わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸71(島岡達三)

2012-03-13 22:08:48 | 現代陶芸と工芸家達
栃木県益子町に窯を築き、縄文象嵌(じょうもんぞうがん)の手法で、独自の世界を確立し、

1996年(平成8)に、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された陶芸家が、島岡達三氏です。

1) 島岡 達三(しまおか たつぞう): 1919年(大正8)~ 2007年(平成19) 享年 88歳。

 ① 益子焼き: 今日関東一円で最も盛んな窯場が栃木県の益子焼で、多くの陶芸家が住み着いて

   います。益子焼の名を有名にしたのは、民藝の濱田庄司が益子に窯を築いた事によります。

   窯場としての歴史は意外と浅く、1853年頃からと言われています。作品も地元で消費する 土瓶、

   甕(かめ)、擂鉢(するりばち)、捏鉢(こねばち)などで、無名の一地方の窯場であった様です。   

 ② 経歴

  ) 東京都港区愛宕に3代続いた組紐師、島岡 米吉の長男として生まれます。

  ) 1938年 府立高等学校 (旧制)在学中に、初めて日本民藝館を訪れ民藝の美を知る事になります

     1939年 現在の国立東京工業大学窯業学科に入学し、夏には岐阜県土岐市駄知(だち)町に

     滞在し轆轤の勉強を始めます。(本来ならば組紐師の4代目を継ぐべきところ両親の許しで

     陶芸の道を歩む事が出来る様に成ったとの事です。)

     1940年の夏、益子に大学の先輩である濱田庄司氏を訪ね、卒業後の入門を許され、幸運にも

     一夏滞在を勧められ、浜田氏の下で陶芸の実習を行います。

     1942年 太平洋戦争の為出征しますが、終戦と共にタイの捕虜収容所に入ります。

     1946年 6月に復員し、その後すぐに濱田庄司門下生となります。

  ) 1950年 栃木県窯業指導所に勤務し、白崎俊次の古代土器標本複製の仕事に協力しています。

     この事が、後の作品に大きく影響する事になります。

     1953年 益子に住居と窯を設け独立します。

     翌年には、初窯を焚き、東京「いずみ工藝店」で初個展を開催します。(以後連続5回)

     1960年 東京丸ビルの中央公論社画廊にて個展、その後大阪梅田阪急百貨店、広島福屋、

     東京銀座松屋、大阪三越、名古屋松坂屋、横浜高島屋など各地で個展を開催しています。

  ) 1972年 豪州を歴訪したのを始めとし、中国、米国、カナダ、韓国、ドイツ、英国

     その他、トルコ、ギリシャも訪ね、当地の美術館や博物館などで作品展示をしています。

  ) 1962年 日本民藝館新作展にて日本民藝館賞を受賞。1994年 日本陶磁協会賞金賞を受賞。

      1996年(平成8) 民芸陶器(縄文象嵌)で国指定の重要無形文化財保持者(人間国宝)に

      認定されます。

  ③  島岡達三の陶芸

   ) 島岡氏の最大の特徴は、縄文象嵌技法にあります。縄文土器には縄目状の文様が施されて

      いる物が多いです。これは、紐や縄を丸い棒に巻き付け、土器制作時に転がして凹凸のある

      連続文様を付ける方法です。この様に付けた文様に、化粧土(色土)を塗り付け、

      更に掻き落して象嵌文様にする方法が縄文象嵌です。

   ) この技法を思いついた切っ掛けは、白崎俊次氏が学校教材として、縄文や弥生式土器を

      領布する為、その原型を濱田氏に依頼し、その仕事(石膏型抜、素焼など)が

      窯業指導所勤務する島岡氏に、回ってきたのが発端です。

   ) この仕事の為、明治大学や東京大学の考古学教室に通い、古代の土器に付いて学びます。

      更に、東京大学人類学教授の山内清男氏より、紐による縄文のつけ方を詳しく学びます。

      尚、島岡氏は縄文土器には興味は無く、単に縄目の転がし方を学んだそうです。

   ) 縄文の文様は無数にあるそうです。紐は撚(より)紐でその撚方(右、左)、本数や、

      心棒の種類、太さ、巻き付ける方向、巻き付けの荒さなど、限り無く存在します。

      その中で、なるべく簡単な基本形の撚紐を3~4種類に限定し、あとは大中小と大きさを

      変えたものを使用しているそうです。

   ) 島岡氏の生家が、羽織など和服や袋物に使う組紐屋で有った事で、父親の仕事を見て

      育った事も、影響していると思われます。

      又、父親から何らかの助言を受けていたのかも知れません。

   ) 代表的な作品に「象嵌縄文三筋大丸壷」(1955、日本民藝館)、「象嵌木理(もくめ)文扁壷」

      「窯変象嵌縄文壷」「地釉象嵌流文壷」「地釉象嵌印文壷」(1982)等があります。

      その他に、「地釉象嵌縄文コーヒー碗セット」などの食器も作っています。

   ) 島岡氏は朝鮮の三島の焼物に、強く引かれた様です。三島の技法は「印花」「刷毛目」

     「彫三島」の三技法があります。縄文象嵌は「印花」の応用であり、掻落は「彫三島」の応用です。

      彼は刷毛目の作品も作っています。

      作品として「刷毛目竹文方壺」「刷毛目櫛目文壺」「白釉象嵌流文壺」「鉄砂抜絵壺」

      などがあります。

   ) 更に、塩釉(しをぐすり)の作品も作っています。

次回(太田熊雄氏)に続きます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする