米国のシカゴ大学に招聘され、当地の現代陶芸の影響を強く受け、独自の形と装飾の緊密な関係で
表現される装飾的で、秀でた造形感覚と洗練された色彩の融合した作品を作り続けている、
京都在住の陶芸家が森野氏です。
1) 森野 泰明(もりの たいめい)(本名 ひろあき): 1934年(昭和9)~
① 経歴
) 京都五条坂で、陶芸家の森野嘉光(当ブログ43を参照)の長男として生まれます。
1954年 京都市立美術学校の陶磁器科に入学し、富本憲吉氏や近藤悠三氏らに師事し、
本格的な陶芸を学びます。(陶磁器科は、1952年に新設されています。)
1957年 在学中に「焼き締めの壺」が日展に初入選します。陶磁器科を修了後、専攻科に進み
更に、非常勤講師として研究室に残り、陶芸研究を続けます。
1960年 第四回日展で「青釉花器」が特選で北斗賞を受賞します。
1962年 シカゴ大学美術部より、陶芸講座の講師として招聘され、渡米します。
1962~63年、1966~68年の二度に渡り、米国で作陶活動を行います。
この事が、彼に大きな影響を与える事になります。
1967年 ファンエシャ国際陶芸展に出品。アメリアデュポア陶芸展審査員。オワイオ州アート
センターで個展を開催します。
1968年 現代工芸展で会員賞と外務大臣賞を受賞します。同年日展審査員、翌年には
日展会員になります。後年日展理事に就任します。
1971年 東京と京都国立近代美術館の「現代陶芸ーアメリカ・カナダ・メキシコと日本展」に
出品します。同年第一回日本陶芸展に推薦招待され、以後毎回出品します。
1973年 京都近代美術館の「現代工芸の鳥瞰展」に出品します。
1974年 「京都近代工芸秀作展」に出品します。
これ以降も、アメリカ・デンバー美術館、デンマーク王立工芸美術館、パリ・装飾美術館など、
海外の美術館に出品し、国内でも東京池袋西武、赤坂グリーンギャラリー、東京和光ホール、
福井県立美術館などで、出品や個展を開催しています
1983年 日本新工芸展で文部大臣賞を受賞します。
2007年 扁壺「大地」で芸術院賞を、その他日展理事、日工会常務理事などを勤めています。
2009年 平成21年度 日本陶磁協会賞金賞を受賞します。
② 森野氏の陶芸
) 米国の抽象表現主義陶芸の影響
第2次世界大戦後に絵画を中心に起った、抽象表現主義に呼応する形で、現代美術の中から
土に激しい感情をぶつけた、アメリカ 現代陶芸の革新が、カリフォルニアから起ります。
シカゴ在住中に当時米国で全盛期にあった、抽象表現主義陶芸に接し、日本の伝統的
陶芸には無い土や造形に対する認識の差を実感します。
) 米国の陶芸の現状を知り、改めて自己の陶芸を模索します。
即ち、作品の形体や構成美、装飾性(文様感覚)について探求する事に成ります。
) やがてそれらは、四角な方形を基本にした、幾何学的な形体を採る様になります。
手捻りやタタラによる成形で、立方体、円筒、球体で構成する造形美に到達します。
無用途なオブジェ作品から、用途性を有する花瓶や扁壺まで手掛けています。
文様についても、従来の絵画的絵付け方法から、形と文様の一体化を目指します。
「立体から生まれる文様、文様から生まれる立体」と、彼は述べています。
) 釉を掛けて焼成しますが、時には釉の替わりに顔料を塗る事で、土の素材感を生かしています。
又、金銀彩文様を採り入れてもいます。
③ 森野氏の作品
「祭祀(さいし)」(高 40.5 X 横 29 X 奥行 29cm)(1969年)
「海碧(かいへき)」(高 39 X 横 28 X 奥行 27cm)(1972年)
「揺(よう)」(高 25.3 X 横 25 X 奥行 25cm)(1982年)
「WORK(ワーク)83-1」(高 53 X 横 47X 奥行 8cm)(1983年)
「藍深花瓶」(高 26.6 X 幅 21.6 X 口径 17.4cm)
「WORK 10-11」、「WORK 10-12」(2010年)等の作品があります。
次回(里中英人)に続きます。