BROGOSに掲載されている、かさこ氏の『リニア新幹線』についての取材記事を転載させてもらいます。
↓以下、転載はじめ(文字の強調はわたしがしました)
未来世代の不良債権リニア新幹線ゴリ押しで、JR東海がJAL・東電の二の舞になる危険
~すべては国民のツケに~
リニア新幹線計画って、こんなに狂気な計画だとは思いもしなかった……。
リニア新幹線についてどう思うか?と聞かれて、「何が何でも絶対に反対だ!」という人は少ないのではないか。
だって、税金を使うわけではなく、JR東海が全額負担するわけだし、
夢の超特急ができるなら、一度くらいは乗ってみたい、ぐらいの感覚ではないか。
私もそうだった。
このため、
「来年から建設着工予定のリニア新幹線計画を、なんとして止めたい。
しかし国民の関心はあまりに薄い。
ブログを拝見し、この問題について、ぜひブログで書いてほしい。 現地を案内しますので」
と、建設予定地の南アルプスそば、長野県大鹿村に住む、浮島仁子さんからメールをいただいた時、正直ぴんとは来なかった。
だから、
「取材はしますが、リニア反対、という記事を書くとは限りませんよ」 と返信したのだが、それでもいいというので行ってきた。
ちなみに、リニア新幹線建設にかかる費用は、約9兆円。
来年から建設をはじめ、今から14年後の2027年に、品川ー名古屋間開通。
今から32年後の2045年に、品川ー大阪間が開通予定、という計画だ。
新宿から高速バスで諏訪湖を通り、駒ケ根を通り、飯田の手間。
松川インターで降りて、そこから車で約1時間。
四方を山に囲まれた、自然豊かな、THEニッポンの田舎といった大鹿村に到着。
春になると、様々な花々が咲き乱れ、現代の桃源郷とも呼ばれる美しい村になるという。
人口は1100人あまり。
南アルプスの登山口があることから、登山客が多い。
浮島さんは、トンネル建設予定地になると思わしき周辺を、案内してくれた。
現場を見せることで、反対理由が理解できるのではないか、という狙いだろう。
「かさこさん、こんな狭い山道に、これから約10年、膨大なトンネル工事のために、狭い山道である村民の生活道路に、ダンプが行きかうことになるんですよ。
怖くて、こんなところに住めなくなってしまう。実質上、村人は住めなくなってしまう」
「この村は、中央構造線が南北に縦断しており、周囲の山は脆弱な地質のため、大崩壊地や地すべりが起きている。
こんな危険な場所にトンネルを作ったら、さらに危険な場所になりかねない」 と、
村を貫く小渋川沿いの山々を見て回り、崩落、地滑りが起きている様子を、度々、写真に撮ってほしいと言われた。
「リニア反対を訴えるには、言葉だけでなく写真が重要。
私が撮影した写真では、こんなところにリニアを建設するのはおかしい、ということが伝わらない。
かさこさんが撮影してくれれば、多くの方に、建設計画の無謀さを訴えられるのではないか」との狙いもあって、私に依頼したという。
確かに、地元住民にとっては死活問題だ。
桃源郷の村にダンプが行きかい、地滑りが起きている山で、トンネル工事を10年もはじめるなんて、とんでもないことだと。
でも、と思う。
日本社会全体の利益を考えた時に、もし、東京と大阪を短時間で結ぶ交通インフラが、何が何でも必要ならば、
多少、小さな村が潰れてしまうことは、致し方がない。
