わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸83(渡邊朝子)

2012-03-30 21:32:20 | 現代陶芸と工芸家達
米国で陶芸の手解き受け、帰国後辻清明氏や江崎一生氏に師事し、黒釉の食器類を作り、世界的に

活躍している陶芸家に、 愛知県岡崎市在住の渡邊朝子氏がいます。

1) 渡邊 朝子(わたなべ あさこ) : 1930年(昭和5) ~

 ① 経歴

  ) 台湾台北市明石町で、外交官の森新一の子として生まれます。

  ) 1953年 女子美術大学 図案化を卒業します。

     1960年 結婚と共に、渡米し夫のニューヨーク滞在中に、米国ブルックリン美術学校陶芸科で、

     許家光(ユーイカコン)教授より陶芸を学び、陶芸家を目指す様になります。

     その後、帰国して辻清明、辻協氏に師事し、更に常滑の江崎一生氏に師事し、轆轤技術と

     窖窯の指導を受けます。

  ) 1965年 東京杉並に還元焼成が出来る、電気窯「泉窯」を設置し、陶芸家として独立します。

     信楽の原土を使い、灰釉を掛け還元焼成した大壺や、食器などを作っています。

     1969年 「一水会陶芸展」で「黒釉かけわけ角切大皿」が、会長賞の候補になり、陶芸家として

     注目を集める様に成ります。

     尚、この黒釉が、以後の独自の作風を確立する契機に成ります。

     1970 第9回国際ビエンナーレ陶芸展(ワシントン・スミソニアン美術館)で入選します。

  ) 1974年 第二十一回日本伝統工芸展で、「黒釉朱彩組鉢」が初入選を果たします。

     その後も、同展で連続して入選しています。

     1978年 西ドイツで個展を開催したのを始め、ハワイ、ヨーロッパ各国で個展を開催します。

     1982年 愛知県岡崎市に、中国古窯様式の薪窯(蛇窯)を築き、工房を移します。

  ) 2002年 朝日陶芸展に入選、2010年 二科展彫刻部に人型作品2点が入選、2011年 中部二科展

     彫刻部に人型作品が入選を果たすなど活躍が続きます。

 ② 渡邊朝子氏の陶芸

   初期の作品は、常滑や信楽の土を使い、須恵器風の自然釉の壺や花生、食器類を製作しています。

   東京杉並に「泉窯」を設けた頃から、電気窯による黒釉や栗茶色の釉を用いて、組鉢や角皿、壺、

   茶器を作ります。

  ) 黒釉(鉄釉)は渡邊氏の代表的な釉です。

     中国の優れた黒釉は酸化焼成によって焼かれる事を、書物で知り電気窯に打って付けな事を

     知ります。そこで電気窯の酸化焼成で、優れた黒釉を作るべく努力を重ね、遂に完成させます。

   a) 「艶の無いマット肌の黒釉」: 長石、石灰、タルク、紅殻(弁柄)を調合して造ります。

   b) 「艶のあるモスグリーン色の黒釉」: 長石、石灰、紅殻と純度の高い玉鋼を加えて調合します。

   c) 「栗茶色の鉄釉」: 雑木灰(土灰)、長石、紅殻で調合。

   d) 「艶のある梨地肌の黒釉」: 上記c)の釉の上に、柞(いす)灰と長石を調合した透明釉を

      掛ける。注:柞灰は鉄分の少ない為、透明用に良く使われる灰です。

   これらの釉を単体又は、掛け分ける事により釉調に変化が出ます。

   更に、赤絵や金彩、銀彩を施す事で、新様式の表現としました。

   「黒釉掛分 金銀彩大皿」(1980)、「黒釉掛分 組小鉢」(1981)、)、「黒釉掛分大鉢」(1982)

    「鉄釉朱彩大鉢」(1978)、「鉄釉皿」(1971)、などの作品があります。

  ) 磁器土による作品

    米国からの帰国直後に、九州有田の岩尾磁器の工場で、磁器土での轆轤作業や、陶壁などの

    製作を手掛けています。特に1982年 岡崎に中国風の徳利型の薪窯を築いて焼成した、

    「磁器土 窯変高杯」(1982)、「磁土透文鉢」(1982)の作品は、柔らかな自然釉の磁肌に

    焼上がっています。

  ) 青白磁の作品

     電気窯で還元焼成している様です。釉は長石、柞灰と少量の藁灰を混ぜたものです。

     中国北宋時代の影青(いんちん=青白磁)の影響か、片身彫りや櫛目の技法が取られています。

     「青白磁 流水文鉢」(1979)等の作品があります。

   渡邊朝子氏の作品は、国際交流基金、外務省、菊池コレクション、台湾、ドイツ、スウェーデン

    王立東洋館、イスラエル日本館、愛知県陶磁資料館、岡崎市世界こども美術館等に

    収蔵されています。


次回(クラフトについて)に続きます。
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