わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸161(各務周海2)

2012-08-09 22:36:23 | 現代陶芸と工芸家達

「黄瀬戸」とは瀬戸地方でなく、美濃の半地上の窖窯(あながま)や登窯で焼かれた、

淡黄色の陶器です。 

3) 各務周海氏の陶芸

  ① 油揚手の黄瀬戸は、しっとりした質感ながら、ややザラザラした質感を有しています。

    しかし、焼きの甘い焼き物ではありませんし、砂を入れたりして焼いた物でもありません。

    「油揚手」「アヤメ手」といわれる『黄瀬戸』は、桃山時代の美濃大萱の窯下窯、牟田ヶ洞、

    中窯、浅間窯で名品が多く焼かれていました。

    注: 油揚手とは、豆腐屋さんの作る油揚げ、即ち稲荷寿司に使う油揚げの様な色と肌の

       ざらついた様子に見える事から付けられた名前です。

   ) 北大路魯山人は、油揚手の名品が焼かれた美濃山中の窯下窯を発掘した経験から、

     湿気がある窖窯で焼かれていた事を突き止めます。

     彼の窯は湿気の少ない登窯であった為、匣鉢を用い積み重ね、下部の匣鉢に泥状の土

     だけを入れて、水蒸気を蒸発させて、艶を抑えた黄瀬戸を焼成したとの事です。

     更に、徐冷をする事はより効果的と述べています。

   ) 加藤唐九郎氏は、釉に備長炭の灰を利用しているとの事です。

     (黄瀬戸釉は、灰釉を使っています。)

 ② 周海氏は、桃山時代の三拍子(油揚手、タンパン抜け、焦げ)揃った小さな陶片を、美濃山中

    の窯下窯で見つけ、その美しさに感動し、難関の油揚手に挑む決意をしたとの事です。

    恵那山(長野県、岐阜県)の土と釉薬を用いて、桃山の名品と遜色ない数々の優品を、世に

    送り出す事になります。

   ) 桃山陶工が身近な材料で調合したと推定される黄瀬戸釉を、周海氏は色々な灰を用いて

     試していましたが、恵那の栗皮灰をベースとして使い、効率の悪い窖窯で焼成し、成功を

     収めます。栗皮は白い灰にならぬように注意して、黒目の灰を作ります。

     これに裏山の雑木林の土灰をほどよく合わせて、黄瀬戸釉を作るとの事です。

      注: 栗皮灰とは、腐り易い栗の木は、伐採後樹皮を剥ぎ取り保管したそうです。

        その為、栗の樹皮は産業廃棄物状態で放置されていた物を、焼却し灰にして陶芸用に

        使ったのが始めと言われ、一般的な釉の材料です。

   ) 黄瀬戸は単に土と釉の問題ではなく、焼成方法も大きく関係している様です。

      即ち、桃山時代の黄瀬戸は作品を匣鉢に入れ、大窯(窖窯)で徐冷によって油揚手に焼き

      上げています。現在では大窯(共同窯)は、ほとんど姿を消しています。

      その為、焼成方法にも、工夫が必要なはずです。(詳細は当然秘密です。)   

   ) 黄瀬戸の器には、釉の上にタンパン(胆礬)という硫酸第二銅を使用し、銅緑色(又は褐色)

      の胆礬の斑点が、表面から裏面まで浸透した物を「抜け胆礬」と言い、茶人は特に珍重

      しています。 これは胆礬が水溶性の為、裏面まで通り抜ける事によります。

      又、胆礬は火前の強火では揮発し、光沢も出てきます。

   ) 周海氏の作品は主に茶陶器で、抹茶々茶碗や、懐石料理の器、ぐい吞みなどの酒気類が

      多いです。しかし単に桃山の再現や写しではなく、独自の造形を目指しています。

      黄瀬戸以外にも、志野の作品や伊賀の花入れ等も手掛けています。

次回(瀧口喜兵爾 )に続きます。

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現代陶芸160(各務周海1)

