1) 杉江 淳平(すぎえ じゅんぺい): 1936年(昭和11)~2005年(平成17)7月永眠。
① 経歴
) 愛知県常滑町で製陶業を営む、杉江俊一の長男として生まれます。
1955年 京都市立美術大学工芸科陶磁器専攻に入学し、富本憲吉、近藤悠三、藤本
能道氏らに師事します。
1958年 「第七回現代日本陶芸展」に入選します。
1959年 同大学を卒業し、郷里常滑に帰り作陶生活に入ります。
同年 「モダンアート展彫刻部」に入選します。
1960年 「第八回日本陶芸展」で、二席の朝日新聞社賞を受賞します。
翌年の同展で、再び朝日新聞社賞を受賞します。
1961年 「モダンアート展」で、奨励賞を受賞します。
1962年 「全日本美術工芸展」で通産大臣賞を受賞します。
1967年 中部電力の知多火力発電所にモニメント「和」を製作し設置します。
1968年 常滑市庁舎に陶壁「窯華」を製作設置します。
1970年 大阪万博に陶製ベンチ「月の椅子」200点を共同制作します。
同年、読売新聞大阪本社に陶壁「白い記録」を製作します。
1971年 白馬山荘に陶壁「岩壁」を製作設置します。
1972年 「バロリス国際陶芸展」(フランス)でグランプリ・ドヌール賞を受賞します。
1973年 都営地下鉄内幸町駅に、陶壁「都電のモニメント」を製作します。
1974年 日本興業銀行本店に、陶壁「青い草原」を製作。
1976年 「朝日陶芸展」で陶芸賞を受賞し。「’76 陶磁器デザインコンペ」で金賞受賞。
1978年 「バロリス国際陶芸展」で銀賞を受賞します。
同年営団地下鉄(現、東京メトロ)青山一丁目駅に、陶壁「四季の花」を製作します。
1979年 宮崎国体陸上競技場に、陶壁「群像」を製作します。
上記い以外にも各地に陶壁を製作しています。
又、個展も東京、京都、名古屋などの各都市で開催しています。
2012年 4~5月 常滑市陶の森資料館で「杉江淳平 回顧展」が開催されます。
② 杉江氏の陶芸
常滑の陶芸家を集めた集団による陶壁作品や、自工房(陶房杉)の陶壁と、食器類を主に
製作しています。
) 垂れ下がるイメージの作品
柔らかいものが自分の重みで「垂れ下がる」様な作品。
「作品’67-1」(高 11.5 X 横 60 X 奥行30cm)(1967年)
) 熔けて垂れるイメージの作品
「記憶・分割」(高 35 X 横 25 X 奥行25cm)(1981年)
この作品は、焼成の際に使用するゼーゲル錐を窯の中で熔かし、垂れ下がった作品です。
錐の倒れ方が徐々に変化して行く様子が表現されています。
「記憶・炎」(高 170 X 横 73 X 奥行 73)(1976)中部電力知多火力発電所
このモニメントは、炎が上昇している様に見えますが、見方によっては、炎が下に滑り落ちて
いる様にも見える作品です。
) 鋳物砂焼成
鋳物の砂型に使用する砂は、鉄分の含有量により、焼成時に色の違いとなって現れます。
この違いを積層状態にしたのが、上記「記憶・分割」の作品の土台部分です。
) 「記憶」のタイトルの作品
「記憶」」(高 79 X 横 42 X 奥行 42cm)(1973年),「記憶・B&S」(1974)、
「記憶・構」」(高 125 X 横 72 X 奥行72cm)(1976年),「記憶・分割」(1981):
「記憶・夜」」(高 25 X 横 5 0X 奥行50cm)(1981年)
「記憶」は心の中に沈殿し、色々な思い出が積み重なり 、一つに溶け合い、無意識の彼方へと
押しやられながら、次第に不鮮明になり、やがて失われる運命にあるものとして、表現されて
いるのかも知れません。、
) 真空押し出し成形機の利用
土管作りやニューセラミック、プラスチックの成形に使われる成形機を使い、作り上げた
作品もあります。 「記憶・虹」」(縦 58 X 横 50m)(1971年)がそれで、無数の小孔を
並列に並べた作品です。
) 「陶壁」 の作品
「白い記憶」(縦 2.7 X 横 11m)(1971年)、 「陶壁・岩礁」(高 2.6m)(1978年)
いずれも、凹凸の少ない平面的な作品で、長方形や正方形の陶板が、規則的、又は不規則に
並べられています。
次回(宮下 善爾 )に続きます。