わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸74(江崎一生)

2012-03-18 16:34:42 | 現代陶芸と工芸家達
愛知県常滑市は、瀬戸、備前、越前、丹波、信楽と並び、日本六古窯のひとつで、千年近い歴史をもつ

焼き物の産地です。しかし常滑も他の窯と同様に、衰退を続け、生活用品を焼く一地方の窯場でした。

江崎一生は、常滑の古陶の研究や、技法の再現を通して、独自の現代風を確立し、常滑再興の祖と

言われた陶芸家です。

1) 江崎一生(えざき いっせい) : 1918年(大正7) ~ 1992年(平成4)

 ① 経歴

  ) 愛知県常滑に生まれる。

     常滑陶器学校卒業後、肥田製陶所に入所し、轆轤による大火鉢を作っていた様です。

    1952年 常滑古窯調査会という組織が、地元の有識者や学生を動員して古窯を調査し始めす。
 
    江崎氏はこの調査に加わり、「古常滑」と出会う事になります。

    1956年 独立し、古窯跡の高坂に築窯。

    1960年 金重陶陽宅に一晩泊り、教えを受ける事になります。

    1961年 常滑陶芸研究所が開設され、所員であった江崎氏は、技術家として参加します。

    ここでは古窯から出土した古常滑の展示と研究、そして、その今日的な活用が計られました。

    同年「古常滑」を再現すべく半地上式穴窯を築き、古常滑風の灰釉を完成させます。

    1963年 第十回日本伝統工芸展で自然釉の「常滑花器」が初入選し、最優秀賞を受賞します。

    翌年には「天平の須恵器」の黒い壷が文化庁の買上げとなっります。

    1969年 日本伝統工芸展で、灰釉の大皿が文部大臣賞を受賞しました。

  ) その他、中日美術展奨励賞、日本伝統工芸展文部大臣賞、日本陶磁協会賞などを受賞し、

    現代日本工芸展、日展などでも入選を果たしています。

    日本工芸展、朝日陶芸展、中日国際陶芸展などの審査員や評議委員を務めています。

    日本工芸会正会員。名鉄、丸栄などで個展を開催しています。

 ②  江崎氏の陶芸

  ) 当初、常滑の鉄分の多い粘土で、備前風の作品を制作していた江崎氏は、1958年名古屋の

    名鉄百貨店で開催された『備前金重陶陽展』を観に行きます。

    二年後、名鉄の富田部長の紹介で、江崎は備前の陶陽宅を訪ねます。

    更に、一晩陶陽邸に泊め貰います。その際「古常滑の現代版に取り組むべき」と教唆を

    受けます。「常滑には国宝の秋草文の壷があるのに、なぜその常滑を目指さず、備前を

    やるのだ。 職人にとって作家と二股かけずに、 天職だと思って、古常滑の再現を目指した

    方がいい」と、 江崎に陶陽は苦言を呈したとの事です。

  ) 「古常滑」とは、鎌倉期から室町期にかけて焼成された、灰釉陶器の事で、江崎氏は

    「古常滑」の復元を目指して常滑の古窯祉を片ぱしから発掘調査し、陶片や窯道具を調べます。

  ) 江崎が古窯の構造を研究し、考案したのが今日常滑で一般に窖窯と呼ばれる構造の地上式の

     窯です。一種の横焔式薪窯で、倒焔式に比べて効率は悪いものの、自然釉の流れた作品が

     火前の部分で取れるそうです。 この窯は、灰被りを焼く為の構造と言えます。

     尚、常滑は明治末年頃から、石炭焚きによえう倒焔式が主流であった様です。

  ) 古常滑は還元で焼成されていた様です。 当時、常滑では酸化炎の窯ばかり、還元炎の焚き方で

    苦労されたとの事です。 この初窯で常滑独特の灰釉作品が五点ばかりとれます。

    得意の二種の灰釉を流し掛けした灰釉鉢、三筋壺は古常滑とそっくで、日本伝統工芸展では、

    「常滑花器」が初入選し、最優秀賞を受賞します。(1963年)

    1969年には灰釉の大皿(径56cm)が文部大臣賞を受賞します。

    その灰釉の透明感のある緑が美しく、中心部に藁灰が施釉されて薄紫の窯変が見事で、

    彼の代表作品であり、近代美術館の買上となります。

  ) 「古常滑」では作品が出来てすぐ、乾燥させずに窯に入れるそうです。

    理由は、作品を乾燥させると、窯の湿気で水滴が出て、作品の上に落ちると作品に傷が

    出来る為で、焼きながら徐々に熱で乾燥させると湿気も取れるそうです。

    更に、作品を窯に入れてから、窯の天井を作った事まで研究を重ねています。

  ) 江崎氏の作品は、轆轤挽きによる大物が多く、釉は灰釉一筋でした。

    又、多くの後輩達に、窯の築き方などを包み隠さず、伝授しています。

次回(山本出氏)に続きましす。
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