1) 掻き落とし技法。 (前回の続き)
③ 多種類の化粧土を塗り重ね、一部を削り取り(掻き落とし)、樹木の年輪の様に、模様の縁取り
を色土で表現する方法。
) 削り取る為には、素地の一部が突起状(凸状)にして、その部分を削り、平らにした方が
作業がし易いです。又は、丸い表面も緩やかな突起と同じ状態ですので、削り易いです。
この突起物は素地の制作の最終段階で、小さな塊として「ドベ」で貼り付けて取り付けます。
但し、削り取った中央部は素地の色となります。
) どの様な色でどの様な模様にするかは、予め考えておく必要があります。
白黒などの様に、対照的な色土を交互に塗る方法や、薄い色から順次濃い方向に変化
させる等、その塗る順序によって、表現も変化します。平らな面に幾層もの異なる色化粧土
を塗り重ね模様を描き、その輪郭の内側又は外側を削り取りますが、平らな面の場合には
削り取る断面が垂直でなく斜めに削らなければ、各層の色の幅が狭くなってしまいます。
) ゆるい突起(凸状)に、複数の色化粧土を塗り重ねると、表面を平行に削り落としても、
突起に対し斜め方向に削る事に成りますので、各色土の幅は広く表出する事が出来ます。
) 突起の形状が模様の形状に成りますので、突起を何処にどの位の個数を付け、その
大きさや高さも模様に関係してきます。
) 削り取る(掻き落とす)際には、切れるカッターを使うと綺麗な年輪状の文様を出す事が
出来ます。出っ張っている部分を切り取りますので、さほど困難では有りません。
) 表面が丸い場合、一部を削り取ると、色化粧土は同心円状に現れます。更に中心部分の
色化粧土の幅は狭く、外側に行く程、色土の幅は若干広くなります。
④ その他にも、陶芸作家さんは色々工夫した作品を作っています。
色化粧土を使った作品は、素焼き後に透明釉を施し、焼成するのが普通の方法です。
しかし、透明釉のみでなく他の色釉を施したり、下(又は上)絵付けを施す場合も有ります。
即ち、土に練り込まれた色化粧土の色と、下絵付けの絵の具の色、更には釉中の色と、
異なる状態の色が存在します。同じ色であっても、色調には微妙な(又は大きな)差が出ます。
化粧土の色は軟らかく淡い色調になり、下絵の絵の具はより鮮明になります。更にガラスに
溶け込んだ金属類の色は、ガラスの影響でやや「ぼやけた」感じになる場合が多いです。
これらを一つの作品内に取り込む事で、今までに無い全体の色調を作り出しています。
最後に、化粧土は単に、素地の悪い処を隠す為だけでは無く、工夫次第で新たな表現方法を
作り出せるかも知れません。
次回飛鉋(とびかんな)に付いて述べます。