欲が、損なわれることです。
モンサント等は、攻撃的に、自社の特許を守ろうとしており、ラウンドアップ耐性種に関して、小規模農家を監視して、告訴しています。
高圧的な司法戦術と、民間警備を駆使し、次の季節まで種を保存しようとする農民を、特許侵害で訴え、嫌がらせをしています。
気候変動耐性の種子が、特許登録され、買い占められると、
将来は、世界中の食糧供給どころか、気候アパルトヘイトが起き、穀物へのアクセスが制限され、効果な値段が付くでしょう。
このことに今すぐ気づき、『食糧は人権である』と規定する必要があります。
モンサント等が、気候変動に適応した作物の独占を目論むのは、深刻な問題です。

エイミー・グッドマン:
あと5分しかありません。
中国から戻って書かれた記事『すべてを見ている眼』について、お伺いします。
中国は、米国の兵器産業と提携して、ハイテク警察国家を準備し、輸出準備もできているそうですね。

クライン氏:
中国に行ったのは数ヶ月前ですが、記事は最近掲載されました。
ローリング・ストーン誌のウェブサイトでご覧になれます。
シンセン市の珠江デルタを、集中的に取材しました。
搾取工場が集中する、世界のための中国の作業場です。
私たちの持ち物の、半分を作っています。
無数の衣料品工場があります。
これまでも、グローバル化、生産モデルの実験室でした。
1980年には、シンセン市は存在せず、漁村の集まりでした。
今は、人口1200万人を超えます。
今、新たな実験が行われ、高度警察国家が作られつつあります。
市内には、数十万の、監視カメラが設置されています。
200万台のカメラを、ネットワーク化することにより、集中制御で、警察が監視できます。
路上だけでなく、ネットカフェ内や民間レストラン内にもカメラを置き、公私の別なく、すべてを監視する状況が生まれます。
ハイテク警察国家構想には、生体認証や、顔認識装置も含まれます。
SF映画で散々描かれた未来像ですが、北米ではまだ、実現していません。
市民の自由や、プライバシー保護の意識が残っていて、監視網が張り巡らされることを、許さないからです。
でも、中国の条件は完ぺきです。
政府は、市民の私生活に全く配慮しません。
そこで、GEやハネウェルなどの企業が、群がって受注しています。

エイミー・グッドマン:
NBCテレビの親会社ですね。

クライン氏:
オリンピック警備の名目で、大量の契約が結ばれています。
大規模建設などで、五輪は常に、企業に大儲けの機会を与えます。
9/11以後は、警備産業にも、儲けのチャンスができました。
五輪は、この方面の新規投資の口実にもなります。
公共輸送、検問所、地下鉄などの監視カメラや、生体認証カード、2010年のバンクーバーも似た状況ですが、
中国はやりたい放題です。
北京五輪の警備名目で、130億ドルが使われる、と言われています。
忘れてならないのは、米企業が中国政府に売った装置は、五輪後も残り、国民に対して使われることです。
選手や、外国要人保護の名目で設置されますが、その後は、国民に対して使うことが可能です。
天安門虐殺事件後に、制裁政策が取られ、米企業による中国政府への警察装備販売が、禁止されました。
民衆抑圧が懸念されるからです。
でも、国際行事でのテロ警備を口実に、裏口から入りこみました。
大急ぎで話をまとめると、北京五輪の警備費は130億ドル、9/11後、初の五輪だったアテネは15億ドル。
警備支出は、15億ドルから130億ドルに、膨れ上がりました。

エイミー・グッドマン:
恐怖の新警察国家に見えますが、国内では合格点でした。

クライン氏:
そうです、技術は、チベットでの暴動弾圧にも使われました。
中国政府は、ラサでの暴動を、あえて収拾不能な状態にした上で、暴力を映像に収めることに注力しました。
監視カメラをラサ市内に設置し、

エイミー・グッドマン:
有線テレビですね。

クライン氏:
警察と軍も、独自に撮影しました。
『荒れ狂うチベット人』のビデオを編集し、報道映像にしました。
外国報道陣は締め出したまま、監視映像の寄せ集めで、反チベット世論を作るために。
それ以上に問題なのは、ネット企業の、中国政府への協力です。
政府は、監視カメラから顔写真を作り、チベット人21名の、指名手配リストを作り、中国の、全ポータルサイトに掲載させました。
短時間でしたが、YahooとMSNにも載りました。

エイミー・グッドマン:
それはどういう意味です?
彼らは掲載してそして?

クライン氏:
すぐ取り下げました。
Google、Yahoo、マイクロソフト等の米企業による、中国政府の反体制派弾圧への協力は、大きな問題になっており、
議会に召喚されたりしました。
Yahooには大打撃です。
今回のものは、その一例です。

エイミー・グッドマン:
五輪開始後、またいらしてください。
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