小さな村を潰さないことを最優先にしたら、日本全国、どこにも道路や鉄道は作れなくなってしまう。
もちろん、先に住んでいた人を追い出すわけだから、きちんとした補償をするなり、その事業の必要性を、丁寧に説明することは欠かせない。
また、地滑りが起きている山だからといって、地下に掘るトンネルが危ないのかは、正直、私にはよくわからない。
そもそも、見せられた大崩落地の一つは、1961年(昭和36年)に起きた集中豪雨によるものだ。
50年以上も前の話だ。
確かに、トンネルを掘るのは、大環境破壊かもしれない。
でも私は、環境保全至上主義者ではない。
そんなに環境が大事なら、人間が死ぬしかない。
人間は、多かれ少なかれ、環境を壊して暮らしている。
すべてにおいて環境を最優先したら、人間は生活できなくなり、何も作れなくなってしまう。
リニアのトンネルが環境破壊なら、道路のトンネルだって、鉄道のトンネルだって、環境破壊でやめるべきだろう。
重要なことは、人間に悪影響を与えない、環境破壊をしないこと。
生態系が根本的に変わって、人間が暮らせなくなってしまうような、環境破壊をしないことではないか。
だから、環境に取り返しのつかない、破壊的な被害を与える原発は、何が何でも反対だが、CO2を多少出そうが、火力発電所にまで反対はしない。
原発反対派の中には、「火力発電所も環境破壊だ」というが、だったら電気使わず生活しろよ、と言いたくなる。
多少の環境破壊になったとしても、致命的な環境破壊にはならず、人間社会が便利になるなら、それに反対する理由はない。
だから私は、地元の村人がかわいそうだから、リニアはやめるべきだ、とはまったく思わない。
逆に、村人の中には、リニア建設であぶく銭を稼げて、喜んでいる人もいる。
二束三文の田畑が、建設予定地の資材置き場になると高値で売れるとか、
工事関係者が、この先何年も宿泊して安泰だとか、
地元の建設業に、大きな仕事が入ってくる可能性もあるだろう。
地元には、「反対なんかして金儲けのジャマをするな!」という意見もあるだろう。
また、環境破壊だからやめるべきだ、とも思わない。
例えば東海道新幹線だって、トンネルいっぱい作って環境破壊しているわけだが、 環境破壊しているから電車を止めろ、という人はいないだろう。
日本社会には欠かせないインフラだからだ。
もし、リニアもそうであるなら、重大な環境破壊を起こさない限り、 何が何でも反対する必要はない。
でも、浮島さんから、リニア計画についていろんな話を聞き、また、橋山禮次郎著の「必要か、リニア新幹線」という本を読んだりすると、
今までたいした関心もなかったリニア建設だったが、これは、何が何でも反対しないとまずい代物ではないか、と思えてきた。
その理由はズバリ、どうやっても必要性が見い出せず、明らかにJR東海の収益悪化をもたらし、それが最終的には、国民の負担になる不良事業だからだ。
はっきりいって、リニア建設計画は狂っている。
例えるなら、JR東海が9兆円の借金をして、万馬券の馬に全額賭けます、といっているような話だ。
あまりにバカげていて、建設する意味がわからない。
ただ、このリニア計画がミソなのは、税金ではなく、JR東海が、全額負担して事業を行うことだ。
国民の血税を使うわけじゃない。
JR東海がやるんだからいいだろうと。
でも、果たしてそうだろうか?
