化粧土を使った技法に飛鉋と呼ばれる方法があります。
古くは中国の北宋時代(960~1127年)の磁州窯で見られる技法で、我が国では、小鹿田焼
(おんたやき、九州、大分県日田市)が著名な産地になっています。
注: 小鹿田焼: 飛鉋等の陶芸技術が、1995年(平成7年)に国の重要無形文化財に指定
されています。
1) 飛鉋とは化粧土を施した作品に、弾力性の有る鉋(かんな)を当て、轆轤を回転させながら表面を
規則的に削り取る装飾方法です。別名「踊箆(おどりべら)」、「撥箆(はねべら)」などと呼ばれて
います。
2) 飛鉋の技法
① 飛鉋を施 し易い作品。
飛鉋が作品に均等に当たる為には、轆轤作業による左右対称の皿類や壷、花瓶などが向いて
います。表面も綺麗に仕上げた物で、作品の大きさも、大きめ(又はやや大きめ)の方が作業が
し易いです。
② 轆轤挽きした作品に、色化粧土を刷毛塗りします。
今回は白化粧土の上に、黒化粧土を刷毛塗りし、黒地に白模様の鉋痕を残す方法に付いて
述べます。 尚、一番簡単なのは、素地に色の異なる化粧土を塗り、化粧土の地に素地の色の
鉋痕を残す方法です。
) 不要な轆轤目は付けない様にします。又は、必要に応じて削り取ります。
) 高台まで削り終えたら、白化粧土を次に黒化粧土を塗ります。
a) 皿類の場合、内側のみの場合と、内外の両側に飛鉋の模様を施す場合があります。
内外両方に施す場合には、外側を先に塗り、次いで内側に化粧土を塗る方が安全です。
b) 皿類を逆さにして、手回し轆轤上の中央部分にシッタ(湿台)に載せ、濃い目の白化粧土を
轆轤をゆっくり回転させながら、刷毛で塗っていきます。 作品全体を塗る場合と、口縁と
高台部を塗り残す方法もあります。但し、縁口まで白化粧土を塗ってしまうと、水分で
作品が崩れる恐れがありますので、出来れば塗らない方が安全です。
轆轤上に置いた時に、作品の中心が出ていないと、「塗りむら」や化粧土の厚みに
「バラツキ」が生じます。
更に、数度塗り重ね「塗りむら」を無くし、且つ化粧土の厚みを整えます。
c) 底に板を当て上下をひっくり返します。その際、口縁部は「シッタ」で支えるか、作品の
高台を持って別の板にそのままの状態で移動し、上下の板で挟んでひっくり返します。
d) 皿類の内側に白化粧土を刷毛塗りします。
この場合も、縁には化粧土を塗らない方が安全です。
③ 内外に塗った化粧土をドライヤーで速やかに乾燥させる。
時間の掛かる自然乾燥では、乾燥する迄の間に、化粧土が下に落ちて動いてしまい、化粧土の
厚みに「バラツキ」が出てしまいますので、早く乾燥させる為に、ドライヤーを使います。
その際、作品全体が均等に乾燥する様に、手轆轤などで回転させながら乾燥させます。
④ 白化粧が触っても「べとつかない」程度に乾燥したら、その上に黒化粧土を塗ります。
早く黒化粧土を塗ると、白黒の化粧土が混じり合い、濁った色化粧土に成りますので、注意が
必要です。白化粧の上全てに刷毛塗りする方法が有りますが、白化粧土の一部をあえて残し
黒地に飛鉋文様を施す他に、白い地を残す方法も捨てがたい趣があります。
以下次回に続きます。