ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

「リニアやるなら、ハンをついた人間に失敗した時のツケをすべて負わせる仕組みに改めるべき」かさこ氏

2013年09月19日 | 日本とわたし
BROGOSに掲載されている、かさこ氏の『リニア新幹線』についての取材記事を転載させてもらいます。

↓以下、転載はじめ(文字の強調はわたしがしました)

未来世代の不良債権リニア新幹線ゴリ押しで、JR東海がJAL・東電の二の舞になる危険
~すべては国民のツケに~


リニア新幹線計画って、こんなに狂気な計画だとは思いもしなかった……。

リニア新幹線についてどう思うか?と聞かれて、「何が何でも絶対に反対だ!」という人は少ないのではないか。
だって、税金を使うわけではなく、JR東海が全額負担するわけだし、
夢の超特急ができるなら、一度くらいは乗ってみたい、ぐらいの感覚ではないか。
私もそうだった。

このため、
「来年から建設着工予定のリニア新幹線計画を、なんとして止めたい。
しかし国民の関心はあまりに薄い。
ブログを拝見し、この問題について、ぜひブログで書いてほしい。 現地を案内しますので」
と、建設予定地の南アルプスそば、長野県大鹿村に住む、浮島仁子さんからメールをいただいた時、正直ぴんとは来なかった。
だから、
「取材はしますが、リニア反対、という記事を書くとは限りませんよ」 と返信したのだが、それでもいいというので行ってきた。

ちなみに、リニア新幹線建設にかかる費用は、約9兆円。
来年から建設をはじめ、今から14年後の2027年に、品川ー名古屋間開通。
今から32年後の2045年に、品川ー大阪間が開通予定、という計画だ。





新宿から高速バスで諏訪湖を通り、駒ケ根を通り、飯田の手間。
松川インターで降りて、そこから車で約1時間。
四方を山に囲まれた、自然豊かな、THEニッポンの田舎といった大鹿村に到着。
春になると、様々な花々が咲き乱れ、現代の桃源郷とも呼ばれる美しい村になるという。
人口は1100人あまり。
南アルプスの登山口があることから、登山客が多い。

浮島さんは、トンネル建設予定地になると思わしき周辺を、案内してくれた。
現場を見せることで、反対理由が理解できるのではないか、という狙いだろう。

「かさこさん、こんな狭い山道に、これから約10年、膨大なトンネル工事のために、狭い山道である村民の生活道路に、ダンプが行きかうことになるんですよ。
怖くて、こんなところに住めなくなってしまう。実質上、村人は住めなくなってしまう」







「この村は、中央構造線が南北に縦断しており、周囲の山は脆弱な地質のため、大崩壊地や地すべりが起きている。
こんな危険な場所にトンネルを作ったら、さらに危険な場所になりかねない」 と、
村を貫く小渋川沿いの山々を見て回り、崩落、地滑りが起きている様子を、度々、写真に撮ってほしいと言われた。

「リニア反対を訴えるには、言葉だけでなく写真が重要。
私が撮影した写真では、こんなところにリニアを建設するのはおかしい、ということが伝わらない。
かさこさんが撮影してくれれば、多くの方に、建設計画の無謀さを訴えられるのではないか」との狙いもあって、私に依頼したという。

確かに、地元住民にとっては死活問題だ。
桃源郷の村にダンプが行きかい、地滑りが起きている山で、トンネル工事を10年もはじめるなんて、とんでもないことだと。

でも、と思う。
日本社会全体の利益を考えた時に、もし、東京と大阪を短時間で結ぶ交通インフラが、何が何でも必要ならば、
多少、小さな村が潰れてしまうことは、致し方がない。
小さな村を潰さないことを最優先にしたら、日本全国、どこにも道路や鉄道は作れなくなってしまう。
もちろん、先に住んでいた人を追い出すわけだから、きちんとした補償をするなり、その事業の必要性を、丁寧に説明することは欠かせない。

また、地滑りが起きている山だからといって、地下に掘るトンネルが危ないのかは、正直、私にはよくわからない。



そもそも、見せられた大崩落地の一つは、1961年(昭和36年)に起きた集中豪雨によるものだ。
50年以上も前の話だ。

確かに、トンネルを掘るのは、大環境破壊かもしれない。
でも私は、環境保全至上主義者ではない。
そんなに環境が大事なら、人間が死ぬしかない。
人間は、多かれ少なかれ、環境を壊して暮らしている。
すべてにおいて環境を最優先したら、人間は生活できなくなり、何も作れなくなってしまう。
リニアのトンネルが環境破壊なら、道路のトンネルだって、鉄道のトンネルだって、環境破壊でやめるべきだろう。

重要なことは、人間に悪影響を与えない、環境破壊をしないこと。
生態系が根本的に変わって、人間が暮らせなくなってしまうような、環境破壊をしないことではないか。
だから、環境に取り返しのつかない、破壊的な被害を与える原発は、何が何でも反対だが、CO2を多少出そうが、火力発電所にまで反対はしない。
原発反対派の中には、「火力発電所も環境破壊だ」というが、だったら電気使わず生活しろよ、と言いたくなる。
多少の環境破壊になったとしても、致命的な環境破壊にはならず、人間社会が便利になるなら、それに反対する理由はない。

だから私は、地元の村人がかわいそうだから、リニアはやめるべきだ、とはまったく思わない。
逆に、村人の中には、リニア建設であぶく銭を稼げて、喜んでいる人もいる。
二束三文の田畑が、建設予定地の資材置き場になると高値で売れるとか、
工事関係者が、この先何年も宿泊して安泰だとか、
地元の建設業に、大きな仕事が入ってくる可能性もあるだろう。
地元には、「反対なんかして金儲けのジャマをするな!」という意見もあるだろう。

また、環境破壊だからやめるべきだ、とも思わない。
例えば東海道新幹線だって、トンネルいっぱい作って環境破壊しているわけだが、 環境破壊しているから電車を止めろ、という人はいないだろう。
日本社会には欠かせないインフラだからだ。
もし、リニアもそうであるなら、重大な環境破壊を起こさない限り、 何が何でも反対する必要はない。

でも、浮島さんから、リニア計画についていろんな話を聞き、また、橋山禮次郎著の「必要か、リニア新幹線」という本を読んだりすると、
今までたいした関心もなかったリニア建設だったが、これは、何が何でも反対しないとまずい代物ではないか、と思えてきた。


その理由はズバリ、どうやっても必要性が見い出せず、明らかにJR東海の収益悪化をもたらし、それが最終的には、国民の負担になる不良事業だからだ。

はっきりいって、リニア建設計画は狂っている
例えるなら、JR東海が9兆円の借金をして、万馬券の馬に全額賭けます、といっているような話だ。
あまりにバカげていて、建設する意味がわからない

ただ、このリニア計画がミソなのは、税金ではなく、JR東海が、全額負担して事業を行うことだ。
国民の血税を使うわけじゃない。
JR東海がやるんだからいいだろうと。

でも、果たしてそうだろうか?
リニア計画が、どっかのベンチャー企業がやるならともかく、
国民にとってなくてはならない生活の足を、ほぼ独占的に保有している、極めて公共性の高い鉄道会社がやるわけだ。
9兆円もかけてリニア作ったのに、まったく採算が合わずに赤字になってしまえば、その負担は、通常のJR東海の運賃に、上乗せされる形になる。
失敗が目に見えている大バクチをしたせいで、そのツケは、結局は、国民に降りかかってくるのだ。

リニアが失敗してその会社が倒産するなら、国民には何の被害もない。
融資したアホな銀行が、不良債権を抱え込むだけだ。
しかし、そうではない。
そのツケは、国民の生活の足に上乗せされるのだ。

JALの破綻や、東京電力の“破綻”と同じことだ。
ずさんな経営で、かけるべきところにお金をかけず、いい加減なところに金をかけ、経営が悪化したら、そのツケは国民が背負わされる
赤字経営になろうが破綻しようが、JALや東電は潰せない。
なぜなら、代替手段がほとんどないからだ。
JR東海も、それと同じ。
自社負担だからいいではないか、では済まされなくなる。