リニア計画が、どっかのベンチャー企業がやるならともかく、
国民にとってなくてはならない生活の足を、ほぼ独占的に保有している、極めて公共性の高い鉄道会社がやるわけだ。
9兆円もかけてリニア作ったのに、まったく採算が合わずに赤字になってしまえば、その負担は、通常のJR東海の運賃に、上乗せされる形になる。
失敗が目に見えている大バクチをしたせいで、そのツケは、結局は、国民に降りかかってくるのだ。
リニアが失敗してその会社が倒産するなら、国民には何の被害もない。
融資したアホな銀行が、不良債権を抱え込むだけだ。
しかし、そうではない。
そのツケは、国民の生活の足に上乗せされるのだ。
JALの破綻や、東京電力の“破綻”と同じことだ。
ずさんな経営で、かけるべきところにお金をかけず、いい加減なところに金をかけ、経営が悪化したら、そのツケは国民が背負わされる。
赤字経営になろうが破綻しようが、JALや東電は潰せない。
なぜなら、代替手段がほとんどないからだ。
JR東海も、それと同じ。
自社負担だからいいではないか、では済まされなくなる。
9兆円もかけて、JR東海が、リニアで建設費を回収できるとは思えない、大きな理由は2つ。
その1
そんなに速くない。
リニアは、東京ー大阪間を、67分で結ぶという。
東海道新幹線は138分。
2時間が1時間になると考えれば、早いかもしれないが、東海道新幹線のように、在来線の乗り換えが便利な、地上にホームがあるわけではない。
地下奥深くに、ホームがある。
在来線からの乗り換えで、東京、大阪ともに、地下ホームの移動までに10分ずつかかったとしたら、
乗っている時間が1時間でも、それにプラス20分もかかることになる。
まして、所要時間が短かったとしても、現在の東海道新幹線並みの、本数の多さがあるのかどうか。
例えば、30分に1本しかないなら、所要時間が短くても、待ち時間がかかってしまい、
トータルで見たら、本数の多い東海道新幹線とたいして変わりない、なんて話になりかねない。
リニアは時速500キロだが、2010年に、中国の新幹線が、テスト走行で時速486kmを記録した。
もちろん、実際に486kmで走るわけにはいかないにしても、リニアが開通するまでに約30年間もあるわけで、
その間に、東海道新幹線の技術が進歩し、リニア並みの67分とまでいかないまでも、現状から相当短縮されている可能性もある。
リニアが、地上駅で大阪まで30分で行きます!というなら、それはすごいことかもしれないが、
東海道新幹線の時間も短縮されることが予想される中、とても「夢の超特急」というイメージからは、かけ離れた代物になる可能性が高い。
※ちなみに、上海でリニアに乗ったことはあるが、 乗ってしまうと新幹線とあまり変わりはないという印象で、リニアに乗って何か特別な感動を抱いたことはなかった。
だいたい、速さを訴えるのなら、中間駅など一切いらないはずだが、ああだこうだいわれて、結局作るハメになった。
名古屋と大阪を、最短時間で結ぶための交通手段なのであって、過疎地域の通過地点に、駅など必要ないのに、
自治体との関係で、妥協せざるを得なくなり、中間駅を作るために余計なコストがかかるだけでなく、
中間駅に停車するダイヤも組み込めば、ノンストップで行く本数が少なくなってしまう。
本末転倒な話だ。
その2
需要がない。
採算が合わない。
そして何よりも、9兆円もかけて作っても、到底需要があるとは思えないことだ。
第一に、最も競合するのは、東海道新幹線。
自社の収益源から客を奪うだけでは、当然、莫大な借金をしてコストをかけた金は、回収できない。
そもそも、大阪開業する2045年には、現在の人口から、約2600万人減ると予想されている。(約1億2800万人→約1億200万人)
さらにその後は、1億人を割り、2060年には、約8700万人になる、と予想されている。
今ならまだしも、30年後、人口が今より激減した時代に、やっと完成するような代物に9兆円もかけて、代金回収できるのか。
例えば、富士山が見える絶景路線で、外国人観光客がいっぱいになるとかいうならともかく、
ほとんどが地下で、車窓の楽しみはまったくない。
暗黒車窓列車だ。
