わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸140(里中英人1)

2012-06-14 21:59:18 | 現代陶芸と工芸家達

 里中英人氏が陶芸を手掛ける切っ掛けは、川端康成の「千羽鶴」を読み、志野茶碗を作りたいと思った

 事の様です。しかし、前衛集団の「走泥社」に参加し、八木一夫氏に師事する事により、現代社会に

 対する批判が喚起され、現代社会の危機感を表現する、前衛的な作品を作る様になります。

 1) 里中 英人(さとなか ひでと): 1932年(昭和7年) ~ 1989年(平成元年) (名古屋市生)

  ① 経歴

   ) 1955年 東京教育大学芸術学科を卒業します。翌年、同大学芸術学専攻科を修了します。

        専攻は工芸・建築学です。卒業後、宮之原謙氏(当ブログ44を参照)に師事します。

       1961年 東陶会に「陶彫」を出品して板谷波山会長賞を受賞し、同年の第13回三軌会

       (公募団体)展で、「陶壁」が受賞、14回同展で「陶壁」が努力賞、ブランシェ賞を受賞します。

   ) 1970年 京都の前衛集団の「走泥社」に参加し、作品を発表します。以後連続出品。

        ここで、「走泥社」の指導者である八木一夫氏(当ブログ27,28を参照)に師事します。

        尚、1979年 八木氏死亡により「走泥社」を退会します。

      1971年 銀座壱番館画廊で個展を開催します。同年 第一回日本陶芸展前衛部門に

       「シリーズ・公害アレルギー」を出品し、優秀作品賞及び、外務大臣賞を受賞します。

       作品は京都近代美術館に収蔵されます。

       又、国立近代美術館の「現代の陶芸アメリカと日本展」に招待出品します。

      1972年 外務省の「アメリカ・カナダ巡回日本陶芸展」に選抜参加します。

       同年 イタリア、フィレンシェ「国際陶芸展」に出品し、第二位に入賞し、同市の国際陶磁器

       博物館に収蔵されます。

      1973年 立正女子大学(現 文教大学)美術科教授に就任します。

       73~74年文化庁芸術家在外研修員として、アメリカ・ヨーラッパに留学します。

      1974年 第十一回日本国際美術展に招待出品を始め、イタリア国際陶芸展、日本陶芸展受賞

       作家展などに出品しています。

      1979年 国際陶芸アカデミー会員に推挙され、国際陶芸アカデミー学会会員展などの国際展や、

       イタリア国際陶芸会議、京都国際陶芸アカデミー 学会会議、パリ国際陶芸アカデミー学会

       会議など、国内外の多くの会議に参加しています。

       更に、「南青山グリーンギャラリー」、「ギャラリー松岡」(東京)、「ギャラリーちいら」(千葉県)

       などで個展を開催 しています。

   ) 1981年 世界的建築家の伊東豊雄氏の設計により、アトリエ兼住居の「笠間の家」

       (茨城県笠間市下市毛)を建築します。

      1989年 交通事故による全身打撲で死亡します。享年 56歳   

       尚、事故当時準備中であった個展は、作家の計画通り、ギャラリー森で行なわれ、

       国会議事堂を主題とした遺作「ザ・日本」が展示されました。

      2012年 里中氏死亡後空家であった「笠間の家」を、笠間市が再整備し、観光に役立てる様に

       すると報じています。

 ② 里中氏の陶芸

   ) 「公害アレルギー」の作品: 1971年の第一回日本陶芸展に出品された作品で、衝撃的な

      デビューを果たすと共に、社会派の前衛陶芸家の地位を築きます。

     a) 同じ構図の6作品が一組で、蛇口から水が滴る様子を表し、その蛇口が徐々に犯され、

        崩れ落ちて行く様子を、時系列的に並べた作品です。公害の恐ろしさを表現しています。

     b) 当時は「公害問題」が盛んに報じられていた時代でしたので、現代の文明社会に対する

       危機感は、人々の関心を集めていました。

     c) この作品は、蛇口と水滴部分を陶土に金属酸化物を混ぜ合わせ、その割合を変化する事で、

       同一温度で焼成しても、変形度合い(崩れ度合い)に違いが起こる事を発見した事が「ヒント」に

       なり、製作されたと、言われています。

  ) 「赤ちゃんの帽子」の作品: 上記「公害アレルギー」と同じ技法による作品です。

     即ち、異なった素材(陶土と酸化金属など)を焼成すると、その混合割合によって、形が変化

     する事に着目した作品です。 幼児用のヘルメット20点一組の作品で、酸化物を混ぜる割合を

     変え、同形、同容量のヘルメット型を使い、作品を作ります。これを全く同条件で、焼成すると

     その形の変化が連続して現れ、その変容を表現した作品です。

  ) 「透明な密室」

以下次回(里中英人2)に続きます。

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