わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸63(玉置 保夫)

2012-03-03 22:30:53 | 現代陶芸と工芸家達
「赤志野」と「志野釉掛分」の技法で、志野に新しい色と感覚を持ち込んだ人に、岐阜県在住の

玉置保夫氏がいます。

1) 玉置保夫(たまおき やすお): 1941年(昭和16年)~

  ① 経歴

   ) 岐阜県多治見市市之蔵町で、玉置謙一氏の六男として生まれます。

      玉置家は代々続く窯元の家ですが、長男ではないので、家を継ぐ必要も無く、高校では

      図案科に通い、グラフィックデザイナーを目指して美術大学に挑戦したそうです。

   ) 1960年 県立多治見工業高校図案化を卒業します。

      浪人中、東京の展覧会で、桃山時代の美濃の織部に出会い、その素晴らしさに感動し、

      美大受験を止め、翌年県の陶磁器試験場に入所します。

      試験場の場長は五代加藤幸兵衛氏で、技師には加藤孝造氏らがいました。彼らに教わり

      師事する事に成ります。(1964年 同所の試験科2年と工芸科の1年の課程を終了します。)

   ) 1963年 多治見市美術展で「志野花器」が最高の市展賞を受け、陶芸界にデビューします。

      1965年 第十二回日本伝統工芸展で「鉄釉花器」で初入選を果たし、以後二十数回入選を

      繰り返します。1986年に日本工芸会正会員に成っています。

      1968年 東京三越本店、名古屋名鉄百貨店、大阪高島屋、京都高島屋などで、個展を多数

      開催しています。

   ) 東海伝統工芸展で最高賞、日本陶磁協会賞、第一回国際陶磁フェスティバル審査員特別賞、

      岐阜県芸術文化活動等特別奨励賞など、多数の賞を受賞しています。

      1995年 多治見市芸術文化部門で功労表彰されます。

      2002年「織部」で多治見市指定重要無形文化財保持者に認定されます。

  ② 玉置保夫氏の陶芸

  ) 志野釉の掛分

    一般に志野釉の施釉方法には、単に志野釉を掛ける方法と、釉を掛ける前に鬼板で色を着け

    志野釉を掛けて、赤褐色に発色させたり、鼠志野の様に白抜きの地に文様を描いたりした後、

    全体に志野釉を掛ける方法が取られていました。

   a) 玉置氏の掛分は、複雑な工程を得て、白、赤、黒褐色に発色する様に施釉しています。

     文様は主に波状文を選んでいます。作品は丸形や円筒形が多く、周囲を取り巻く様な波文で

     表現されています。

   b) 施釉方法は、三段階に掛分ける方法で以下の様な工程を辿ります。

    イ) 轆轤成形で作品を作ります。

    ロ) 赤化粧土を掛ける。

    ハ) 水蝋又は塩化ビニール液を波状に塗り、釉が掛からない様にする。この部分が黒褐色に

       発色します。

    ニ) 志野釉を全体に掛けます。

    ホ) 志野釉が乾くのを待ち、再度蝋で波紋を描きます。この部分は、一度塗りの状態となり

       赤色に発色します。

    へ) もう一度志野釉を全体に掛けまし、焼成します。

    即ち、一重掛けの黒褐色、二重掛けの赤色、三重掛けの白色と三色が出現します。

   c) 主な作品に、「志野掛分壺」(1981、82年)、「志野掛分花生」(1982年)、「盤・玉垂」(1970年)

     などがあります。

  ) 赤志野(紅志野)について

   a) 赤志野は器に一度「鬼板」又は「鉄釉」を施し、刷毛などで取り除きます、残った鉄分が

     模様となり、上から志野釉薬を駆け焼成すると、鉄分の残っている箇所が赤く発色し、

     取り除いた箇所が志野釉だけとなり、白色になります。白と赤の二色が発色します。

   b) 主な作品に「赤志野手付鉢」、「紅志野茶腕」等があります。

  ) 織部に付いて

   a) 2008(平成20)年に、「織部」で岐阜県の重要無形文化財保持者に認定されれます。

     従来の桃山時代の織部とは異なる「今織部」を創り上げたと言われています。

   b) 主な作品に「織部削壺」(1983年)、「織部六角面取鉢」(1974年)、「織部壺」(1975年)などが

     ありその造詣美は、従来の織部作品とは大きく変わっています。

  ) 展覧会用の作品だけでなく、玉置氏の主宰する玉山窯は、桃山時代からの遺産である志野、

     鼠志野、織部、黄瀬戸等の伝統的な作品と共に、新しい茶碗、色籠、茶入などの茶陶に

     新たな発色技術が組み込まれています。

   参考文献: 「現代日本の陶芸」第九巻 (株)講談社

次回(鈴木蔵氏)に続きます。
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