9兆円もかけて、JR東海が、リニアで建設費を回収できるとは思えない、大きな理由は2つ。

その1
そんなに速くない
リニアは、東京ー大阪間を、67分で結ぶという。
東海道新幹線は138分。
2時間が1時間になると考えれば、早いかもしれないが、東海道新幹線のように、在来線の乗り換えが便利な、地上にホームがあるわけではない。
地下奥深くに、ホームがある
在来線からの乗り換えで、東京、大阪ともに、地下ホームの移動までに10分ずつかかったとしたら
乗っている時間が1時間でも、それにプラス20分もかかることになる。

まして、所要時間が短かったとしても、現在の東海道新幹線並みの、本数の多さがあるのかどうか
例えば、30分に1本しかないなら、所要時間が短くても、待ち時間がかかってしまい、
トータルで見たら、本数の多い東海道新幹線とたいして変わりない、なんて話になりかねない。

リニアは時速500キロだが、2010年に、中国の新幹線が、テスト走行で時速486kmを記録した。
もちろん、実際に486kmで走るわけにはいかないにしても、リニアが開通するまでに約30年間もあるわけで、
その間に、東海道新幹線の技術が進歩し、リニア並みの67分とまでいかないまでも、現状から相当短縮されている可能性もある。

リニアが、地上駅で大阪まで30分で行きます!というなら、それはすごいことかもしれないが、
東海道新幹線の時間も短縮されることが予想される中、とても「夢の超特急」というイメージからは、かけ離れた代物になる可能性が高い。
※ちなみに、上海でリニアに乗ったことはあるが、 乗ってしまうと新幹線とあまり変わりはないという印象で、リニアに乗って何か特別な感動を抱いたことはなかった。

だいたい、速さを訴えるのなら、中間駅など一切いらないはずだが、ああだこうだいわれて、結局作るハメになった
名古屋と大阪を、最短時間で結ぶための交通手段なのであって、過疎地域の通過地点に、駅など必要ないのに、
自治体との関係で、妥協せざるを得なくなり、中間駅を作るために余計なコストがかかるだけでなく、
中間駅に停車するダイヤも組み込めば、ノンストップで行く本数が少なくなってしまう。
本末転倒な話だ。

その2
需要がない。
採算が合わない。
そして何よりも、9兆円もかけて作っても、到底需要があるとは思えないことだ。

第一に、最も競合するのは、東海道新幹線。
自社の収益源から客を奪うだけでは、当然、莫大な借金をしてコストをかけた金は、回収できない。

そもそも、大阪開業する2045年には、現在の人口から、約2600万人減ると予想されている。(約1億2800万人→約1億200万人)
さらにその後は、1億人を割り、2060年には、約8700万人になる、と予想されている。
今ならまだしも、30年後、人口が今より激減した時代に、やっと完成するような代物に9兆円もかけて、代金回収できるのか。
例えば、富士山が見える絶景路線で、外国人観光客がいっぱいになるとかいうならともかく、
ほとんどが地下で、車窓の楽しみはまったくない。
暗黒車窓列車だ。

また、30年後の社会を考えると、通信技術の発達で、今よりさらに、出張需要が減っている可能性が高い。
わざわざ、ビジネスマンが大阪や東京を往復しなくても、30年後は、ネットや情報機器の発達により、たいがいのことが、移動せずに済んでしまう可能性もある。

需要激減が予想されるのに、なぜ9兆円も大借金して、驚くほど速くはないリニアを作らなければならないのか、まったく理解ができない。

一応、名目上は、東海道新幹線が老朽化しているから、改修するために、バイパス路線としてリニアを作るという。
しかし、改修が必要なら、大阪開業が30年後では手遅れだろうし、
わざわざ途中駅で下車の需要もない、コストのかかるリニアを、作る意味がわからない。
9兆円も借金できるなら、今から、早急に改修工事すればいいじゃないか。
30年後に、リニアができてからでは遅すぎる。

