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金子勝・武本俊彦『儲かる農業論 エネルギー兼業農家のすすめ』その6

2020-05-24 01:35:00 | ノンジャンル
また昨日の続きです。

「『地域分散・ネットワーク型』への転換を阻むもの」
 今、新しい未来の創出をめぐって、古い「集中・メインフレーム型」の利害と新しい「地域分散・ネットワーク型」の利害が、潜在的に対立関係にあります。
 実は、古い「集中・メインフレーム型」の利害を代表するのは、重厚長大産業に支配された経済界です。原発再稼働や原発・武器輸出に邁進する一方で、ひたすら規模拡大路線による大規模専業農家のための規制緩和を要求しているからです。
 そして何より、銀行の不良債権問題から福島第一原発事故に至るまで、経営者も監督官庁も責任を取らず、ゾンビ状態の東京電力の救済を優先し、安全性を担保できないまま原発を再稼働しようとしていることが問題です。
 まさに二十一世紀の「地域分散・ネットワーク型」への転換を妨害する守旧勢力に成り下がっているのです。

「既得権益を打ち破る真の『電力システム改革』を」
「地域分散・ネットワーク型」とその担い手である「エネルギー兼業農家」を実現するためには、日本全体の電力の仕組みを変える電力システム改革が不可欠です。日本の場合、再生可能エネルギーの全エネルギーに占める割合が、EUに比べ極端に低い状況です。その背景には、発送電分離を中心とした電力改革が、EUに比べ遅れていることがあります。
 現在、政府は、電力システム改革を段階的に進め、発送電分離(法的分離)は2018年から2020年までを目途に実施することにしています。
 しかし、現在の改革案には、電力会社の地域独占を維持しようとする面があり、電力システム改革を中途半端で迅速さに欠けるものにしてしまうおそれがあります。
 なぜ、中途半端な「改革」にとどまりそうなのでしょうか。それは、福島第一原発事故以降、原発が不良債権化しているために、発送電分離をした途端に、発電会社の経営が破綻してしまうからです。したがって、電力システム改革を真に推し進めるには、原発=不良債権を処理する、もう一つの電力改革が必要になるのです。まさに、それこそが真の改革なのです。

「東京電力の抜本的改組が必要」
 詳細は第五章で述べましたが、真の電力改革を行うために、一刻も早くゾンビ状態にある東京電力の救済をやめなければなりません。一応、東電は組織再編することになっていますが、今の案では本格的な電力システム改革になりません。抜本的に改組すべきです。
 既に東電は当事者能力を失っているので、国のエネルギー予算を組み替え、国の責任において福島第一原発の廃炉を行うことが必要です。
 ほかの電力会社も、不良債権となっている原発を手放すことで経営は健全化され、融資している銀行も不良債権を処理できます。
 こうした電力改革を実施することで、国民負担も軽くなり、発送電分離改革もより迅速に、本格的に実施できるようになるのです。
 二十一世紀の進むべき方向は、「地域分散・ネットワーク型」社会です。そのためには、農協の改革だけでなく、財界もまた改革が求められているのです。

「新しいオルタナティブを掲げて」
 最後に、本書の分担関係について書いておきます。自転車で風を切りながら、「エネルギー兼業農家」という基本的なコンセプトを決め、二人でスケルトンを話し合ったことは既に書きました。そのスケルトンに従って、たたき台の原稿を武本が執筆し、それを金子が加筆修正して、それを武本に戻して、また再考するという往復関係でできています。こうした手法で「はじめに」から「おわりに」まで順番に書き進めました。その意味で、本書は名実ともに共著といえるものです。
 今日も二人で自転車に乗りながら、この新しいオルタナティブを掲げて閉塞状況を打ち破るために頑張ろうと話し合っています。読者の期待に十分には応えられていないかもしれませんが、読者の批判を謙虚に受け止めながら、より良いオルタナティブを練り上げていきたいと思っています。
 ともあれ、ここまで来られたのも集英社新書編集部のお二人の編集者のおかげです。本書の企画は同編集部の落合勝人さんと細川綾子さんにお世話になり、本書を進行させる過程では、細川さんが、読者が理解し読みやすくするために、原典に当たりながら、拙稿に対して丁寧かつ必要不可欠なコメントをくださり、校正段階でも種々のご助言をいただきました。また、タイトルについてもご提案をいただきました。ここに感謝の意を表して、本書を閉じたいと思います。
2014年4月 金子勝・武本俊彦

 まさに今各地で起こっている「エネルギー兼業農家」、そして「地域分散・ネットワーク型」社会をはるかに予言している本でした。図書館にある本なので、気軽に手に取って読まれることをお勧めします。

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