また、30年後の社会を考えると、通信技術の発達で、今よりさらに、出張需要が減っている可能性が高い。
わざわざ、ビジネスマンが大阪や東京を往復しなくても、30年後は、ネットや情報機器の発達により、たいがいのことが、移動せずに済んでしまう可能性もある。
需要激減が予想されるのに、なぜ9兆円も大借金して、驚くほど速くはないリニアを作らなければならないのか、まったく理解ができない。
一応、名目上は、東海道新幹線が老朽化しているから、改修するために、バイパス路線としてリニアを作るという。
しかし、改修が必要なら、大阪開業が30年後では手遅れだろうし、
わざわざ途中駅で下車の需要もない、コストのかかるリニアを、作る意味がわからない。
9兆円も借金できるなら、今から、早急に改修工事すればいいじゃないか。
30年後に、リニアができてからでは遅すぎる。
しかも、リニア新幹線を動かすには、在来新幹線より、3倍の電力が必要だという。
新技術で、在来新幹線より、電力が1/3で済むというメリットがあり、
311以降の、日本のエネルギー事情を考えても必要なものです、というならともかく、完全に時代に逆行している。
311が起きた今、わざわざ3倍もの電力を浪費する交通手段を、 なぜ、バカ高いコストをかけて作らなければならないのか。
また、東海大地震が起きた時のための代替手段、という目的もあるらしいが、
現状の東海道新幹線の地下にリニアを作って、地震や津波被害があっても、東海地方の被災地に行くこともでき、 東京と大阪を結ぶ路線を確保するというならともかく、
山間部の迂回ルートを作っても、被災地救援には行けない。
東海道新幹線が被災しても、大阪に行けるかもしれないが、別にリニアである必要はなく、飛行機だっていいわけだ。
ましてや、電力を3倍も食うリニアが、東海大地震が起きて、東海地方の発電所が被災した時に、動かせるのかは疑問だ。
そもそも、活断層を走るリニアだって、被災しかねない。
・・・・・ちなみに、この狂った計画に反対しているのは、環境保全至上主義団体や、かわいそうな地元住民だけではない。
JR東海の労働組合では、ホームページに『NO!リニア』というコーナーを作り、
2009年10月から、毎週のように、リニア反対の意見を発信し、2013年8月23日までに、67個の意見が、PDFでネットにアップしている。
働く人にとっては、とんでもない計画だろう。
会社が大借金して、万馬券を買うと言っているのだから、経営が悪化すれば、自分たちの給与や立場があやうくなる。
危機感を覚えるのは当然だろう。
環境がどうのとか、村がなくなるとかいう以前に、極めて国民の生活に密着した、公共性の高い事業を行っている企業が、
必然性のない事業に、兆円単位で投資をしようとしている。
それが失敗すれば、最終的には、国民の負担になる。
借金大国、増税大国ニッポンに、大手ゼネコンのためなのか知らないが、また1つ、負の遺産を、未来世代に嫌がらせのように押しつけよう、という話だ。
これに加えて、電磁波が危ないとか、トンネル工事で出る、膨大な残土をどうするかもよく決めていないとか、
トラブルがあった時に、地下深部から、乗客はどうやって脱出するのかとか、活断層を横断して大丈夫なのかとか、ありとあらゆる問題がある。
問題があっても、必要性があればやればいいが、必要性があるとは到底思えない。
どんなものでもリスクはある。
リスクがあるからやるなといっているのではなく、リニア計画に付随する様々なリスクを負ってまで、建設するリターンがあるとは言い難い。
そのリスクを、一民間企業だけが全責任を負い、 失敗しても国民に迷惑をかけないのならいいが、
JALや東電と同じく、どれだけずさんな経営をしたとしても、他に重要なインフラを担っているから、潰すことはできず、
最終的には、リニアの失敗は、国民に価格が転嫁されるか、税金で救済されるかのいずれかになる。
リニア計画は、あまりにも狂気の沙汰だ。
にもかかわらず、何が何でも建設せねばと、ゴリ押ししているJR東海は、
採算が合わないにもかかわらず、リニア計画を猛進させるのは、政治的な圧力があるからなのか、建設業との裏取引でもあるのだろうか?