2012-08-07 22:04:11 | 現代陶芸と工芸家達

各務周海(かがみ しゅうかい)氏は、現代美濃の陶芸界にあって、人気、実力とも第一級の

黄瀬戸作家であり、桃山陶器の華とされる黄瀬戸を、現代に再現した美濃の陶芸作家です。

各務周海 (かがみしゅうかい):1941年(昭和16)~2009年5月(交通事故で死亡)。享年67歳

1) 経歴

   1941年岐阜県恵那市に生まれます。父は美濃の陶芸家の各務賢周氏です。

   1963年 駒沢大学仏教学部を卒業します。

   1966年 岐阜県陶磁試験場研究生課程修了し、更に68年まで幸兵衛窯で修業し、

    五代加藤幸兵衛氏に師事します。

   1969年、岐阜県恵那市長島町永田に、半地下式窖窯の恵那窯を起こし独立します。

   1979年 恵那地方産出の原料の研究で、岐阜県知事より卓越技能賞受賞します。

   2010年4月27日〜5月9日、京都東山の「野村美術館」で回顧展が開かれました。

    東京・日本橋三越、東京しぶや黒田陶苑などで、個展を多数開催しています。

  ・ 周海氏は、無所属であり、権威有る賞の受賞歴もない、無冠の陶芸を貫き、数々の黄瀬戸の

   名品を作り続けています。

2) 黄瀬戸について

 ① 「油揚手(あぶらあげで)」、「胆班抜け(タンパンぬけ)」、「焦げ」の三拍子揃った黄瀬戸の

   再現は、「陶工泣かせ」と言われる程難しく、昔から多くの名工達がその再現に挑んでいます。

   加藤唐九郎氏(1897~1985)年や岡部嶺男(1919年~)、北大路魯山人(1883~1959年)ら

   多くの陶芸家が挑みながら、特に油揚手と呼ばれる黄瀬戸は、納得のいく作品は少なかった

   様です。

 ② 黄瀬戸は、中国宋代の「青磁」をまねた灰釉で焼いていますが、「青磁」が還元焼成なのに対し、

    瀬戸の灰釉は酸化気味だった為に、薄淡黄色の透明性の強い釉となっています。

    室町末期に技術が美濃に伝わり、「黄瀬戸」の起源となります。

 ③ 黄瀬戸には「ぐい呑手」と、その後に茶陶として焼かれた「油揚手」又は「アヤメ手」、さらに

    登窯で大量に焼かれた「菊皿手」の三種類に分類されますが、これらは昭和8年に加藤唐九郎

    著『黄瀬戸』が出版されて以来、唐九郎の分類が定着したと言われています。

  ・ 利休好みの「ぐい呑手」: 当時六角の「ぐい呑」に多く見られた釉で、黄瀬戸釉が溶けて、

    ツルッとしていた事から付けられた名前です。 肉厚の素地で、火前に置き強火を当て、

    いわゆるビードロ釉となった状態で、釉が厚い処は海鼠(ナマコ)釉状に現れた物が多く、

    これにはタンパン(胆礬)はみられません。

    利休所持の立鼓花入、建水(銘大脇指)や旅枕掛花入(銘花宴)などは古淡を好んでいます。

  ・ 織部好みの「油揚手」:柔らか味のある、しっとりとした黄色で光沢の鈍い釉肌に、タンパンの

    銅緑色と鉄褐色の斑点が発色していて、高台内には焼成時の台に焦げ目が残っています。

  ・ 「アヤメ手」: 井上家旧蔵のアヤメ文の輪花鉦鉢(どらはち)は、薄手で光沢の鈍い釉調と

    刻文のアヤメ紋様にタンパンがある処から、「アヤメ手」といっていますが、他に蕪、露草、梅、

    菜の花、花唐草などの文様があります。

3) 各務周海氏の陶芸

以下次回に続きます。

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陶芸の心得24(予測不可能な事3)

