わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸136(今泉今右衛門3)

2012-06-09 21:53:51 | 現代陶芸と工芸家達

2) 十四代今右衛門(今泉雅登): 1949年(昭和24) ~

  ① 経歴

    ) 佐賀県有田町に十三代今右衛門の次男として生まれます。

       1985年 武蔵野美術大学、工芸工業デザイン学科(金工専攻)を卒業します。

       1988年 京都の陶芸家、鈴木治氏に師事します。

    ) 1990年 有田に帰郷し、十三代今泉今右衛門の下で家業に従事し、色絵磁器の世界に

        入り、色鍋島の文様、空間の取り方など、色鍋島全般について勉強、修行します。

       1998年 日本伝統工芸展で、「染付墨はじき梅花文鉢」で工芸会会長賞を受賞します。

    ) 2002年 前年父の他界により、十四代代今泉今右衛門を襲名します。

        同時に、「色鍋島今右衛門技術保存会」の会長に就任します。

       2003年 十四代今泉今右衛門襲名披露展を、日本橋三越などで開催します。

       2004年 日本伝統工芸展で、東京都知事賞を受賞します。

       2010年 個展「十四代今泉今右衛門展」を開催します。

       2011年 イタリア、ローマ、フォリ・インペリアーリ博物館で「ラ・ルーチェ展」に出品されるなど、

       国内外で活躍しています。 又 平成23年度 日本陶磁協会賞を受賞しています。

 ②  十四代今右衛門の陶芸

     磁器に白化粧を用いる「雪花墨はじき」の技法や、新たな上絵技法「プラチナ彩」など、

     伝統に自らの創意を吹き込み、現代における色鍋島を精力的に追及しています。

   ) 1990年に帰郷するまで、主に立体的、オブジェ的な作品を作っていましたが、

      家業を手伝う様に成ると、平面的な絵画である上絵付けの仕事をする様になります。

   ) 墨弾き(すみはじき)技法: 2003年の襲名披露展で、初めて発表します。

    a) 素地(きじ)に墨で文様を描き、その上に呉須を塗ると、墨に含まれる膠(にかわ)分が

       撥水剤の役割を果たし、これを素焼き程度の温度で焼成すると、墨が飛んで白抜きに

       成ります。その後、透明釉を掛けて本焼きします。

    b) この技法は、江戸期より鍋島で使われ、鍋島藩窯では青海波文や紗綾形(さやがた)文など

       細かい連続文様が多いです。主文様として使われる事は少なく、地文様(背景)として

       使われる事が多く、脇役としての表現になります。

     ・  注:紗綾形文とは、卍(まんじ)つなぎの一種で、卍を斜めに連ねた連続文様です。

        紗綾の織りに、多く用いられるところから名付けるらます。

    c) この「墨はじき」の技法を、現代の色鍋島の制作に取込みます。

       更に、脇役であったものを主文様として、取り扱う様になります。

    d) 「藍色墨はじき」「墨色墨はじき」、更には墨はじきを重ねていく「層々墨はじき」や、

       微妙な白の雰囲気の「雪花墨はじき」と意欲的に作品作りに励み、品格の高い現代の

       色鍋島を作りだしています。

      ・ 注: 「雪花墨はじき」は、磁器に白化粧土を用いて白の微妙な世界を表現し、雪の結晶が

           白く浮き出て見える様な美しい作品です。 「色絵雪花墨はじき菊唐花文蓋物」など。

    e) 十三代が創案した「薄墨」技法と組合わせた、「薄墨黒はじき」の作品も作っています。

       「色絵薄墨墨はじき雪文鉢」、 「色絵薄墨墨はじき草花更紗文額皿」: 高さ6.4 X 径38.0㎝、

       「色絵薄墨墨はじき果実文花瓶」、「色絵薄墨墨はじき四季花文花瓶」等があります。

   ) 鍋島の作品は、従来より目に見えない所に、心配りをしています。

      高い高台、櫛目などの高台文、表文様に匹敵する程の裏文様、緊張感のある筆致、

      斬新且つ精巧な構図など、細かい神経と手間隙をかけて、最高の色絵磁器が創り出さ

      れています。十四代も例外では有りません。

   ) 「プラチナ彩」:上絵付にプラチナを用い銀色に発色させる方法で、積極的に使用しています。

      「色絵雪花藍色はじき唐花更紗文ぐい呑」(高 5.6 X 径 5.8cm) :「雪花」という白い地紋に

      プラチナ彩が施されてるぐい呑です。 「色絵雪花墨はじき菊唐花文蓋物」の桃形の蓋の

      摘み部にプラチナ彩が使われています。

以下次回(柳原睦夫)に続きます。

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