結局、リニアも、原発やダムと同じく、必要があるかではなく、国民のためになるかではなく、
失敗した時のコストや事故というリスクを、すべて国民に押し付けて、
計画したら、絶対に見直しやストップはせず、政治的な理由から推し進めてしまえという、まがい物としか思えない。
一体、日本の狂気な行動は、何が原動力になっているのだろうか。
そりゃ、いくら増税し続けても、借金が増える一方に決まっている。
誰か、何のために、このリニアをゴリ押ししているのだろうか。
いい加減な需要予測で、特定の人間だけが儲かる目的のために、採算性のない事業に突っ込み、最終的にすべてのツケは国民が負わされるという、
詐欺投資話みたいな事業を、ゴリ押しする日本の慣習は、もういい加減やめるべき。
やるなら、ハンをついた人間に、失敗した時のツケをすべて負わせる仕組みに、改めるべきだと思う。
↓以下、転載はじめ(文字の強調はわたしがしました)
未来世代の不良債権リニア新幹線ゴリ押しで、JR東海がJAL・東電の二の舞になる危険
~すべては国民のツケに~
リニア新幹線計画って、こんなに狂気な計画だとは思いもしなかった……。
リニア新幹線についてどう思うか?と聞かれて、「何が何でも絶対に反対だ!」という人は少ないのではないか。
だって、税金を使うわけではなく、JR東海が全額負担するわけだし、
夢の超特急ができるなら、一度くらいは乗ってみたい、ぐらいの感覚ではないか。
私もそうだった。
このため、
「来年から建設着工予定のリニア新幹線計画を、なんとして止めたい。
しかし国民の関心はあまりに薄い。
ブログを拝見し、この問題について、ぜひブログで書いてほしい。 現地を案内しますので」
と、建設予定地の南アルプスそば、長野県大鹿村に住む、浮島仁子さんからメールをいただいた時、正直ぴんとは来なかった。
だから、
「取材はしますが、リニア反対、という記事を書くとは限りませんよ」 と返信したのだが、それでもいいというので行ってきた。
ちなみに、リニア新幹線建設にかかる費用は、約9兆円。
来年から建設をはじめ、今から14年後の2027年に、品川ー名古屋間開通。
今から32年後の2045年に、品川ー大阪間が開通予定、という計画だ。
新宿から高速バスで諏訪湖を通り、駒ケ根を通り、飯田の手間。
松川インターで降りて、そこから車で約1時間。
四方を山に囲まれた、自然豊かな、THEニッポンの田舎といった大鹿村に到着。
春になると、様々な花々が咲き乱れ、現代の桃源郷とも呼ばれる美しい村になるという。
人口は1100人あまり。
南アルプスの登山口があることから、登山客が多い。
浮島さんは、トンネル建設予定地になると思わしき周辺を、案内してくれた。
現場を見せることで、反対理由が理解できるのではないか、という狙いだろう。
「かさこさん、こんな狭い山道に、これから約10年、膨大なトンネル工事のために、狭い山道である村民の生活道路に、ダンプが行きかうことになるんですよ。
怖くて、こんなところに住めなくなってしまう。実質上、村人は住めなくなってしまう」
「この村は、中央構造線が南北に縦断しており、周囲の山は脆弱な地質のため、大崩壊地や地すべりが起きている。
こんな危険な場所にトンネルを作ったら、さらに危険な場所になりかねない」 と、
村を貫く小渋川沿いの山々を見て回り、崩落、地滑りが起きている様子を、度々、写真に撮ってほしいと言われた。
「リニア反対を訴えるには、言葉だけでなく写真が重要。
私が撮影した写真では、こんなところにリニアを建設するのはおかしい、ということが伝わらない。
かさこさんが撮影してくれれば、多くの方に、建設計画の無謀さを訴えられるのではないか」との狙いもあって、私に依頼したという。
確かに、地元住民にとっては死活問題だ。
桃源郷の村にダンプが行きかい、地滑りが起きている山で、トンネル工事を10年もはじめるなんて、とんでもないことだと。
でも、と思う。
日本社会全体の利益を考えた時に、もし、東京と大阪を短時間で結ぶ交通インフラが、何が何でも必要ならば、
多少、小さな村が潰れてしまうことは、致し方がない。
小さな村を潰さないことを最優先にしたら、日本全国、どこにも道路や鉄道は作れなくなってしまう。
