三島に使う印(判子)は、基本的には印面が凸状の物を使います。凹状の場合には、印の外側の
痕が付いてしまいます。即ち丸い印なら丸い凹みの中に、模様が浮き上がる事になります。
この状態で化粧土を掛けると、模様の周囲には化粧土が厚く掛、模様部分には、化粧土が薄く掛り
ますので、模様の印象が変化します。 前回の話を続けます。
③ 連珠文の場合、連珠文とは、ドーナツ状の小さな丸が数個連続した模様です。
やや太めの丸い紐を作り、5~6cm程度の長さに切ります。
先端部分を指で平たく潰し、更に端面をカットして綺麗な面に仕上げます。1~2分乾燥後に
ドリルの刃や竹串を使い、必要な数の丸い穴を、一直線状に彫ります。穴の深さは3mm程度で
十分です。 穴の周りの土を厚みを揃えて残し、他は取り除きます。
④ ロール印を作る。
陶土製や木製の円の外側に模様を彫り込み、回転させながら連続模様を捺印する道具です。
ロールの中央に孔を開け、「L字型」の太い針金や棒を作り、短い方を孔の芯に差し込んで
ロールを回転させると使い易いです。長い方は手で握る部分で、ロールを下に押す様にして
回転(ころがす)させます。
ロール印の特徴は以下の如くです。
) 一度に広い面積に捺印できる事です。円の外形を大きくすれば、それだけ多くの文様
(長い文様)が彫れますし、円柱の長さを長く取る事で更に文様の幅を広げる事が出来ます
特に平たい面の多い陶板等の模様付けに向いています。
) 回転体の為に模様が循環して繰り返します。判子の様な個々に切れ目が付きません。
) ロール印に広い範囲の模様を彫り込む事は、意外と手間隙が掛ます。そこで小さな部品
(パーツ)を貼りあわせる事で大きな文様を作る事が出来ます。
) 欠点として、広い面積を押しますので、力が分散して綺麗な印とならない事です。
更に、幅の広い回転体を均一の力で、押す事は意外と難しい作業になります。
それ故、比較的柔らか作品に捺印する事ですが、作品の形が崩れ無い程度の乾燥は
必要です。
・ 陶製のロール印は、素焼き後に使用します。作品には片栗粉を塗り、型離れを良くします。
⑤ 特別な物でなく、日常的に使っている物も印として使う事が出来ます。
例えば、釘の頭は小さな丸い凹みを付ける事が出来ます。ネジの頭は丸に十の模様になり、
六角ナットも正六角の中央に凸の文様に成ります。又割り箸の先を三角形に削れば鱗紋にする
事も出来ます。細いプラスチックなどのパイプ(管)で、連珠紋に捺す事もできます。
持てる程厚みの無い物でも、棒の先に接着すれば、棒を持って印を押す事も可能です。
この様な文様は従来ある文様とは異なりますので、斬新な文様を作り出す事が出来る
かも知れません。身近な物で役立つ物は結構多いはずです。
⑥ 化粧掛けした後の処理。
捺印した後、化粧土を塗り込めますが、この化粧土の処理の仕方によって三島模様の効果が
変化します。
) 化粧掛けしたあと、一般には化粧土をスポンジ等で拭き取ります。凹みのある部分には、
化粧土が残り、それ以外では拭き取る事になります。完全に拭き取る事は難しく、若干
残ってしまいます。注意点は、凹みが浅い場合には、凹みの部分の化粧土を拭き取って
しまいますので、スポンジを強く押し付けない事です。
) 凹み以外に化粧土を付けたくない場合には、マスキングを施して、凹み周辺のみに化粧土
を塗るか、掻き落としの技法で削り取ります。
) 化粧土を施した後、捺印する方法もあります。
水分を吸収する印(素焼き印など)であれば、化粧土を剥ぎ取る事に成ります。
即ち、従来の三島のネガタイプ(捺印部が素地)と成ります。
) 三島では、捺印と線彫りを併用する方法も多いです。口縁近辺を線彫りし、中央部分に
捺印するタイプが多い様です。
以上で三島に付いての話を終わります。