2012-08-06 22:16:32 | 陶芸の心得

陶芸はある意味、予測不可能な芸術とも言えます。その為、「芸術では無い」と言う人がいる一方、

全てが見通せない事が、最大の魅力であると思っている方も多いのも事実です。

主に焼成する事による、不確かさの事が多いのですが、その他にも予測不可能な事があります。      

2) マーブル(大理石)文様の作品を作る場合も、予測不可能な文様が出現します。

    その文様がどの様に成っているかの確認は、表面を一皮削り取った後に判明します。

    マーブル文様の細かさは、轆轤挽きする前の土練の回数によって決まります。

    回数が多いと細かく成り、回数が少ないと、粗めの文様になります。

    2~3種類の土を使う事が多いですが、その割合も大切です。黒っぽい土は見た目以上に

    広い面積として表れますので、少な目にした方が、綺麗に仕上がります。

  ① 轆轤作業では土は螺旋状に上に伸びますが、轆轤挽き時には、表面に泥が付いている為

    全く文様を確認する事は出来ません。又内外の削り作業で文様が確認するのですが、色土の

    種類によっては、素地土との色の差が少なく、本焼きするまで文様が確認出来ない場合も

    あります。

 ② 練り上げ手の技法:偶然性を取り除いて、色土で文様を作る方法です。

  ) 轆轤を使わずに、色土を文様に合わせて重ね上げる方法です。

    電動轆轤などを使うと、自分の意図した文様にはなりません。それ故、意図した文様にする

    為には、色土を一つずつ積み上げて行く必要うがあります。この技法を「練り上げ」といいます。

   ) ご自分の計画通りに仕上げる為には、最初の構想から実行方法、積み上げる順序などを

      十分計算し、手間隙掛けて作業する必要があります。また色土の境目は、剥がれ易いです

      から、しっかり接着します。

3) 墨流しの文様:絵画の分野では以前からある技法ですが、陶芸に取り入れ予測不能の文様を

   作り出す技法です。

  ① 一般に絵画的方法は、水面に墨を垂らして浮かべ、適度にかき回して水流を作り、

    墨で不定形の文様を作ります。これを紙(和紙)を上から被せて、文様を吸い取り転写する

    方法をとります。

  ② 陶芸の方法は、上記の方法とは異なり、器に直接文様を付けます。

    色化粧による墨流しと、釉による墨流しの方法があります。

  ) 器はなるたけ皿の様な平板の物が作業がし易いです。遠心力を利用しますので、ある程度

     面積の広い器が向いています。

  ) 色土による墨流し。色の対比が鮮明な物ほど、模様がしっかり出ます。

     黒地に白(白化粧土)の墨流しや、その逆の配色なども向いています。

    a) 作品は生渇きの方が、化粧土を吸い込まず流動を与える事になります。

      その為、作品は亀板に載せておくと良い様です。化粧土も流動性を持つ様に、水分をやや

      多目にしておきます。

    b) 器に化粧土を適度に流し込み、直ぐに亀板を持って、作品を強く揺さ振ります。

       器の傾き具合や、流し込みの量、揺さ振る方向と強さによって、化粧土が移動し文様を

       作ります。又、轆轤上に器を置き、轆轤の遠心力を利用する手もあります。

    c) 化粧土が乾燥したら、亀板から切り離し、高台を削り出します。

  ) 釉による墨流し。 一般に素焼き後の器に施します。

    a)  基本的には、化粧土の場合と同じ方法ですが、素焼きした器は水の吸収が強く、釉の

      流動性を阻害します。

    b) そこで素焼きした器は、ある程度水を吸収してから、作業に取り掛かります。

       作業は手早く行う事です。何種類かの釉を使うと、見栄えも良くなります。

   ) 何れの方法でも、一発勝負に成りますので、慎重に且つ大胆に作業を進める事です。

以上にて、「陶芸の心得」の話を終わります。次回から別のテーマでお話します。

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陶芸の心得23(予測不可能な事2)