しかも、リニア新幹線を動かすには、在来新幹線より、3倍の電力が必要だという。
新技術で、在来新幹線より、電力が1/3で済むというメリットがあり、
311以降の、日本のエネルギー事情を考えても必要なものです、というならともかく、完全に時代に逆行している。
311が起きた今、わざわざ3倍もの電力を浪費する交通手段を、 なぜ、バカ高いコストをかけて作らなければならないのか

また、東海大地震が起きた時のための代替手段、という目的もあるらしいが、
現状の東海道新幹線の地下にリニアを作って、地震や津波被害があっても、東海地方の被災地に行くこともでき、 東京と大阪を結ぶ路線を確保するというならともかく、
山間部の迂回ルートを作っても、被災地救援には行けない
東海道新幹線が被災しても、大阪に行けるかもしれないが、別にリニアである必要はなく、飛行機だっていいわけだ。
ましてや、電力を3倍も食うリニアが、東海大地震が起きて、東海地方の発電所が被災した時に、動かせるのかは疑問だ。
そもそも、活断層を走るリニアだって、被災しかねない

・・・・・ちなみに、この狂った計画に反対しているのは、環境保全至上主義団体や、かわいそうな地元住民だけではない。
JR東海の労働組合では、ホームページに『NO!リニア』というコーナーを作り、
2009年10月から、毎週のように、リニア反対の意見を発信し、2013年8月23日までに、67個の意見が、PDFでネットにアップしている


働く人にとっては、とんでもない計画だろう。
会社が大借金して、万馬券を買うと言っているのだから、経営が悪化すれば、自分たちの給与や立場があやうくなる。
危機感を覚えるのは当然だろう。

環境がどうのとか、村がなくなるとかいう以前に、極めて国民の生活に密着した、公共性の高い事業を行っている企業が、
必然性のない事業に、兆円単位で投資をしようとしている
それが失敗すれば、最終的には、国民の負担になる
借金大国、増税大国ニッポンに、大手ゼネコンのためなのか知らないが、また1つ、負の遺産を、未来世代に嫌がらせのように押しつけよう、という話だ。

これに加えて、電磁波が危ないとか、トンネル工事で出る、膨大な残土をどうするかもよく決めていないとか、
トラブルがあった時に、地下深部から、乗客はどうやって脱出するのかとか、活断層を横断して大丈夫なのかとか、ありとあらゆる問題がある。

問題があっても、必要性があればやればいいが、必要性があるとは到底思えない。
どんなものでもリスクはある。
リスクがあるからやるなといっているのではなく、リニア計画に付随する様々なリスクを負ってまで、建設するリターンがあるとは言い難い。
そのリスクを、一民間企業だけが全責任を負い、 失敗しても国民に迷惑をかけないのならいいが、
JALや東電と同じく、どれだけずさんな経営をしたとしても、他に重要なインフラを担っているから、潰すことはできず、
最終的には、リニアの失敗は、国民に価格が転嫁されるか、税金で救済されるかのいずれかになる。


リニア計画は、あまりにも狂気の沙汰だ。
にもかかわらず、何が何でも建設せねばと、ゴリ押ししているJR東海は、
採算が合わないにもかかわらず、リニア計画を猛進させるのは、政治的な圧力があるからなのか、建設業との裏取引でもあるのだろうか?

結局、リニアも、原発やダムと同じく、必要があるかではなく、国民のためになるかではなく、
失敗した時のコストや事故というリスクを、すべて国民に押し付けて、
計画したら、絶対に見直しやストップはせず、政治的な理由から推し進めてしまえという、まがい物としか思えない。

一体、日本の狂気な行動は、何が原動力になっているのだろうか。
そりゃ、いくら増税し続けても、借金が増える一方に決まっている。
誰か、何のために、このリニアをゴリ押ししているのだろうか。

いい加減な需要予測で、特定の人間だけが儲かる目的のために、採算性のない事業に突っ込み、最終的にすべてのツケは国民が負わされるという、
詐欺投資話みたいな事業を、ゴリ押しする日本の慣習は、もういい加減やめるべき。
やるなら、ハンをついた人間に、失敗した時のツケをすべて負わせる仕組みに、改めるべきだと思う。
コメント (2)
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