もちろん、先に住んでいた人を追い出すわけだから、きちんとした補償をするなり、その事業の必要性を、丁寧に説明することは欠かせない。
また、地滑りが起きている山だからといって、地下に掘るトンネルが危ないのかは、正直、私にはよくわからない。
そもそも、見せられた大崩落地の一つは、1961年(昭和36年)に起きた集中豪雨によるものだ。
50年以上も前の話だ。
確かに、トンネルを掘るのは、大環境破壊かもしれない。
でも私は、環境保全至上主義者ではない。
そんなに環境が大事なら、人間が死ぬしかない。
人間は、多かれ少なかれ、環境を壊して暮らしている。
すべてにおいて環境を最優先したら、人間は生活できなくなり、何も作れなくなってしまう。
リニアのトンネルが環境破壊なら、道路のトンネルだって、鉄道のトンネルだって、環境破壊でやめるべきだろう。
重要なことは、人間に悪影響を与えない、環境破壊をしないこと。
生態系が根本的に変わって、人間が暮らせなくなってしまうような、環境破壊をしないことではないか。
だから、環境に取り返しのつかない、破壊的な被害を与える原発は、何が何でも反対だが、CO2を多少出そうが、火力発電所にまで反対はしない。
原発反対派の中には、「火力発電所も環境破壊だ」というが、だったら電気使わず生活しろよ、と言いたくなる。
多少の環境破壊になったとしても、致命的な環境破壊にはならず、人間社会が便利になるなら、それに反対する理由はない。
だから私は、地元の村人がかわいそうだから、リニアはやめるべきだ、とはまったく思わない。
逆に、村人の中には、リニア建設であぶく銭を稼げて、喜んでいる人もいる。
二束三文の田畑が、建設予定地の資材置き場になると高値で売れるとか、
工事関係者が、この先何年も宿泊して安泰だとか、
地元の建設業に、大きな仕事が入ってくる可能性もあるだろう。
地元には、「反対なんかして金儲けのジャマをするな!」という意見もあるだろう。
また、環境破壊だからやめるべきだ、とも思わない。
例えば東海道新幹線だって、トンネルいっぱい作って環境破壊しているわけだが、 環境破壊しているから電車を止めろ、という人はいないだろう。
日本社会には欠かせないインフラだからだ。
もし、リニアもそうであるなら、重大な環境破壊を起こさない限り、 何が何でも反対する必要はない。
でも、浮島さんから、リニア計画についていろんな話を聞き、また、橋山禮次郎著の「必要か、リニア新幹線」という本を読んだりすると、
今までたいした関心もなかったリニア建設だったが、これは、何が何でも反対しないとまずい代物ではないか、と思えてきた。
その理由はズバリ、どうやっても必要性が見い出せず、明らかにJR東海の収益悪化をもたらし、それが最終的には、国民の負担になる不良事業だからだ。
はっきりいって、リニア建設計画は狂っている。
例えるなら、JR東海が9兆円の借金をして、万馬券の馬に全額賭けます、といっているような話だ。
あまりにバカげていて、建設する意味がわからない。
ただ、このリニア計画がミソなのは、税金ではなく、JR東海が、全額負担して事業を行うことだ。
国民の血税を使うわけじゃない。
JR東海がやるんだからいいだろうと。
でも、果たしてそうだろうか?
リニア計画が、どっかのベンチャー企業がやるならともかく、
国民にとってなくてはならない生活の足を、ほぼ独占的に保有している、極めて公共性の高い鉄道会社がやるわけだ。
9兆円もかけてリニア作ったのに、まったく採算が合わずに赤字になってしまえば、その負担は、通常のJR東海の運賃に、上乗せされる形になる。
失敗が目に見えている大バクチをしたせいで、そのツケは、結局は、国民に降りかかってくるのだ。
リニアが失敗してその会社が倒産するなら、国民には何の被害もない。
融資したアホな銀行が、不良債権を抱え込むだけだ。
しかし、そうではない。
そのツケは、国民の生活の足に上乗せされるのだ。
JALの破綻や、東京電力の“破綻”と同じことだ。
ずさんな経営で、かけるべきところにお金をかけず、いい加減なところに金をかけ、経営が悪化したら、そのツケは国民が背負わされる。