2012-08-05 22:49:51 | 陶芸の心得

予測不可能な事は、焼成中にも起こります。

一番多いのは、温度上昇中に、突然上昇速度が鈍くなる事で、場合によってはその温度でストップ

する事があります。更に最悪の場合には、温度がどんどん低下する事さえ起こります。

2) 窯の温度上昇が突然停止する。

   窯の温度を上昇させるには、少しずつ燃料や電力の供給を増やします。

   しかし、順調に温度上昇していたものが、突然ストップすると、大変不安になり、何らかの対策を

   採る必要に迫られます。この現象は素焼き、本焼きに関係なく起こりますし、現在の温度に

   関係なく、低い温度や高い温度でも起こります。

 ① 温度上昇のメカニズム。

  ) 基本的には熱源(燃料や電力)を追加してゆけば、温度は上昇するはずです。

     しかし実際にはその通りに成らない場合が多く、どの様な対策を採るべきか迷い、毎回試行

     錯誤をして、切り抜けているのが実情です。

     特に燃料などを供給した直後に、この現象が起これば、次のような事が考えられます。

  ) 燃料を使う窯の場合に起こり易い。

    即ち、燃料の供給量と空気(酸素)の供給量のバランスによって、温度が上がったり、停滞

    したり、低下したりします。

   a) 一番燃焼効率が良いのは、中性炎又は、弱還元炎の時と言われています。

     次に効率が良いのは、弱酸化炎の場合です。

   b) 低下する最悪の場合は、主に強還元炎の時です。

     即ち、燃料に対して空気の量が少ない場合です。むやみに燃料を供給すればするほど

     温度が下がる事になります。

   c) 強酸化の場合も、温度が上昇しません。この場合は、煙突からどんどん熱が逃げる事に

     なり、燃料が無駄になります。

  ) 窯には各種の調整装置が備わっています。

    即ち、燃料や電力の供給量の調整(バーナーの圧力など)や、空気供給量の調整、煙突の

    引きの調整が主な調整装置ですが、これらを微妙に調整する事で、温度の上昇状態が

    変化します。

    a)  窯の状態を見て対策を立てる。

      温度上昇がストップしたからと言って、あわてて対策を採らず、5~10分程度静観する

      事です。一時的に温度が数度低下しても、再び温度上昇に転じる事も多いからです。

    b)  窯の状態が、今どの様な場面かによって、対策が異なります。

     ・ 素焼きの場合は、一般に酸化焼成ですので、燃料供給過多により、還元が強くなり

       温度上昇がストップする場合が考えられますので、酸化炎になる様に空気供給量を

       増やしたり、煙突の引きを強くします。

     ・ 本焼きの場合、酸化又は還元焚きに移っていれば、燃料不足に成らない様に、又は

       強還元や、強酸化炎に成らない様に、調整箇所(ガス圧、空気穴など)を調整します。

    c)  本焼きも1200℃を超える頃から、極端に温度上昇が遅くなります。30分で10~20℃の

       上昇と言う事も稀ではありません。このような状態の時はどう対処すべきか迷う事に

       なります。 いくらかでも温度上昇していれば、このまま我慢する方法と、なんらかの

       対策を採るべきかです。(但し、ストップ又は低下の場合には対策は必要です。)

      ・ ここで対策に失敗すると、自体はどんどん悪く成って仕舞がちになります。

       即ち、あちらこちらを微調整して温度上昇が上がってくれれば良いのですが、逆に悪い

       方向になる場合もあります。

      ・ 1200℃を超えると、一般に酸化炎に切り替えます。それ故供給量を増やさずに逆に

        減らすと良い場合があります。例として、温度上昇がほとんどストップ状態の時、夕立が

        あり、プロパンガスボンベが濡れ、霜が付着しガス圧が低下したら、急に温度が上昇した

        経験があります。

      ・ 温度上昇が鈍ったり、ストップした場合どの様な対処をしたかを、ノートに記録する事です。

        但し、同じ対処方で、クリアーする事は、意外と少なく毎回何らかの方法を取り入れて

        対処する事が多いです。

     d) あと20℃と言う処で完全にストップしてしまった事があります。一般に1200℃あれば

        釉は熔けると言われていますので、最低でも1200℃(目標は1230℃)゛が欲しいの

        ですが、1180℃でストップした訳です。

        いくら時間をかけても、温度上昇が見込めず、ここで窯焚きを中止した事があります。

      ・ てっきり全滅したと思いましたが、窯を開けて見ると、今までよりも発色の良い作品が

        数個ありました。若干焼きが甘く、いつもの光沢は少ないのですが、落ち着いた色に

        仕上がっていました。

  話がやや横道に反れてしまいましたが、失敗は失敗なりに思わぬ収穫を得る事も、予測不可能な

  事になります。

以下次回に続きます。

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陶芸の心得22(予測不可能な事)

