わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸65(三代山田常山1)

2012-03-06 21:52:30 | 現代陶芸と工芸家達
愛知県知多半島にある常滑市は、古くから常滑焼陶器の産地で、平安時代より須恵器を焼いています。

現在常滑で、急須一筋に作っているのが山田家で、特に三代常山は人間国宝に認定されています。

1) 三代山田常山(やまだ じょうざん) 本名は稔: 1924年(大正13) ~ 2005年(平成17)

 ① 経歴

  ) 愛知県常滑市に、二代山田常山の子として生まれます。

     初代の祖父、二代の父も常滑焼の急須作りの名匠と言われた方達です。

  ) 1941年 愛知県立常滑工業学校窯業科卒業します。在学中より初代山田常山や二代に師事し、

     急須造りを中心に陶芸全般を習います。

  ) 1958年 第5回日本伝統工芸展で初入選を果たします。以後毎年の様に出品を繰り返します。

     同時に、ブリュッセル万国博覧会にてグランプリを受賞しています。

     1959年 第7回生活工芸展 第一席 朝日賞受賞。

     1961年 三代 山田常山を襲名します。

     1963年 日本工芸会正会員になります。

  ) 1973年 フランス 第3回ビエンナーレ国際陶芸展名誉最高大賞を受賞。

     1975年 常滑「手造り急須」の会、会長に就任しています。

     1993年 日本陶磁協会賞受賞。

     1994年 愛知県指定「朱泥急須」で無形文化財保持者に認定されます。

     1998年 常滑焼(急須)で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されます。

  ② 常滑焼の急須について

   ) 急須の基本形は茶銚(ちゃちょう)、茶注(ちゃちゅう)、絞り出し茶注(宝瓶)の

      3種類があります。

    a) 茶銚は、中国以来の伝統的な形で、注ぎ口と把っ手(とって)が一直線になっています。

      即ち、持ち手が後ろに付く後手の急須です。

    b) 茶注は、把っ手を横に付く横手や、上に付く形の物で土瓶型や薬缶風の形をしています。

      和風の感じになります。

    c) 絞り出し茶注(宝瓶=ほうびん)は、把手と茶漉しを省略した、玉露用の急須です。

    d) その他お湯を冷ます「湯冷まし」も造られています。形は玉露用の急須に似ています。

   ) 煎茶の習慣は、江戸前期に来日した、隠元禅師によってもたらされたと言われています。

      煎茶用の朱泥の茶器や急須は、明代の中国江蘇省の宜興窯(ぎこうよう)で盛んに

      作られました。作品は、茶壷、茶注、火鉢、植木鉢などが焼かれていた様です。

      土は、赤い色の朱泥(しゅでい)の他、紫泥(しでい)、烏泥(うでい)、梨皮泥(りひでい)

      白泥など、色や器肌が異なる物があります。

     a) 紫泥は金属成分を加えて、茶色に発色させた物で、烏泥はその量を多くして、黒い色を

       出しています。

     b) 梨皮は朱泥に砂礫や、異なる色の土を練り込み、梨の皮の様にザラザラした手触りに

      成ります。

   ) 我が国で朱泥が完成したのは、安政元年(1854年)に常滑の杉江寿門によります。

      初期の朱泥は、田土を使い鉄分の多い山土を25%混ぜ、水簸(すいひ)して使った様です。

      焼き肌が滑らかに成る様に、水漉しを繰り返し、粘りを出す為に甕に入れて寝かせてから

      使用します。 1950年頃からは、木節粘土に弁柄を加え、更に細かくした長石を混ぜ合わせて

      土を作っています。

   ) 明治11年に「宜興窯」から招かれた、中国の文人の金子恆氏が、常滑に数ヶ月滞在し、

    朱泥茶注の製法と印刻文の装飾技術を、杉江寿門らに教えます。

    初代、二代常山は、杉江寿門の流れを汲み、この宜興窯に倣った作品を作っています。

  ③ 三代常山の陶芸

    初代と二代常山の元で轆轤挽きによる、朱泥急須を中心とした伝統技法を修行します。

    その後、朱泥、烏泥、梨皮泥等の多彩な素地の用法に応じ、水簸(すいひ)による坯土の

    調整から轆轤による繊細な成形工程を経て、焼成、仕上げに至る一貫制作の全ての工程に

    精通していきます。

    彼は伝統に基きながら、土の色、形など様々な工夫を凝らし、新しい作品を制作しています。

   ) 轆轤による成形(一般家庭で使われている、常滑の急須は鋳込みによる型成形です。)

     作品は薄造りで轆轤成形して作られています。胴、蓋、注ぎ口、把手を別々に造り、

     バランス良く組み立てます。尚、轆轤や鋳込み方法以外に、手捻りでも作られています。

   ) 道具はほとんど使わず、親指の爪を使って「蓋受けを」作っています。

     「絶対尻漏れしない急須」の造り方は、山田家に代々伝わる秘伝との事です。

   ) 常山氏は急須を中心に制作を続けます。

      作成年代は「昭和50〜60年」が多く、「常滑の茶注」「朱泥急須」「梨皮朱泥茶注」

      「梨皮彩泥水注」「常滑自然釉茶注」「梨皮白泥 茶注」「朱泥燻し焼絞り出し茶注」

      「窯変藻がけ茶注」「紫泥茶注」 「梨皮泥緋襷茶注」「 常滑土瓶」など100種類以上の形や

       色があると言われています。


次回(山田常山2)へ続きます。
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