中野美代子さんの'79年作品『辺境の風景 日本と中国の国境意識』を読みました。'72年から'78年にかけて中野さんが様々な雑誌に書いた文章を集めて作られた本です。
日本における北海道の認識に関する文章や、日本の領土意識に関する文章、中国における辺境論、ソ連領中央アジア印象記など、全部で13の文章が掲載されていますが、当時話題になり始めていた「北方領土」という考え方に関する批判的な言説から、辺境としての中央アジアに関する興味深い文章まで、様々な文章が楽しめました。そうした中から、特に印象に残った文章には以下のようなものがありました。すなわち、中国人は北方に砂漠を見たからこそ、「北方」概念を絶対化して南方に発展したのだし、ヨーロッパ人は南方に砂漠を見たからこそ、「南国」概念を絶対化して北方に発展したのだという主張、そして中国人が「北方」概念を絶対化させたことが中国人における「北方」の観念を全く欠落させることになり、それが日本人にも「遺伝」したのだという指摘、北海道は18世紀末の世界においてさえも、よく知られていなかったという事実、日本人の方角観念はすべて、異質の文化の渡来に対するリスポンスとして発展してきたのに対し、中国人は文明を野蛮から守るために方角観念を確立してきたという指摘、北氷洋と南極の面積・平均深度と平均高度・最深部と最高点・その形が酷似しているという事実などなどです。
今から30年以上も前の本ですが、少しも古びていないと思いました。中央アジアに興味のある方には特にオススメです。
日本における北海道の認識に関する文章や、日本の領土意識に関する文章、中国における辺境論、ソ連領中央アジア印象記など、全部で13の文章が掲載されていますが、当時話題になり始めていた「北方領土」という考え方に関する批判的な言説から、辺境としての中央アジアに関する興味深い文章まで、様々な文章が楽しめました。そうした中から、特に印象に残った文章には以下のようなものがありました。すなわち、中国人は北方に砂漠を見たからこそ、「北方」概念を絶対化して南方に発展したのだし、ヨーロッパ人は南方に砂漠を見たからこそ、「南国」概念を絶対化して北方に発展したのだという主張、そして中国人が「北方」概念を絶対化させたことが中国人における「北方」の観念を全く欠落させることになり、それが日本人にも「遺伝」したのだという指摘、北海道は18世紀末の世界においてさえも、よく知られていなかったという事実、日本人の方角観念はすべて、異質の文化の渡来に対するリスポンスとして発展してきたのに対し、中国人は文明を野蛮から守るために方角観念を確立してきたという指摘、北氷洋と南極の面積・平均深度と平均高度・最深部と最高点・その形が酷似しているという事実などなどです。
今から30年以上も前の本ですが、少しも古びていないと思いました。中央アジアに興味のある方には特にオススメです。