2012-08-03 21:38:32 | 陶芸の心得

陶芸の中には、やってみないと判らない事も多く存在します。

1) その代表的なのは焼成です。窯を開けて見るまで、どの様な作品に出来上がっているかは判ら

   ないのが普通です。例え温度が所定の位置まで上昇し、還元(又は酸化)焼成が完璧に出来た

   と思われたとしても、予想通りの色や形に仕上がる訳でもありません。 同じ釉を掛け、隣同士の

   位置に窯詰めしても、焼き上がりが極端に異なる場合も珍しくありません。

   特に薪やガス、灯油などの燃料を使う窯の場合は、顕著に現れます。

   場合によっては、色だけでなく、作品に亀裂やひびが入ったり、ひどい場合には、作品が粉々に

   成ってしまう事もあります。

  ① 今までに無い特に変わって発色した場合は、「窯変」と言い珍重されますが、同じ条件で焼成し

     ても、二度と同じ様に焼き上がらない場合が多いです。

     勿論、焼成時のデータを確認しながら、再現を目指すべく色々思考錯誤するのですが、

     再現しない事の方が多い様です。要するに、根本的な事が判っていない事が、原因かも

     知れません。

  ② 同じ条件で焼成しても、窯の種類によって、焼き上がる作品の釉の色に差が出ます。

     薪、ガス、灯油、電気窯などによって、同じ土、同じ釉、同じ焼成(酸化、還元)であっても、

     明らかに違いが出ます。その為、数種類の窯を持ち、使い分けている方もいます。

  ③ 窯には個性があります。(市販の窯であっても、手作りの窯であっても個性が出ます。)

    同じ窯でも、窯の扉を開けないと結果が判らないのですから、同じ燃料を使用し、同程度の

    大きさ(容積)の他の窯であっても、当然焼き上がりには差がある物です。

    それ故、ご自分が納得する焼き物が出来る様に、窯を改造したり、何度も新たな窯を築く人も

    います。更に、他の人の窯焚きについての話を聴いても、必ずしも役に立つ訳ではありません。

   ) 窯の癖を見分ける事が、窯焚きの必須の条件です。

     a) 窯の中は均一ではない。

       基本的には均一にしたいのですが、均一に成らないのが実情です。

     b) 窯の中では、ある程度の温度差が生じます。窯の容積が大きい程、温度差が出易いです。

       温度差を少なくする為に、「寝らし」と言い、目標温度で一定時間保持する作業を行います。

       しかし、この作業も完璧な物ではありません。

       又、窯の中の場所によっては、温度上昇が急であったり、逆に温度上昇が遅い場所が

       出来易いです。その結果は、釉や作品の形に影響を与えます。

     c) 電気の窯では、一つ窯全体が酸化焼成する事が可能ですが、燃料を使う窯では、完全に

       酸化や還元焼成に成らず、還元焼成でも一部で酸化焼成になる事も、珍しくありません。

       又、還元でも、強還元や、弱還元など、窯の中の位置関係によって差が出ます。

     d) 窯の冷める速さにも、場所によって差がでます。(壁の厚い程、容積が大きい程、

       冷えは遅くなります。) 窯の下部から冷却が始まり、最上部が最も遅く冷却します。

       釉によっては、急冷に向く「黒釉」や、徐冷に向く「結晶釉」などがありますので、釉に合わ

       せて、窯詰めします。

    勿論数度の窯焚きでは、その窯の癖を把握する事は困難です。

    ある程度の回数を行う事により、少しずつ癖を把握する事になります。

    その結果は次回の窯詰めや、焼成に役立たせます。

 以下次回に続きます。

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陶芸の心得21(技術は体で覚える3)