赤字経営になろうが破綻しようが、JALや東電は潰せない。
なぜなら、代替手段がほとんどないからだ。
JR東海も、それと同じ。
自社負担だからいいではないか、では済まされなくなる。
9兆円もかけて、JR東海が、リニアで建設費を回収できるとは思えない、大きな理由は2つ。
その1
そんなに速くない。
リニアは、東京ー大阪間を、67分で結ぶという。
東海道新幹線は138分。
2時間が1時間になると考えれば、早いかもしれないが、東海道新幹線のように、在来線の乗り換えが便利な、地上にホームがあるわけではない。
地下奥深くに、ホームがある。
在来線からの乗り換えで、東京、大阪ともに、地下ホームの移動までに10分ずつかかったとしたら、
乗っている時間が1時間でも、それにプラス20分もかかることになる。
まして、所要時間が短かったとしても、現在の東海道新幹線並みの、本数の多さがあるのかどうか。
例えば、30分に1本しかないなら、所要時間が短くても、待ち時間がかかってしまい、
トータルで見たら、本数の多い東海道新幹線とたいして変わりない、なんて話になりかねない。
リニアは時速500キロだが、2010年に、中国の新幹線が、テスト走行で時速486kmを記録した。
もちろん、実際に486kmで走るわけにはいかないにしても、リニアが開通するまでに約30年間もあるわけで、
その間に、東海道新幹線の技術が進歩し、リニア並みの67分とまでいかないまでも、現状から相当短縮されている可能性もある。
リニアが、地上駅で大阪まで30分で行きます!というなら、それはすごいことかもしれないが、
東海道新幹線の時間も短縮されることが予想される中、とても「夢の超特急」というイメージからは、かけ離れた代物になる可能性が高い。
※ちなみに、上海でリニアに乗ったことはあるが、 乗ってしまうと新幹線とあまり変わりはないという印象で、リニアに乗って何か特別な感動を抱いたことはなかった。
だいたい、速さを訴えるのなら、中間駅など一切いらないはずだが、ああだこうだいわれて、結局作るハメになった。
名古屋と大阪を、最短時間で結ぶための交通手段なのであって、過疎地域の通過地点に、駅など必要ないのに、
自治体との関係で、妥協せざるを得なくなり、中間駅を作るために余計なコストがかかるだけでなく、
中間駅に停車するダイヤも組み込めば、ノンストップで行く本数が少なくなってしまう。
本末転倒な話だ。
その2
需要がない。
採算が合わない。
そして何よりも、9兆円もかけて作っても、到底需要があるとは思えないことだ。
第一に、最も競合するのは、東海道新幹線。
自社の収益源から客を奪うだけでは、当然、莫大な借金をしてコストをかけた金は、回収できない。
そもそも、大阪開業する2045年には、現在の人口から、約2600万人減ると予想されている。(約1億2800万人→約1億200万人)
さらにその後は、1億人を割り、2060年には、約8700万人になる、と予想されている。
今ならまだしも、30年後、人口が今より激減した時代に、やっと完成するような代物に9兆円もかけて、代金回収できるのか。
例えば、富士山が見える絶景路線で、外国人観光客がいっぱいになるとかいうならともかく、
ほとんどが地下で、車窓の楽しみはまったくない。
暗黒車窓列車だ。
また、30年後の社会を考えると、通信技術の発達で、今よりさらに、出張需要が減っている可能性が高い。
わざわざ、ビジネスマンが大阪や東京を往復しなくても、30年後は、ネットや情報機器の発達により、たいがいのことが、移動せずに済んでしまう可能性もある。
需要激減が予想されるのに、なぜ9兆円も大借金して、驚くほど速くはないリニアを作らなければならないのか、まったく理解ができない。
一応、名目上は、東海道新幹線が老朽化しているから、改修するために、バイパス路線としてリニアを作るという。
しかし、改修が必要なら、大阪開業が30年後では手遅れだろうし、
わざわざ途中駅で下車の需要もない、コストのかかるリニアを、作る意味がわからない。
9兆円も借金できるなら、今から、早急に改修工事すればいいじゃないか。
30年後に、リニアができてからでは遅すぎる。