2012-08-02 21:58:19 | 陶芸の心得

5) 技術は時代と伴に変化する。

  一度身に着けた技術もしばらく実行していなかったり、時代変化に合わなくなったり、又は不要に

  なるものなど、その技術が一生役に立つものとは、限らない物もあります。

  ① 陶芸を例にとれば、轆轤作業で電動轆轤が世に出る以前は、自分の手または足を使って回転

   させていました。この技術の取得には、多大な努力と力を要しました。

   蹴轆轤(けロクロ)を除いて、現在では手で回す轆轤(手捻り用ではない)を使う人は、一部茶陶を

   作る場合の他は、ほとんどいなくなりました。

  ② 共同窯(大窯)が一般的であった焼き物の産地でも、個人所有の窯へと変化してゆきます。

   共同窯では、窯焚きをする専門の職人は、絶大な権力を握っていたそうです。しかし、個人窯に

   なると次第に働く場も無くなり、大窯の窯焚きの技術も、廃れてしまいました。

   逆に、今まで焼成技術を専門家に任せて必要としなかった、一般陶芸家は焼成技術を身に

   着ける必要が出てきます。

  ③ 一方、電気窯が発明される前は、燃料を燃やして窯を焚いていました。特に薪を使用する

   登窯や窖窯(あながま)などは、公害問題や非効率の為、一部の愛好家以外は、姿を消して

    しまいました。これらは、時代に合わなくなった為、その轆轤技術や焼成技術は廃れて行った

    技術です。

 6) 人の技術を借用する。

    勿論、本人が苦労し、努力する事によって得た技術は、高く評価出来るかも知れませんが、

    それらの技術は、既に何方(どなた)かによって、完成された技術かも知れません。

    もしそうならば、何らかの方法で、その技術を借用する事は、不名誉な事でも恥でもありません。

  ① ご自分では、未知の技術であっても、陶芸の世界では公に成っている技術は、多々あります。

    陶芸の書籍(技術書)やインターネットで調べたり、その他、知人などにたずねたりして、

    その技術を会得する事も可能になります。

  ② どの様な分野であっても、世の中には自分と同じ事を考え、何らかの行動や実践している

    方は、数人はいると言われています。勿論その様な方がいる事が判明するのは、その方が

    何らかの成功を収め、世に紹介された場合が多いです。

    勿論、どの様な技術でどの様な方法で、成功させたかは、公にする事は有りません。

    (長年の努力や苦労の結晶は、おいそれと教えるはずはありませんので、当然な事です。)

    しかし、その方法が未確認でも、それを成功させる事が可能である事を示していますので、

    その事だけでも、強い味方とも言えます。

  ③ 世の中に全く新しい技術はそんなに多くはありません。ほとんどの新技術は、以前からある

     技術の 改良版が多い様です。

     それ故ご自分の求める新技術のヒントも、意外と近くに有るかも知れません。

以下次回に続きます。   

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陶芸の心得20(技術は体で覚える2)

2012-08-01 22:06:52 | 陶芸の心得

多くの運動や芸能などは、頭で考えながら作業や行動する様では、上達はおぼつかないです。

勿論、考える事は大切な事ですが、出来れば行動を起こす前に十分考えるて置く事です。

 自転車にしろ水泳にしろ一度技術を会得すれば、一生忘れる事が無い物もあります。

 これこそが本当の意味で、体で覚える事だと言えます。

1) 技術を習得し、身に付くまでには、ある程度の年月が必要です。

   その技術が、どの様なものかによって、年月にも大きな差が出来ます。

   陶芸の場合は、数週間~数年のものが多いです。

   ① 例えば、施釉する技術は、数週間あればほとんど身に付く技術と言えます。

   ② 轆轤技術が身に付く為には、数年を要します。

   ③ 「窯焚き一生」と言う諺がありますが、満足する窯焚は、何年経っても出来ません。

      同様に、自分なりの釉を新たに作り出すのも、かなりの時間を要し、一生掛かっても完成

      できない場合も多い様です。

2) 言葉では教えられない事もあります。又教えを受けたからと言い、その事が身に付く訳では

   ありません。いくら手本を示しても、実際に当人が苦労しない限り、上っ面の知識と成り易いです。 

   細かいニュアンスは言葉では、言い表せない事も多く、受け手に十分理解されているかは不明な

   場合も多いです。本人が「判ったと」言う顔(表情)をしていても、実際には判っていない場合も

   多いですので、お互いに注意が必要です。

3) 技術を習得するには若い程良い。

   ① 頭(思考)の柔軟性に富んだ人の方が理解も早く、技術の習得も早いです。

   ② 柔軟性は頭の柔軟性の他に、肉体の柔軟性も必要な場合も多いです。

     その為にも、なるべく早い時期からその道に進む事が大切になります。

     但し陶芸の場合30~40代に始める人も多く、それらの人たちの中には、人間国宝に成った

     方もいます。

4) 技術を体で覚える為には、「繰り返し練習する事」と言われています。

   但し、理屈に合った練習でなければなりません。そして大切な事は、失敗をする事だと言われて

   います。失敗した場合、失敗の原因を考える事により、次回より同じ失敗を繰り返す事も無くなる

   かも知れません。しかし同じ失敗を繰り返す様でしたら、対策が不十分か間違っている事に

   なります。

   ① 短期間に集中して練習すれば、技術は早く会得する事が可能です。

      長い年月を掛けても、休み休みの練習では効果が期待できません。

   ② 昔の職人達は、湯呑みを数千個作って技術(腕)を磨いたと言われています。

      この方法が現在でも有効かどうかは、意見が分かれるところです。

      陶芸を楽しんでいる方は、必ずしも職人の様に、同じ物を数多く作りたいと思っている訳では

      ありません。むしろ色々の形や、釉を使ってみたいと思っている方が大半です。

      それ故、色々な技法を学び身に着けたいと思っています。その為には、同じ形のものでは

      なく、バラエティーに富んだ作品に挑戦する方が、技術習得に役立つかも知れません。

以下次回に続きます。

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