しかも、リニア新幹線を動かすには、在来新幹線より、3倍の電力が必要だという。
新技術で、在来新幹線より、電力が1/3で済むというメリットがあり、
311以降の、日本のエネルギー事情を考えても必要なものです、というならともかく、完全に時代に逆行している。
311が起きた今、わざわざ3倍もの電力を浪費する交通手段を、 なぜ、バカ高いコストをかけて作らなければならないのか。
また、東海大地震が起きた時のための代替手段、という目的もあるらしいが、
現状の東海道新幹線の地下にリニアを作って、地震や津波被害があっても、東海地方の被災地に行くこともでき、 東京と大阪を結ぶ路線を確保するというならともかく、
山間部の迂回ルートを作っても、被災地救援には行けない。
東海道新幹線が被災しても、大阪に行けるかもしれないが、別にリニアである必要はなく、飛行機だっていいわけだ。
ましてや、電力を3倍も食うリニアが、東海大地震が起きて、東海地方の発電所が被災した時に、動かせるのかは疑問だ。
そもそも、活断層を走るリニアだって、被災しかねない。
・・・・・ちなみに、この狂った計画に反対しているのは、環境保全至上主義団体や、かわいそうな地元住民だけではない。
JR東海の労働組合では、ホームページに『NO!リニア』というコーナーを作り、
2009年10月から、毎週のように、リニア反対の意見を発信し、2013年8月23日までに、67個の意見が、PDFでネットにアップしている。
働く人にとっては、とんでもない計画だろう。
会社が大借金して、万馬券を買うと言っているのだから、経営が悪化すれば、自分たちの給与や立場があやうくなる。
危機感を覚えるのは当然だろう。
環境がどうのとか、村がなくなるとかいう以前に、極めて国民の生活に密着した、公共性の高い事業を行っている企業が、
必然性のない事業に、兆円単位で投資をしようとしている。
それが失敗すれば、最終的には、国民の負担になる。
借金大国、増税大国ニッポンに、大手ゼネコンのためなのか知らないが、また1つ、負の遺産を、未来世代に嫌がらせのように押しつけよう、という話だ。
これに加えて、電磁波が危ないとか、トンネル工事で出る、膨大な残土をどうするかもよく決めていないとか、
トラブルがあった時に、地下深部から、乗客はどうやって脱出するのかとか、活断層を横断して大丈夫なのかとか、ありとあらゆる問題がある。
問題があっても、必要性があればやればいいが、必要性があるとは到底思えない。
どんなものでもリスクはある。
リスクがあるからやるなといっているのではなく、リニア計画に付随する様々なリスクを負ってまで、建設するリターンがあるとは言い難い。
そのリスクを、一民間企業だけが全責任を負い、 失敗しても国民に迷惑をかけないのならいいが、
JALや東電と同じく、どれだけずさんな経営をしたとしても、他に重要なインフラを担っているから、潰すことはできず、
最終的には、リニアの失敗は、国民に価格が転嫁されるか、税金で救済されるかのいずれかになる。
リニア計画は、あまりにも狂気の沙汰だ。
にもかかわらず、何が何でも建設せねばと、ゴリ押ししているJR東海は、
採算が合わないにもかかわらず、リニア計画を猛進させるのは、政治的な圧力があるからなのか、建設業との裏取引でもあるのだろうか?
結局、リニアも、原発やダムと同じく、必要があるかではなく、国民のためになるかではなく、
失敗した時のコストや事故というリスクを、すべて国民に押し付けて、
計画したら、絶対に見直しやストップはせず、政治的な理由から推し進めてしまえという、まがい物としか思えない。
一体、日本の狂気な行動は、何が原動力になっているのだろうか。
そりゃ、いくら増税し続けても、借金が増える一方に決まっている。
誰か、何のために、このリニアをゴリ押ししているのだろうか。
いい加減な需要予測で、特定の人間だけが儲かる目的のために、採算性のない事業に突っ込み、最終的にすべてのツケは国民が負わされるという、
詐欺投資話みたいな事業を、ゴリ押しする日本の慣習は、もういい加減やめるべき。
やるなら、ハンをついた人間に、失敗した時のツケをすべて負わせる仕組みに、改めるべきだと思う。